ニモ人気の裏で
〜 ニモの仲間たち、減少中? 〜


12月6日より全国公開された米国アニメ映画「ファインディング・ニモ」。
公式サイト
子供にウケそうな可愛らしいキャラクター、大人も泣けてしまうストーリー。日本でも公開2日間の興行収入があの「千と千尋の神隠し」の記録を抜くなど、既に人気となっているが……、その裏にはこんな問題もあった。

(googleのキャッシュより)
映画「ニモ」の影響で熱帯魚が激減、南太平洋
(11月20日)


シドニー(CNN)
オーストラリアのABCラジオは18日、今年初めに米国で初公開されたディズニー、ピクサーによるアニメ「ファインディング・ニモ」のヒットの影響で熱帯魚の人気が高まり、南太平洋地域のサンゴ礁で激減していることが判明した、と報じた。
「ファインディング・ニモ」は、オーストラリア東北沿岸部に広がる世界最大級のサンゴ礁帯、グレート・バリア・リーフに生息するカクレクマノミの親子が主人公。ダイバーにさらわれ、シドニーの水槽に閉じ込められた息子のニモを助けるため、父親のマーリンが奮闘する物語。DVDの発売初日には、歴代最高の800万枚を売り上げた。
ABCラジオによると、同映画が公開されてから、世界中で熱帯魚の需要が高まり、サンゴ礁に生息する熱帯魚の捕獲量が増大。特に、熱帯魚が重要な観光資源にもなっている南太平洋の島しょ国、バヌアツの被害は深刻で、数カ月間で熱帯魚数が激減、サンゴ礁の生態にも悪影響が及んでいるという。
具体的な激減の程度などは不明。
熱帯魚業界のピーター・ホワイトロウ氏は同ラジオに対し、バヌアツ政府が歳入源を増やすため熱帯魚捕獲許可証を大量に発行したとの事実を明らかにし、業界関係者自身が逆に、熱帯魚を監視する立場に追い込まれていると指摘。「熱帯魚が多量に取引される現実を目の当たりにして、問題提起すべきだと感じた」と取材に応じた動機を披露している。
一方、環境保護団体関係者は、映画の人気に乗じて利益を得ようとする熱帯魚業者らが、映画本来のテーマをねじ曲げたと批判している。ホワイトロウ氏も「映画の主題は、人間が自己満足のために他の種を支配していいのかという問題を問い掛けるものだった。熱帯魚には自然の中にそれぞれの生息場所がある。取引業者が金儲(もう)けの対象とする『飾り物』ではない」と話している。



(東京・丸の内ピカデリー劇場入り口にて)
▲こちらが「ニモ」。カクレクマノミの子供。日本でも本物の熱帯魚が欲しくなる人が増えると思われるが……。


半年前に『ニモ』が公開されたアメリカでは一足お先に熱帯魚ブームがあったようで、以来市場ではカクレクマノミが高値で取引されるようになったという。日本のショップでもその販売数は徐々に増え、値上がりしているという話。
果たしてその現状はどうなのか。都内の大型専門店を覗いてみることにした。



▲オレンジと白の縞模様の魚がカクレクマノミ。インドネシア、フィリピン等、物価の安い地域から輸入されたものは簡単に手に入る値段。(これは750円)



▲こちらは沖縄産のカクレクマノミ。ペアで8000円。国内のものは高いらしい。ちなみに天然で育ったものよりも、養殖で育ったものの方が丈夫で高価ということだ。



▲「ニモ」の舞台にもなったオーストラリア産のクマノミ。他の地域のものと違って、色が黒い。1匹9800円。

この店の店員によれば、ニモの公開によってカクレクマノミの人気は高いものの、爆発的に売れているというわけではないようだ。値段も上がったとは言え、2倍になったとかそういうことはない。ただ、今後は間違いなく品薄になるだろうと予想していた。(※各店舗によっては既に品薄の状態でもある)



▲水槽の前で「ニモの仲間」を見つめる子供。「欲しい」と思っているのだろうか。「海に残した仲間」を心配しているのだろうか。

日本ではもうすぐクリスマスと正月がやってくる。この2つのイベントで『ニモブーム』に追い風が吹く可能性も高い。他を見て回っても、『初心者セット』としてカクレクマノミを水槽などと抱き合わせ販売するといったスタンスを取っている店が多かった。販売店としてもこのチャンスを逃すわけにはいかないのだろう。

しかしこの映画はもともと、人間にさらわれたニモを父・マーリンが命をかけて取り戻す旅に出るという設定。そんな親子の姿に感動した人は多いはずなのに、逆にペットとして欲しくなる人間が増えてしまったという現実は、映画の話を逆行させるもので何とも皮肉な結果である。それによって引き起こされる『種の保存の危機』、『自然界の生態系破壊』という代償は余りにも大きい。

今後この『ニモブーム』は日本でどういった問題を引き起こし、またペットブームや環境問題にどのような問題提起をしていくのだろうか。注意深く見守っていくことにしたい。





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