働く人の憂鬱シリーズ
〜 写真屋さんの憂鬱 〜


いろんな業界で働く人がいますが、業界に身を置く者にしか解らない裏話というものがあります。
曰く、勤務形態のことだったり、賃金の事だったり・・・。
そんな事情は様々あると思いますが、別段重たいことではなく、その仕事に対して興味を持っている人に、『そこの業務だったら当たり前のこと』を知って貰ってもいいんじゃないかなと、今回も、現役でその仕事をしている人に、そこでの出来事を語って頂きました。
皆さんが、「働きたいけど実情は?」と思った時や、いつも使っている業態の事情を知りたいと思った時の参考になればと思います。

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カバンの中には財布とカメラ。今の世の中、これが常識になっている人も多いのではないでしょうか? 
携帯電話にだってカメラが付いているのが当たり前になっていますし、デジタルカメラを持つ人の割合もここ数年でぐんと高くなってきました。しかし、撮った写真はプリントして見たいと思う方はまだまだ多いはず。
今回はそんな時お世話になる写真屋さんにスポットを当ててみたいと思います。
 
――この仕事をはじめたきっかけを教えてください。

・もともと趣味で写真を撮っていたので、現像技術を勉強しながら給料がもらえるなんてオイシイ! と思ってはじめました。
・ 前にやっていたバイトは、同じ時間帯に最低3人はシフトが入っていたので、人間関係が面倒で…写真屋は基本的に一人で店を回すので、わずらわしさが無いことが魅力でした。


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現像の際、使うもの。知らない方も多いのでは?

――この仕事の魅力は?

・ まずは、予想通り現像技術を学べたことですね。お客様からお預かりしたフィルムは、まず現像してから、モニターでチェックしながら一枚一枚色調を補正していくんです。お客様の好みもありますから、出来上がったプリントを誉められた時は特に嬉しいですね。
若い女の子の写真なんかは、色白に見えるように白めに焼き上げてみたり、結構気を使ってるんですよ。

・ 他人の撮った写真をこれだけ大量に見ることができる仕事はまずありませんからね。ネタの宝庫ですよ。私の店は、某ゲイタウンに常に近いので、それ系の写真を大量に見ることができます(笑)好きな人にはたまらないかもしれないですね。上半身裸で、下は黒ブリーフ一枚、その合間からは黄色いバナナが覗いている…なんて日常生活ではまずお目にかかることがないような写真を、ばんばん焼いてますから。ちょっと自分内の常識が変わりそうです…

・ 私の店は、某巨乳系アイドル事務所の近所ということで、アイドル写真の現像も多いですね。小○栄子のオフショットを現像した時は、うれしくて友達に自慢しました(笑)やっぱり乳おっきいなあ、と。まあ、芸能人でなくともおもしろい写真は多いので、飽きませんね。みなさん現像する時に見るとは思わないらしくて、カップルのラブラブ写真なんかも多いんです。一人で作業してますから、見て見て!と言えないのがツライぐらいです。


――では、逆にこんなはずじゃなかった! という体験を教えてください。

・写真屋とカメラ屋の違いをわかってらっしゃらないお客様が多いことです。うちは写真屋なので、フィルムの現像をするところなんです。何千とあるカメラ全ての仕組みを完璧に把握できるわけはないんですよね。ところが、お客様の中にはそれを混同して、カメラにフィルムを詰めてくれだの、カメラの調子がおかしいだの相談なさる方が多くて。一応会社内の規則では、お客様のカメラを触って良いのは社員だけということになっているんです。ですから、「こちらではお受けできません」とお断りするんですが、なかなか納得してもらえなくて、困りますね。最後にはフィルム装填ぐらいだったら、やってしまうんですけど(笑)

・フィルムに表示されている数字は大きい方が良いと信じている方が多いのにも困りますね。あの数字はフィルムの感度を表しているのですが、晴れた日の屋外で800のフィルムで撮影されると、もう真っ白で補正するのが非常に大変なんです。感度が大きければ大きいほど、シャッタースピードを速くできるので、早い動きがブレずに撮れたり、光を上手く写しこんだりできます。ですから、感度800は運動会や夜景撮影用と考えてください。普段使いには400程度で十分です。屋内でもフラッシュを焚けば、より確実に美しい仕上がりになりますよ。晴れた日の屋外だったら、感度100が一番キレイに撮れるんです。フィルムを買う時にも、一言相談していただければと思います。キレイな仕上がりにならないからって、八つ当たりされても困りますから。

・ 一番怖いのは現像中の事故ですね。現像中にネガを感光させてしまったり、コマ切りの位置を誤ってコマの途中で切ってしまったり。そうなると、もう取り返しがつきませんから。他の店の話なんですが、現像事故でフィルム一本をダメにしてしまった損害保証として、お客様に200万円お支払いしたということも実際あったそうです。

――内緒だけれど、行われているという話はありますか?

