●更新日 11/13●


バンビーノ再現! “60リットルブロード”


「バンビーノ」をご存じですかね?
ビックコミックスピリッツにて連載されているドラマ化もされた人気料理漫画。

新米イタリア料理人伴 省吾が、
様々な試練と向かい合いながら成長していく姿を描いているもので、
ディテールの深さを本職の料理人にも賞賛される秀作なんです。

実際に個人的に面識のあるビストロのシェフにも話を聞いたところ、
「この作品はよく取材がされている。リアルだ」
との言が聞かれました。

そんな「バンビーノ」の中で、こんなシーンがあるんです。

料理長にブロード(煮出し汁)を作ることを命じられた主人公。
先輩と一緒に作るように言われたはずが、
自分を過信している主人公は、ひとりでやれると言い出して、
先輩の指示を仰がず行動をして失敗
使い物にならないダメなブロード(煮出し汁)を六十リットルも作ってしまう。

すると責任を感じた主人公。とんでもないことを言い出すんですね。

失敗した六十リットルのブロード(煮出し汁)を責任とって全部飲む。


マジかよ?


六十リットルだよ?
五百ミリのペットボトルが百二十本。

しかもですね。
主人公は夜お店が終わってから翌日の明け方までに飲みきるんです。
すっげ。
すごい根性だなぁ。男として憧れるところがある。
俺も主人公にあやかりたい!

…よし。ならいっそやってみようか。

題して、

バンビーノ再現!六十リットルブロードを飲む!!

今回の計画はこうだ。

・一般的なレストランの終業時間を考えて二十三時を開始とする。
・漫画作中の描写から考えて夜があけたら終了。日の出は約五時四十分。
・それまでに六十リットル全部飲む。
・あくまでも飲む、吸収する。ゲロはなるべく我慢。指突っこむのは当然禁止。

二十三時から約六時まで。
七時間の中で人間ははたして六十リットルの液体を飲みきれるのか。

十リットルバケツ六個。
やっていきたいと思います!!




いただきます。

うおおおお。

うお?

…まずい…。

まっず!これ滅茶苦茶まずいっすよ??
市販の固形スープを使ったのが間違いだったか?
水六十リットルに固形スープ二百四十グラムはたりなかったのか、
全然味がない。ほとんど水。
でも始末が悪いことに脂みたいな気持ち悪い風味だけが強力に鼻に抜ける。

これは強敵だ。
しかし作品中のブロード(煮出し汁)もまずかったという表記がある。

イーブンイーブンだ。負けねぇぞ!伴 省吾!!

うおおおお!

があああああああああああっ!!!!!!

…全然減らないよ?

しかもね。

約1時間も経っちゃった。

つらい。
やばい。もう心が折れそうだ。
こんなにつらいものなのか?液体を飲み続けるだけって。

計算してみよう。
七時間で六十リットル。

…、

一リットルをななふ…、

いやいやいやいや!!!!!!
今俺は間違った!数字では割り切れないところが男にはあるんだ!
それが漢というものや!

気を取り直そう。がんばっていこう。というか心を無にしよう。

そんなふうに思っていたら…、

酔っぱらいに絡まれた。

なんでこのタオルは俺を邪魔するの?
なんかいろいろ嫌がらせを受ける。
具体的に言うと、

・乾杯を求められる。こっちはバケツで重いっちゅうねん!
・いっきコール。
いっきコール。再度。延々。

いっきしようとしたら思わずゲロがでそうになった。
アルハラとパワハラで訴えてやろうか??
何故むかついたら人を殺して良いという法律がないんだろう?

この時はじめて「水中毒」の話を聞かされた。
水を飲みすぎると死ぬ場合があるらしい。
アメリカで水の大飲み大会があって優勝者は死んだそうだ。
今更言わないでくれ…。

しかし、負けるわけにはいかない。

絶対飲みきってやる!!

つらいばいっ!!

申し訳ない。漢を曲げる。
六十リットルを飲みきるという大志のために少々小細工をします。

まずいなら美味しくすればいいんだ。

ほら、大食い選手もたまにお酢とか使って頑張るじゃない。
調味料をいろいろ使って能率を上げていきたいと思います。

○塩、胡椒
頼むぜベイビー。
うまっ!!シンプルイズベスト。
やっぱ足りなかったのは塩分か。

○出汁の素
いけるいけるいける。
ダシ + ダシ。
毒を制するは毒の発想だよ。
飲む。
ホッとする…!
いいよ!素晴らしい!!調味料は正解だった!!

○カレー粉
まっず。
うっげ。なんだこれ?ゴミだ!
調味料はもうこりた。

と、まあこんなことをしてる間に

こんな時間だ。

ちなみにね。

まだこんな。

バケツ一個も飲んでない。
身体の動きがにぶい。背中が痺れている。体調が悪い。
なんでこんなことになっているんだろう。

後悔し始めた。

でも頑張るぞー!!


〜そんなこんなで三時間〜


4:20 開始から五時間二十分後
このバケツが俺を殺そうとする。
まだ一杯目が飲めてない

…、どういうことなんだろうか?
なんでバケツ一個も飲めないの?もう四時まわっている。

飲めない。
楽をしているわけじゃない。飲めないんだ。
そんな目で見ないでくれ。そんな目で見るな。
…誰だよ、お前は。

そう思ったらそれはブロードの水面に写る俺。
飲めない。ずっと水面を眺めている。


4:40 開始から五時間四十分後
頑張って一口飲む。
速攻で吐き気が襲ってくる。でも我慢する。
飲んですぐに吐く。それを繰り返せば楽に進むのはわかってる。
でもそれじゃ企画の趣旨が違う。
つらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらいつらい。

誰だ、こんな企画を考えた奴は?
殺してやりたい。
俺だ。
そしていま俺は緩やかに自殺しようとしている。
…何の問題もないじゃないか。

ちなみに体重は55sラインで停滞している。何故だ?


5:00 開始から六時間後
ゲリが始まった。

写真ではよくわからないけど鏡で見たら顔が真っ青だった。
やめられるなら死んでもいい。でもやるしかない。「青は進め」だ。


五時十五分 開始から六時間十五分後

ようやく。

残り300mlくらい

あと一息。



飲んでやる。もう顔が土気色だ。



くぃー…。


…。


……。


………。



うぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!
やった!やったぁああああああああああああああああ!!!!!!!
飲みきった。俺は漢だっ!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!


あと同じものが五杯。



夜明け。




…。


ギブアーップ!!


結論

・人間は一晩で六十リットルのブロードは飲めない。
・七時間で飲めるのは十リットルと数口。
・そんなことはわかりきっていた。
・でもおもしろいと思ってやってしまった。
・本当につらかった。
・俺は愚か者です。

仮説を立てよう。それが誠意というものだ。
十リットルのブロードを飲むのに七時間かかった。
…単純に六十リットルを飲むのに四十二時間?
店が終わって朝が来るまで四十二時間??

バンビーノ、貴様がいるのは何星だ!?

まぁ冷静に考えればこういうことだろう。


バンビーノ
あいつは絶対不正をしているっ!!



当分水は飲みたくない。



ニノマ



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