三浦和義氏インタビュー(後編)
〜 現在、そして未来について 〜



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前回は、裁判などについてのお話頂きました。 後編となる今回は、三浦氏自身への質問とこれから先のお考えについて記したいと思います。


三浦和義さん個人について

―― いま現在なされていらっしゃるお仕事をご紹介頂けないでしょうか?
「湘南パラダイスマガジン」という雑誌を発行しています。 これは湘南地方の夜の情報誌でして、飲み屋さん・クラブ・風俗などの情報を載せる広告誌です。 面白いと思いますので、興味のある方は是非見て欲しいです。 ただし、“いまやっている事”と言うとちょっと違って来てしまいますね。 と言うのも、これをやっていたのは先月(‘03年3月)までの事でして、本はまだ続きますし、手伝いもしますが、直接の係わりは無くなりました。 いまは新しい事業の準備に頑張っています。何をやるかはまだ秘密です。

―― 野菜凄く苦手だそうですね。良枝さんから怒られたりはしませんか?(※1)
野菜は全然食べません。 食卓に並んでも、見ないようにしていますから(笑)。 家内は、「野菜食べなさい」って怒っていますが、全く食べません(笑)。 子供の頃から大嫌いで食べていませんでしたが、これだけ育ちましたからねぇ。(※2) これからも食べません。 野菜食べなくても健康でいられますよ(笑)。

―― 映画「まいっちんぐマチコ先生」に、出演なされたそうですが、この作品の事や参加するに到った経緯などをお聞かせ願えますか?(※3)
僕が連載を持っている月刊誌の担当編集者が、映画のキャスティングの担当をやっていたのですよ。 そこで彼から、「特別出演で出て欲しい」と言われましてね。 彼の申し出ならいいかな、と思って引き受けたのです。 深い意味はありません。 原作の方も、出演が決まるまで知りませんでした。


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―― フルハムロードを営業なされていた当時、三浦さんの先見性は驚嘆に値するものだったと思います。 その先を見る目はどのようにして培われたものなのでしょうか?
先見性があるかどうかは解らないけど、僕は自分の欲しい物を造って売っていただけなのです。 「こんな物どうかな?」「こんな物作ったらどうだろう?」って。ただそれだけであって、特に考えてやっていた訳ではありません。 だけど、失敗した物や売れなかった物はほとんどありませんでしたね。 (記者:これがセンスと呼ばれるものなのだろう…)。(※4)

―― 突然ですが三浦さんにとって、女性と言う存在はどのようなものなのでしょうか?
“安らぎ”かな。 僕は女性の考え方というものが大好きなのですよ。 と言うより、異性は自分に無い発想を出してくれるじゃないですか? 男としての既成概念に捕らわれない自由な発想をしてくれる。 その点は本当に大事に思っています。

―― これまでで、1番怒った事はなんですか?
僕、だいたい怒った事無いのですけどね。 喧嘩とか嫌いだし。 そうですね…、ロス疑惑の捜査陣に対してかな? 杜撰な捜査について。後は、子供がマスコミに突き飛ばされた時ですかね。 そういうアンフェアな事は大嫌いですね。

―― これまでで、1番楽しかった事は?
なんでも楽しんじゃうタイプですから、1番と言うのは解りませんね。 でも、ロス疑惑の時に家族で海外(ヨーロッパ)に旅行に行ったのは楽しかったですね。 まあ、何処に行ってもテレビ局の人間はいましたが…。


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    ▲最近ハマっているものは、待ち時間に携帯電話で行う『テトリス』だとか。
    三浦氏の意外な一面を見た


―― これまでで、1番困った事は?
全然無いですね。 僕はロス疑惑の時も、逮捕されても無罪である事が解明されて釈放されると100%信じていたし、当初20日間くらいだと考えていたのが長引いてしまっただけですし、自分がそんな事はしていないと言っている以上、絶対無罪になると思っていましたから。

―― これまでで、1番印象深かった事は?
……ショックを受けた事で言えば、東京拘置所に居た時に石原裕次郎さんが亡くなった事ですかね。 ちっちゃい頃から一緒だった人でしたから、かなりショックを受けました。(※5)


これから先の事について

―― これからの目標や夢はなんですか?
なんにもありません(笑)。 行きたいところは全て行きましたし、やりたい事もやりましたからね。 逆に、行きたくない所はいっぱいありますよ。 アフリカとか。 僕は都市型の人間なので、未開の地では生きていけないのですよ。

―― これから先も、犯罪報道の正常化・刑務所の問題点・人権と報道の問題の為に戦っていかれるおつもりですか?
そうですね。 そのつもりです。 実は僕はですね、4年前に帰って来た時に50社くらいから取材申込を受けたのですが、全て弁護士を通して断っていたのです。 もうマスコミとは係わり合いになりたくないと。 ところが、その後に弁護士の先生方に「三浦さん、今のままだと三浦さんの好むも好まざるも関係なく、ロス疑惑は大きな事件ですから(マスコミに)勝手な事をされちゃいますよ。だから、ちゃんと答えないと」「犯罪報道の事、人権と報道の事、刑務所の事などを発言出来る人間は唯一、三浦さんしか居ない」と言われましてね、その3点の問題について考えていくのは、大いに社会貢献になると。 それを聞いてから、頑張るようになって今日に到る訳なのです。

―― これからのマスコミ・メディアに望む事は?
今のままでは間違いなく自分の首を絞める事になります。 今でも様々な事件が事実とはかけ離れた過剰な報道に晒されています。 その様な事を続けていれば、どんどんどんどんメディアと民衆との間が離れていく事になる。 そうならないようにするには公正な報道が必要になって来るのです。 そうしなければならないのに、20年前のロス疑惑でさえきちんと報道出来ない。 このままだと、メディアと言うものが徹底的な不信感を持たれた悪辣なものと判断される。 その前に気付いてくれるかですね。

