●更新日 11/19●


刑事からの依頼


荒木です。



バウンティ・ハンターが依頼を引き受ける場所は、何も警察署やベイルボンズオフィスだけとは限らない。
スティーブ・ハイアット(35歳)の追跡捜査依頼は、私の行きつけのLAガンクラブでおこなわれた。

そこは六番街の北に位置し、倉庫が立ち並ぶエリアに点在している。この辺りには多数のホームレスがうろついていて、犯罪も多発する地域だ。そのせいで観光客などは、よほどの物好きでないと現れない。
常連客は警察官、私立探偵、警備員、そして我々バウンティ・ハンターなど常日頃で仕事において銃火器を携帯する者たちだ。
だが顔見知りでも口をきいたりはしない。
蛇の道は蛇で、特殊稼業に即する者は互いの正体が解るものである。無駄口を聞くのは無礼に値する。それがプロ意識の世界だ。

私が射撃訓練に訪れたときに、以前LAPD(ロス市警)が指名手配していた犯人を引き渡した際の担当の刑事、ロン・マーベリック(39歳)に偶然再会した。



そこで過去の実積から、仕事を依頼された。
逃亡者ハイアットはただのコソ泥だが、拳銃使いに長けている上、別件の余罪を警察で追及したいので、マーベリックはその手柄が是非とも欲しいという事だった。
誰でも危険人物には好んで近づきたくないのは当然だ。
だからこそ、それを担うために賞金稼ぎは130年前に誕生した。それ以来、法の最後の砦が我々の使命と云えよう。
まあそういえば格好は良いが、ある意味でならず者のダーティワークには違いない。
報酬は警察公式懸賞金の五千ドル、それに生かして身柄を引き渡せばプラス五千ドルだ。元来、殺さずして生け捕りが私の主義なので、その意味でも私に白羽の矢が立ったようだ。



成功の信頼が次への仕事に繋がる。
新たなる追跡劇の始まりとなった。

初動捜査は当然ながらプロファイリング。
ハイアットの盗癖は幼少の頃からで、奇妙なことに盗品がすべてホテルの備品であった。
それらを戦利品としてコレクションしているのが、追跡の手掛かりと睨んだ。
だがロスにはモーテルの数が多く、絞り込んで張り込むのは到底不可能である。
そこで私は、とにかく片っ端から電話をかけてハイアットの顔写真のFAXを各モーテルに送付した。
獲物が現れた時点で連絡を入れてもらおうという算段だ。こうして網をはり、獲物が引っかかるのを待った。


そして数日後、郊外のモーテルから情報が入った。




つづく




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