国から若者に良いお知らせ
〜 就職難もぶっとばせる!? 〜


「この若者、礼儀作法保証します」…厚労省が認証制度 (読売新聞)

「この若者には社会人としての基礎が備わっています」。厚生労働省は来年度、就職を希望する10―20歳代の若者を対象に、職場で必要とされる「基礎能力」の認証制度を創設する。 ( ※以下省略。全文はこちら )

ここで言う“社会人としての基礎”とは、“ストレス耐性”や“基本的礼儀作法”などのこと。これらは職種を問わずどの仕事をする上でも必要不可欠な要素であるのだが、企業が短期間の採用活動において、求職者の持つそれらの資質を客観的に見極めることは非常に困難。若者の就職率アップも視野に入れつつ、労働省が“基礎能力の認証制度”なるものを創設するというのだ。
記事によれば、『認証制度は、若者の申請に基づいて、自治体や民間などが行う職業訓練講座の受講歴や取得済みの資格を「若年者就職基礎能力証明書」に列挙するというもの。履歴書に証明書を添えることでアピール度を強める(本当か?)狙いがある』とのことだ。

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▲“社会人としての基礎”が身に付いていれば、チームでの仕事も円滑に進むに違いない。(頬杖をつくのは良くない)

今回は企業で採用担当の仕事をされる方々に、この記事に関連して話を聞いてみることにした。

――普段採用活動でどちらを重視? その職業に必要な専門的な知識?OR社会人としての基礎的な資質?
Aさん:うちの場合は専門知識が必要な職業だけどいわゆる“オタク”は要らない。“私は何某専門学校に通っていた”という人間も変なプライドを持っていることが多い。専門的な知識は会社に入ってからでも教えられるから、後者を重視する。長いスパンで見れば基礎的な資質を持った人間の方が必ず良い人材になる。
Bさん:社会人としての基礎的な資質です。専門的な知識があればそれに越したことはないけれど、社内教育でカバーすることは可能です。専門的な内容は特にその会社独特のやり方などがあるはずですしね。
Cさん:仕事は一人でやるものではないし人間性重視。根性のある奴がいい。ということは後者になるのかな。

――これまで採用で失敗したと思うのはどういう時?
Aさん:若い人が辞めた時。企業としては採用活動に多額のお金がかかっているし、入社後1人前に育てるまでにも多額のお金がかかっている。その元くらいは返してもらいたい。
Bさん:1年くらいで結婚退職されたときでしょうか……。
Cさん:新入りで金庫からうちの売り上げそのまま盗んだ奴がいて、それはもう面接で見抜けなかった自分の失敗だったのかなぁ、と思う。でも面接だけでそんなことまでは実際分からないから……。

――若年就職基礎能力証明書のある人間とない人間、差をつけるか?
Aさん:講座を受けたり資格を取ろうとした姿勢は評価するが、資格などはそれ自体現場で何の役にも立たないことが多いので差はつけない。
Bさん:差はつけません。その証明書のために努力するなら、もっと実用的な資格をとってもらいたいものです。
Cさん:それが良いものならあってもいいと思うけど……。そんなの見せられて信用していいのかまだ分からない。たぶん差はつけないと思う。

――(ぶっちゃけ)そんな制度が(採用担当として)自分の役に立つと思うか?
Aさん:礼儀作法だとか忍耐力だとか、人間の資質として基本的なことは入社前から身に付けておいてもらいたいもの。そういう意味では意義のあるものだけど、実際の採用活動としては“参考”の域を超えない。
Bさん:礼儀を勉強することによって、本当に身についているのかどうか疑問です。テキストで学んで習得するようなものでもないような気がします。実際に会ってみるまで信用できません。
Cさん:やっぱり会ったときの印象が大きいから役に立つかどうかは微妙。資格なんてなくてもちゃんと働いてくれるのは一杯いるけどそういった資格を取ったりする努力は認めるよ。


3人の方に話を聞く限り、履歴書に証明書を添えることでアピール度が強まるかというと、国が推奨するほどでもないという印象を受ける。(もちろん世の中には様々な企業があるわけだから、“役に立たない”とは一概に言えないのだが)

実際就職活動をされている方はこの不況の最中、自分の有利になりそうなことには少しでも手を伸ばしたくなるもの。しかしこの新聞記事をよく読んでみると、「若年者就職基礎能力証明書」“自治体や民間などが行う職業訓練講座の受講歴や取得済みの資格”を列挙しただけのものとなっている(今のところ)。そもそも資格や講座というものはお金のかかる(ビジネスとして成り立っている)ものだから、国が資格・講座ビジネスを手助けしようとする意図も見え隠れする。(国にもお金が入る!)
しかし、そういった資格等があっても現場で全く役に立たない人材に頭を悩ます企業も実際多いわけで、“資格至上主義”を憂慮する人たちからは「若年者就職基礎能力証明書」制度について、これから少なからず批判は出てくることだろう。

さて、厚労省はそういった批判があることを見越してのことか(?)、記事には下記のようにも書かれている。
“厚労省は「認証を受けようと思ったこと自体、やる気の証明になる」としている。”

国が国民を騙す時はいつもあやふやで抽象的なコメントをするもの。
導入前から厚労省が先手の言い訳をしているように映るのは、気のせいだろうか。





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