―― 読者の方になにかメッセージを頂けますか?
メディアに何か問題を起こされたとして、個人がメディアに喧嘩を売っても絶対に勝ち目はありません。 直に出向いても、門前払いされるのがオチだからです。 そうなったら裁判を起こすのです。 何故なら、裁判なら対等な立場で戦えるからです。 土俵も同じ。 ですから、恐れずに民事裁判を行って下さい。 自分の確固たる意思を持って。
 

『銃撃事件』が無罪となった今、有罪とされた『殴打事件』も改めて考え直すべきとして、三浦氏は再審請求を出す予定である。 以下、三浦氏の言で締め括りたい。

殴打事件と銃撃事件は3ヵ月しか離れていなかった。 おまけに現場もロス、被害者も同じ、犯人と目されているのも僕。 そこから『ロス疑惑』として、ひとつの事件と考えられた。 そうすると犯行の動機も同じはずです。 しかし、ロス疑惑として1番疑われた銃撃事件は無罪確定となりました。 そうなると一連の騒動も全部覆るのです。 そして、殴打事件の基本構造を崩す事になるのです。 この事を新証拠として、殴打事件の再審請求に望むつもりです。

・・・・・・三浦氏の戦いはまだ終わってはいない。


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    ▲2003.04.03 赤坂エクセルホテル東急にて


    ※1… 三浦氏の妻である良枝さんが、600坪の土地で畑を耕している事と、三浦氏の野菜が苦手という事からの質問。 50種類以上の野菜を作られているそうで、自家菜園を超えているのではないかと三浦氏は述べている。
    参考 「夕陽畑」(http://yuhi-h.hp.infoseek.co.jp/

    ※2… 三浦氏は長身である。 180cm以上有り、190に近いと思われる。 初めてお会いした際、その高さに吃驚した。 私は173cmだが、まるで大人と子供である。 スマートな上、長身。 女性に好かれる訳だと思った。

    ※3… 参考(http://www.zakzak.co.jp/top/t-2003_01/2t2003011608.html
      (http://www.maicching-machiko.com/left.html
    昔、流行った漫画が原作。三浦氏はこの映画に、校長先生役で出演している。

    ※4… 「フルハムロード」。 当時、三浦氏が経営していた輸入雑貨店。 開店してから、成績は順調そのもので、“アヒルのランプ”・“ビーズランプ”等、数々のヒット商品を出していた。 この点は重要である。 当時、三浦氏は1億5000万円を得る為に保険金殺人を実行したとされた。 …だが、会社の経営が不振なら未だしも、会社の絶頂期(更に業績は伸びるはずであった)に於いてこの様なハイリスクを犯すだろうか? これから行われる再審に於いても論点になると思われる。

    ※5… 三浦氏の幼少の頃の話になるが、三浦氏の親類に「水の江滝子」さん(通称:ターキー)と言う昭和初期の大スターが居た。 この水の江滝子さんが発掘した若者こそ、「石原裕次郎」氏なのである。 デビュー前の一時期、石原裕次郎氏は水の江さんの家に下宿しており、三浦氏は石原裕次郎氏と頻繁に遊んだ思い出がある。


編集後記
今回、『ロス疑惑』という昭和史に残る大事件について記事を書かせて頂いた訳だが、事件当時の事は、昭和51年生まれの私は5歳の幼児であった為、全く記憶に無い。 ロス疑惑が騒がれた19年前、毎日テレビに“ロス疑惑”と言う文字が浮かんでいた事は覚えているが、内容までは理解していなかった。 それが、とあるきっかけから、事件の事を調べるに到った。 勉強を進め、把握する度に、この大事件が氷山の一角である事が理解出来た。 ロス疑惑とは、昭和という巨人が疲れ果てた時に身体から滲み出た“膿”ではないかと思う。 要するに、仕事の激務に疲労した民衆は“悪”と見なす相手を求めていたのだ。 事件の真偽のさまは、当事者で無い私には解らないし、発言する権利は無い。 しかし、マスコミが三浦氏をターゲットに定めた為に、事件(疑惑)は爆発的に、そして発狂的に大きくなってしまったのは事実だ。 民衆意思と言う熱病に冒された者はすべからく、視野狭窄に陥る。 当時の民衆も、警察も、検察も、裁判官でさえ、この熱病から免れたとは思えない。 三浦氏は言った。 「マスコミの姿勢は20年前から何も変わっていない」…と。 私は危惧する。 第2、第3の『ロス疑惑』が起きる事を。 現在、情報はインターネットと言う新たな媒体を得て飽和状態となっている。 民衆1人1人が自覚し、正しい情報を見る眼が必要なのである。 自らの未熟さを理解した上で、更に努力していく事を私はここに誓いたいと思う。



読者プレゼント
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今回、参考文献として使用した「ラヴァ」と「ネヴァ」に三浦氏の直筆署名を頂いた物を1名様にプレゼント致します。 希望者はメールに、「お名前」「住所」「郵便番号」「今回の記事の感想」を明記して下さい。 当選者の発表は発送をもってかえさせて頂きます。
(応募締切:4/30)
応募メールは → kim@tanteifile.com まで。



●三浦和義公式サイト
http://www.0823.org/

●ロス疑惑に対する参考リンク
http://ngp-mac.com/kumarin/index.cgi?0045

●参考文献
「三浦和義との戦い」安倍隆典 著
「三浦和義事件」島田荘司 著
「不透明な時」三浦和義 著
「NEVER〜ネヴァ」三浦和義 著
「LOVER〜ラヴァ」三浦良枝 著
「週間金曜日」3月21日号・3月28日号




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