『自販機荒し』



5月9日の記事

 岡山市横井上の渡辺治道さん(52)は4月中旬、自動販売機の釣り銭の減り方が不自然なことに気付き、25日から空き時間を利用し、向かいの駐車場で自動車に隠れ犯人を待った。翌日も朝から張り込みを続けていたところ、午後0時半すぎ、二人組が細工した1000円札を使って自動販売機のセンサーを誤作動させ、釣り銭を盗んでいるのを発見。大声を出して近くに住む自営業藤原健次さん(39)に協力を求め、二人を取り押さえ、駆けつけた岡山西署員に引き渡した。岡山西署は9日までに、彼らに感謝状を贈った。

5月10日の記事

 大阪市北区のJR東西線・北新地駅の自動券売機から釣り銭を盗んだホームレスの男が、大阪府警天満署に20円の窃盗容疑で10日までに逮捕され、悪質で常習性もあるとして大阪区検も起訴した。
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20030510i505.htm
(参考記事)


自販機犯罪は近年増加傾向にあり、警察庁によれば2002年の認知(届出)件数は17万件を超えている。これらの犯罪は、扉をこじ開けたりするものや錠前破壊などの暴力的な手口によるものと、偽造・変造通貨によるものに大別される。

 例えば、
・自販機ごと丸ごと持っていき、人目に付かない山中に運び、中にあった商品や現金を奪う。
・工具でちょうつがいを切断したり、バールでこじ開ける。
・電気ドリルのようなもので鍵穴を壊す。
・高周波の電波で自動販売機を誤作動させる装置を使う
―――ライター大の装置で、先からコードが伸びており、コードの先に付けた10円玉を硬貨投入口に入れて電流を流すと、高周波の電波で自販機の制御板が誤作動し、釣り銭が落ちてくる仕組みのもの
・一つの鍵が複数の自販機で共通使用できるのを悪用する。
――― 一部の自販機は、人の担当者が多数の機械を管理できるよう一つの鍵で多数の機械の錠が開けられる仕組みになっている。廃棄された自動販売機のシリンダー錠を盗み、鍵の専門店などで、多数の自販機に共通の合鍵を作る。


日本自動販売機工業会では、暴力的な手口に対しては自販機堅牢化技術基準を策定しハード面での対策を進め、偽造・変造通貨に対しては警察・通貨当局の協力のもとに技術的情報を入手し、紙幣識別装置・硬貨選別装置のプログラム改変など対策を推進している。

例えば、
・自販機の中には、商品の売り上げ状況をPHSで定期的に所有者に伝えるシステムを内蔵した機種があり、自販機を壊す際に起きる振動などを感知するセンサーを取り付ける。センサーが異常を感知すると、PHSから日本自動販売機工業会に設置されたパソコンに信号が送られ、パソコンが合成音声に変換して最寄りの警察署に置いたPHS宛に住所を知らせる。また、一部には自販機の照明だけで撮影できる高性能のデジタルカメラも内蔵し、防犯装置と連動して自販機荒らしの犯人特定に利用する。

・下図の「アームロック」は、ステンレスの棒で鍵穴部分をしっかりガードする。本体と扉部分を固定しており、鍵を壊されても扉が開かない仕組み。鍵も付いている。費用は5、6万円。





・紙幣識別装置や硬貨選別装置は、挿入された紙幣や投入された硬貨の特徴を瞬時に読み取り、予めプログラムされた真貨の情報と照合し真偽を判別する。紙幣や硬貨は、流通段階で汚損したり磨耗するので、紙幣識別装置や硬貨選別装置はそういった通貨もある程度まで受け入れる必要がある。このため、プログラムされる真貨の情報は、発行直後の情報に一定の許容範囲を持たせたものとなる。機器メーカーは、警察・通貨当局から提供される技術情報をもとに、偽造・変造通貨の特徴を捉え、これらを排除できるプログラムの開発を進める。

 しかしながら、偽造・変造通貨の作成方法を示唆する俗悪な雑誌やホームページにより、偽造・変造通貨の特徴は限りなく真貨のそれに近づき、機器での排除は極めて困難になりつつある。また、盗まれた売上金や壊された本体の被害は損害保険で補われるため、自販機の所有者らの防犯意識は低いという。
「関係者の間では、被害が続発していることは知れ渡ってはいるが、一般への認知度は低い。地域への告知を徹底すべき」(町防犯協会)と、住民らを交えた防犯体制の立て直しを求める声もある。商店主らも自衛策として「売り上げをこまめに回収をして、自販機に残す現金は釣り銭程度にするようにしている」と話す。

はじめに触れた新聞記事のように、当事者ばかりでなく地域の人々も周囲に注意を払う意識が求められる時代となっていると考える次第である。

ところで、昔、ガルエージェンシー青山の調査員が、釣り銭泥棒を捕まえたことがある。



 上記のお礼状をいただきました。




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