●更新日 11/13●


交渉人 荒木秀一


荒木です。



懸賞金がかかっている獲物は、何も犯罪者だけとは限らない。
探偵稼業と同じく、失綜者探しも時には請け負う。

ロスから車でハイウェイを一時間ほどの距離にあるパームデール地区に住む、ジョン・サンダース(45歳)の娘エリカ(23歳)は、ボーイフレンドのマイク・ラッシュ(28歳)と共にかけ落ちして家を出て行ってしまった。
サンダースとLAベイルボンズの社長トニーとは近所付き合いの関係にあり、娘の捜索依頼が私にまわってきたのである。

報酬はボランティアだ。というのも恩師の友人であるという事と、前回の仕事の蓄えが充分にあったからである。
私は基本的に金額でなびくのではなく、その案件に意欲が沸けば引き受けるようにしている。金に踊らされるのは愚行だと思う。
また、どこかしら趣味の感覚でやっているので、ヘタな欲は不必要だ。
というわけで、バウンティハンターになって初の無報酬の仕事開始となった。



初動捜査は二人の足取りの手掛かりを見つける事から始まる。
サンダース氏から聞いた二人のプロファイルが決め手となる。だがそれが正確な情報でないとプロファイリングは成功しない。
そこで私はいつでもありったけのデータを入手して、独自で解析するようにしている。
他人のマインドはアテにならないからだ。それを信頼して幾度か痛い目にあった経験から生まれたスタイルである。

サンダースの娘エリカのデータから、手掛かりになりそうな事柄を発見した。
それは彼女の趣味であるフィッシングだった。
サンダース氏は幼少の頃から娘のエリカを頻繁にカジキ釣りに連れて行ってたのだ。そのせいか父親と同伴しなくてもボーイフレンドのマイクと連れ添ってふたりで楽しむこともあった。

私は西海岸のハーバーにある漁船のボートハウスをしらみつぶしに当たった。


そこで私の明晰な捜査マインドは見事に的中した。
逃避行したふたりが幾度か現れているボートハウスを探し出したのだ。





つづく



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