●更新日 09/17●
休廷だらけの裁判傍聴
今回はかなりレアな裁判の話。
被告人は、74歳のおじいちゃん。
短い白髪が逆立って、なかなかパンキッシュないでたち。
罪名は、占有離脱物横領・公務執行妨害。
自転車を盗んで運転していたところ、警察官に職務質問を受け、その警官を足蹴りしたという事件です。
ま、今回の話は事件のことはどうでもいいんです。
裁判が開廷。
裁判官「では、被告人、証言台の方へ」
被告人はピクリとも動かない。完全無視です。
アナーキーなおじいちゃんだなぁ、と思っていると、
弁護人「すみません。被告人は耳が遠いようでして」
聞こえてないだけでした。
ルールとして、被告人がこれからのやり取りを聞こえないまま進めるわけにはいかないんです。耳が遠い被告人の場合は、事前に弁護人が補聴器を申請しとくもんなんだけど、忘れてたんでしょう。
裁判官「じゃあ、補聴器を持ってきますので、20分休廷しましょう」
20分も?(エレベーターで上行って、降りてくるだけなのにさ)
20分後、廷吏が補聴器を被告人に渡して、音量チェックです。
廷吏「あーあー、聞こえますか?」
被告人「なんか音は聞こえるんだけど、何言ってるのかわかんねえなぁ」
裁判官、検察官、弁護人、全員が苦笑い。20分も待ったのに・・・。
裁判官「仕方ないですね。通訳用のワイヤレス借りてきますかね」
日本語がわからない外国人が被告人の場合、通訳の人がピンマイクで喋って、それを被告人がワイヤレスのイヤホンで聞く(日本語で裁判を進めながら、同時通訳が可能になる)方法でやるんだけど、日本人の被告人なのに、それを使うというわけ。超レア裁判です。
裁判官「じゃ、20分休廷します」
だから、なんで20分も必要なんだよ!
・・・謎だ。
開廷から40分後。被告人にイヤホンを渡し音声チェックです。
廷吏「テスト、テスト、どうですか?」
緊張の一瞬。
被告人「おっ、こりゃいいねぇ!」
やっと裁判が始められるという安堵感で、法廷内のみんなが笑顔になりました。
ところが、始まったら始まったで、これが大変なのよ。
喋るときは、必ずピンマイクで喋らなきゃいけないから、裁判官が喋り終えると、壇上から降りてきて、ピンマイクを検察官にバトンタッチ。検察官が喋り終えるとピンマイクを弁護人のところに持っていって・・・。
まさにピンマイクを使った駅伝です。本当に忙しい。
そして、検察官が冒頭陳述を読み上げている途中でアクシデント発生です。
検察官「では、被告人の身上、経歴ですが」
被告人「あれ?きこえねぇ」
法廷が固まりました。また、20分休廷か?
検察官「え?聞こえないんですか?」
被告人「うん、聞こえねぇ」
聞こえてないはずなのに、会話成立です。
検察官「聞こえてるじゃない」
被告人「なんか、わかんねぇなぁ」
裁判官「それは聞こえないってことじゃなく、言葉の意味がわからないってことかな」
被告人「あ、そうそう」
すると、検察官は大きく息を吸い込むと、半ば怒ったように、
検察官「私が、あなたが生まれてから今回の事件を起こすまでを調べたので読み上げます!」
大声で冒頭陳述を読み返していました。
ここまでで、タイムオーバー。
この日の審理は終了です。
普通なら、ここまでで10分程度で終わるんだけどねぇ・・・一時間もかかるとは。
たまぁに、こんなレアな裁判があるんだよなぁ。
では、今回はこれにて閉廷!
阿曽山大噴火
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