恐るべき駄菓子屋2
〜 大井競馬予想屋編 〜


年末に訪ねた駄菓子屋(競馬予想をするおじさんのいる店)を再び訪問。読者の方からは「近所の人は近寄らない」などのメールも頂戴したが、おじさんは相変わらず元気でいた。

おじさん:「お兄ちゃん。競馬はやるのかい?」

記者  :「あ……、はい」

おじさん:「何見てるか知らないけどね、東○ポとかが
      マトモなこと書いてると思う?
      女の裸やソープの広告を一緒に載せてる新聞だよ」

記者  :「あはは……」

おじさん:「こういうの見ろっての。
      おじさんはね、ちゃんと当ててるんだから」

おじさんは10日ほど前に訪ねた記者のことなど全く覚えておらず、前回と同じ話を続ける。今回は年末年始のレースの予想メモ的中馬券を見せてくれた。

おじさん:「新聞に100円ちょっとしか出さないのにさぁ、
      みんな当たった時にお礼する? するわけないだろ?
      じゃあ本当のこと書くかよ〜」

記者  :「予想屋の言うことは信じていいんですか?」

おじさん:「当たるかどうかそんなことは知らないけどね。
      金払ってない人にはデタラメ言ってるよ。
     (新聞も東○ポとかじゃなくてね、専門紙
     (400〜500円と割高)買わなきゃ駄目だと
      思うよ)」

ギャンブルでプロから情報を仕入れるにはお金が必要というのだ。
6日から大井競馬が開催されているということもあり、競馬場に足を運んで予想屋を観察してみることにした。地方競馬には中央競馬と違い、予想屋が正式な許可を受けて営業している所もある。大井競馬場の場合、予想の値段は1日分1000円1レース分100円。専門の新聞を買うよりも高い。購入した人間にとってはしっかり当ててもらいたいところだろう。

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▲1000円払うと写真左のような紙(開催前予想)をもらえる。1レースごとの直前予想(予想屋がパドックを見た後)は写真右のような紙が配られる。

予想屋のブースは20ほどあり、人気のある予想屋、人気のない予想屋がはっきりと別れている。話が面白かったり、よく当たったりする予想屋には人がたくさん集まる。(ただ、その日の予想結果は各ブースに貼り出されているので、人気がなくても的中が続けば人も自然に増える)

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▲手前のブースとその隣のブースでは明暗がくっきり。

ある予想屋の1日予想を購入しつつ、他の予想屋の話も聞いて回ったが、お金を払わない人に嘘をつくということは余りない。その代わり初心者競馬セミナーのように、馬券には直接関係のない話を繰り広げることの方が多かった。それでもたまに一般聴衆を混乱させようと、来ないと確信のある馬を「この馬は強いよ」などと大声で言うこともあり、そこで実際予想を買うと違う馬の番号が書かれたりもしていた(そして見事的中)。その時の予想屋は聴衆に特別デタラメを言っていたわけではないが、本当の予想をオブラートに包み込んでいるのがミエミエであった。この辺は駄菓子屋のおじさんの言っていたことに近かった。

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▲高配当の予想が的中すると、予想購入者の一部からは1000円ずつ「ご祝儀」が。

1つの予想屋の話を一日中聞いていれば、「このレースは相当自信がありそうだな」というのが肌で実感できる。ただ、収支はほとんどの予想屋がマイナスになるわけで、予想自体は必ず信頼できるというものではない。いくらプロでも外れるのは当たり前。しかし前回の記事にもある通り、駄菓子屋のおじさんは15年間JRAのG1レースを外したことがないと言うのだ。そんなことが本当に可能なのだろうか。謎(というか懐疑心)は深まるばかりである。


※余談1「予想屋になるには」
わずかな元手で開業が可能な予想屋。人気を集めれば1日当たりの収入も結構ありそうだ。競馬の知識と巧みな話術を持っていればやってみたいと思う人もいるかもしれないが、どうやったら予想屋になれるのだろうか。
――大井競馬場スタッフ談
彼らは個人営業でやっているから競馬場とは関係ない。競馬場は営業の認証をしているだけで募集もしてないし(確か)場所代もとっていないし、予想屋に何かの資格があるわけでもない。だから予想屋になるには直接予想屋に話をして弟子入りさせてもらうしかない。
――大井競馬場予想屋談
(予想屋といっても組合があるので)最初は誰かのところに弟子入りして10年は修行。そういう人(志願者)は多いからたいてい断っていると思うけど。田舎の方にいけば都会よりは簡単になれると思う。

※余談2「駄菓子屋のおじさんが……」
『近日勉強会開催予定』とのこと。参加費は無料(本人談)。
本当にあるのかどうかは定かでないでないが、正式な日を知りたくば「毎日(店頭の)貼り紙を見に来いっての」とのこと。





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