進歩し続ける映像表現
〜 FutureCinema展レポート 〜


東京新宿の東京オペラシティータワー4F(NTTインターコミュニケーション・センター)にて、『FUTURE CINEMA――来たるべき時代の映像表現に向けて』という展覧会が開催中。
「FUTURE CINEMA」のHPによれば、『26名の作家による最新のメディア技術を駆使した29点の作品を展示し、映像表現の未来形を多角的に探る試みとなります』とのこと。近年の映画・ゲームのヒット作品からもわかるように、最新映像技術に興味を持つ人は少なくないはず。展示作品のいくつかを紹介してみよう。


――マックス・ディーン+クリスチャン・ホートン作「私になる」(BE ME)

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      ▲「私になる」装置

「私」とは誰か。それはスクリーンに浮かぶ男性(芸術家マックス・ディーン)のことである。写真手前の椅子に座ると、彼はふてぶてしく「私になりたいか?」と尋ねてくる。それに対しマイク(写真ではわかりにくいが座席前にある)に向かって答えることになるのだが、心で「いいえ」と思っても渋々「はい」と答えざるを得ないのが現場の状況だ。(だがマイクは音声を認識していないので、そのまま座っていれば勝手にマックスになってしまう……)
では、「マックス・ディーンになる」とはどういうことか。スクリーン手前のカメラにはお気づきだろうか。そう、こちらの顔の動きに合わせて、スクリーン上のマックスの顔も動くのだ。

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▲記者がマックスに憑依中の写真。今にも死んでしまいそうな表情だが、こちらがどんな顔を作っても表情は冴えない。

顔の角度、唇の動きまで再現してくれるマックスであるが、あまりイジワルをすると付いてこれないよう。片目だけを閉じたり、舌を出したり、笑顔を作っても上手く反応してくれない。技術的には難易度の高い作品と思われるが、面白い技術なのでまだまだ頑張ってもらいたいところでもある。


――ジャン=ルイ・ボワシエ作「プチ・マニュアル・インタラクティヴ」

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     ▲テーブル上に映像が!

天井から映写機のようなものを当て、テーブルに映像を映し出している。テーブルから数センチ上で手をかざすと、画面が移動したりコマが進んだりするところが驚きである。


――エイヤ=リーサ・アッティラ作「慰めの機会」

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 ▲2面スクリーンで1つの物語が同時進行。

派手さはないが、視点が複数あれば物語はよりドキュメンタリーに近くなるのだと感じさせる映画作品。


――モーリス・ベナユン作「So.So.So.誰かが、どこかで、いつか」

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▲双眼鏡型ディスプレイをかけてみると、そこはあの映画の世界。

この眼鏡(?)を装着すると世界が一変。上下左右360度が映像ワールド、「仮想現実」の世界に足を踏み入れることになる。まさに映画「MATRIX」の世界を再現しているかのよう。

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▲地面もちゃんと見えるし……、

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▲振り向いて天井を見ることも出来る。(屋外の場合はビルを見上げたり、空を見たり)

傍から見ると体験者の動きは滑稽であるが、いざ自分が体験してみるとつい色んな動きを試してしまいたくなるほど良く出来ている。
惜しむらくは映像がまだ静止画であること。そして自分はその位置から移動できない。それらが可能になり、「仮想現実」の世界で他の人間とコミュニケーションが取れるようになれれば、私たちの生活も大きく変わることになりそうだ。


――その他
出展作品は24に上るので全ては紹介できないが、作品は他にも多数ある。床面にCG映像を投影させる作品(映像が動くので近くに寄ると酔うかも)、タッチパネル式で被写体をこちら側から操作する作品、技術的なものばかりでなく詩の朗読やテキストメッセージに合わせた文学的な映像作品もある。シナリオのあるものは1通りでなくマルチなものが多いため、全ての作品を1から10まで楽しむとなると1時間や2時間では足りなそうだ。

世界中で多くの映像作家・技術者がチャレンジを続けているのだということが、この展覧会から感じることが出来た。今後彼らはどんな新しい映像を私たちに見せてくれるのか、新作が待ち遠しいところだ。
「FUTURE CINEMA」展覧会は2月29日まで。可能であれば、「来たるべき時代の映像表現」をその目で確かめてみてはいかがだろう。(「FUTURE CINEMA」の公式HPはこちら





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