・ 先ほども書いたのですが、写真はすべてモニターで見ています。これに気付かない方がとっても多いんですよね…内緒でも何でもないんですが(笑)会社で焼いても良い基準というものがありまして、ヘアーが写りこんでいるものはアウトなんです。ただ、忙しい時間帯や、当社基準に触れるものが写っておりましたのでという説明をするのが面倒な時には、そのまま出すこともあります。今まで一番すごかったのは、下半身モロ出しで、電車の吊革に足をかけてびろーんとぶら下がっていた写真ですが、当然基準アウト。まあ、あまりにおもしろかったのでお出ししてしまいましたが(笑)

・ これは社員にはナイショなんですが、タダでプリントし放題なんですよね。自分で焼いた分は、ロスとして報告しておけば、まずバレる心配はないですから。友達からも現像を頼まれるので、一ヶ月に5000円分ぐらいは軽くタダプリントしてます。証明写真も同様で、友人は就職活動用の写真をすべて無料で撮ってあげたことも。スピードが売りの店では、ロスも当然ある程度出てくるのでできるワザですね。


――その他、おもしろい体験、裏話があったら、教えてください。

・ 長い期間同じ店で仕事をしていると、強烈な常連さんに出会うというのはどの職場でもあると思うのですが、写真屋でも同じです。ただ、出しに来る方からは想像もつかないような写真を毎回持って来られると、印象はより大きくなりますよね。

・常連さんで、ごくごく普通の中年サラリーマン風の方がよく私の店にいらっしゃるのですが、その写真というのが毎回奥様らしき中年女性がコスプレしているショットばかりなんです。その女性もごく普通の容姿の方で、ナース服やスッチーの制服を着て微笑んでいます。色んな趣味の方がいらっしゃいますから、それは驚かないんですが、さすがにセーラー服バージョンを見た時には…複雑な気持ちでしたね(笑)
しかし、アナルセックスだの3Pだのがばんばん持ち込まれる当店では、そんな常連さんすら気を抜くと目立たない存在になってしまうんですよ。この環境が一番おかしいかもしれません。

・以前に、上品な年配の男性が使い捨てカメラを現像に出しにいらした時の話です。残量をチェックすると、24枚撮りのところ23枚まで残っていたのですが、急ぎでどうしてもその写真だけ欲しいというお客様もいらっしゃいますから、そのままプリントしてお出ししました。すると「あれ…? どうして一枚だけなの?」
と非常に不思議な顔をされるんですね。一枚しか撮影されていませんでした、と説明をしたところ
「だって、このカメラ押せば撮れるんでしょう?」
とのお言葉…そう、お客様はフィルムを巻くという作業をすっかり忘れていたのでした。この時、思わず噴出しそうでしたよ。すごく和みましたね。

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・昔、奥○恵のニャンニャン写真が流出しましたよね。業界に流れていた話なのですが、アレが流出したのは、押○が写真屋にそのまま現像に出してしまい、写真屋が奥○を知っていた為、二重に焼いたからだ言う話があります。押○の売名行為だとか言われていたと思いますが、この話が本当なら、押○が馬鹿だったから・・・なんですね。奥○恵も、馬鹿な男に引っ掛かったもんですよ(笑)

――この仕事をやってみたいと考えている方へ一言お願いします。

・ 基本的には、店番は一人。受け付けから現像、プリント、証明写真の撮影まですべてこなすわけですから、忙しい時間はかなり大変です。でも、ヒマな時間にはやりたい放題(笑)読書もはかどりますよ。マイペースな方にはぴったりだと思います。

・人間関係のわずらわしさから逃げたい方は是非。それから、手に職をつけたいという職人気質の方にも向いていると思います。現像からプリントまで、一通り写真について詳しくなれますよ。ただ、お客様からクレームをつけられても一人、ですからそれなりの責任感は必要だと思います。写真が好き! という方にはかなりオイシイ職場ではないでしょうか。

いかがだったでしょうか? 何気なく使っていた写真屋さんの実情が垣間見れたのではないでしょうか。
客商売とはいえ、働く人も人の子。憂鬱になる時だってあります。
働く人の気持ちを知っていると、利用する時の参考になると思うのですが、如何でしょうか?
でも、今回話を伺った方達が言っていることが全てとは限りません。あくまでも参考にしておくのが宜しいようで・・・・




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