●更新日 12/29●

サブカル放浪紀・板橋区立淡水魚水族館


サブカルにも様々なジャンルがありますが、中でも極めてマイナーな、というか、ほとんど知られていない、「退屈愛好」というジャンルがあります。かつて月刊「BUBKA」の巻末にて、「日本退屈愛好協会」がひっそりと長期連載されていたこともありました。

その連載の中でも取り上げられた有名スポットが、「板橋区立淡水魚水族館」。「板橋区立こども動物園」の附属施設なのですが、この動物園も退屈スポットとしてポイントが高いとされています。取材は平日の昼間でしたが、普通なら親子連れでにぎわっているはずなのに閑散としていて人影は皆無に等しく、高齢者を時々見かけるのみ。本当に退屈です。

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山木「何なんですか、ここは?」

タカハシ「退屈愛好家の聖地です」

山木「……(絶句)」

取材の意図を理解しないまま来たため、あまりの脱力感に襲われる山木編集長。

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こども動物園の最大の見所はフラミンゴというのが、退屈愛好家の共通認識でしょう。寒空の下、どう見ても日本的な風景、というか、背景にポリバケツやら何やらまである、フラミンゴにはあまりにも不似合いな場所で飼育されています。寒さのためか、池に入ろうとしないで身を縮めている姿を見ていると、我々もいろんな意味で寒くなってきます。

続いて、ヤギやシカと触れ合えるコーナーへ。約10年ほど前でしょうか、かつてここには、「ツトム」という異常なまでに巨大に成長したヤギがいました。触れ合うどころか、人と目が合うとガン飛ばしたり向かってきたり、他のヤギを追い掛け回したりと、実に暴れん坊でした。既に他界したのか、現在ではその姿を見られないのが残念。

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このコーナーの入り口付近をふと見ると、強烈な内容の掲示が。利用者のマナーが悪いために、動物が誤ってビニールなどを食べてしまうとのこと。そのことを警告する意味なのでしょうが、ヤギを解剖して死因を調べている場面の写真を、いくらなんでも入り口の目立つ場所に大きく掲げるのは…。親子連れがドン引きしている様子が目に浮かびます。

その他、「こんなに巨大だったっけ?」と思わせるようなサイズのモルモットと触れ合えるコーナー、既に閉鎖されて無人の「こどもの池」など見所は多々ありますが、とりあえずメインの淡水魚水族館へ行くことに。

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実はこの水族館、既に閉鎖されています。水族館のシャッターは閉まり、次のように記された紙が貼られていました。「淡水魚水族館を閉鎖しました。施設の老朽化が著しく、平成16年3月31日をもって閉鎖いたしました。昭和58年4月の開館以来、永い間ご利用いただきありがとうございました」

閉鎖される前にもう一度見ておきたかった…と思って水族館の裏手に回ってみるとドアがあり、なんとその一部が壊れていて鍵まで開いているじゃないですか。これは気になります。というわけで、中に入ってみました。

ドアの奥にあったのは、水族館の事務室。

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冷蔵庫はまだ動いているようで、中には飲みかけで放置されたままになり腐敗した飲料や、同じく腐敗した魚の餌の赤虫など、大住さんの牛乳や鯛が可愛く見えるようなグロテスクな代物が。

壁には東京都建設技術協会や板橋区長から水族館への表彰状が、染みだらけになって劣化した状態で飾られたままでした。閉鎖時に、もはや価値無しと判断されて、そのまま放置されたのでしょうか。ドライというか変わり身が早いというか、役所仕事の典型を見た思いです。ちなみに事務室近辺には、ボイラー室などがありました。

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そして、いよいよ水族館の展示コーナーへ。当然のことながら真っ暗で、中には空になった水槽がいくつも放置されていました。10年くらい前に来た時は、それらに入った淡水魚が展示されていたわけですが、なぜか山や農村のジオラマと組み合わされていたのが謎で、当時も印象的でした。時を経て、それを再び目撃することになるとは。


写真 在りし日の水槽


メインの大水槽も、同じく空の状態のまま残っていました。10年程前には、この水槽には、アマゾンの巨大な魚なナマズが数多く展示されていました。色とりどりの巨大魚たちが狭い水槽に押し込められるかのように展示されている独特の雰囲気が、この水族館を退屈愛好家の有名スポットにした決定的なものだったに違いありません。

ちなみに、これらの巨大魚はますます巨大化していき、施設の老朽化も重なったことから、やがてこの水槽から姿を消しました。それらの魚たちはサンシャイン水族館に引き取られたという話もありますが、定かではありません。さらに歴史を遡ると、この水槽には、あまりにも巨大化して方向転換もできないくらいになったピラルクが飼育されていました。ピラルクも、ある時を境に突然消えたわけですが…。

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水族館があった頃は、館内で各種の企画が行われていました。それがまた、脱力感に満ち溢れていたわけで。以前訪れた時に偶然展示されているのは、子供たちから募集した淡水魚のイラスト。その中に、「グリーンジャイアントの子がめ」と題された、13歳の女子のイラストもありました。悪ふざけにも寛容な水族館だったようです。


帰り際、山木編集長が言いました、「あー、今日は充実した一日だった(棒読み)」


癒しやスローライフがブームのこの時代。淡水魚水族館は、時代をあまりにも先取りしすぎていたスポットだったのだと、根拠も無く断言したいですね。退屈愛好家の聖地は、まだまだ「現役」です。皆さんも、ぜひ一度訪れてみませんか。多分、大半の人が行かないと思いますが、もし行ったとしても、また訪れることはきっと無いでしょう…。


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タカハシ&山木


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