ライスチャーム

〜 幸せってなんでしょう?(後編) 〜



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『霊宝ライスチャーム』を買ったものの、幸せになったと感じられないという探偵ファイル読者の村上さん(仮名)。 販売会社にクレームの電話を入れて、広告に書いてあることは嘘じゃないのかと訊ねました。

エルセ: ですから、お客様が嘘と感じるんであれば、そういう風に判断してもらっても結構ですから
村 上: ........。
エルセ: お客様は「これは嘘だ」と思われるわけですよね?人間の思想というのは自由ですから「嘘ではありません」とこちらからマインドコントロールするつもりもありません。そいうことをすると宗教まがいになってしまいますので。ですから、これを嘘と感じるようであれば、そのように受け取ってもらって結構です。こちらは何も「本当ですから買ってください」と押し付けているわけではございませんので。

村 上: 嘘だろうが、なんだろうが、一切かまわないということですか?
エルセ: お客様のほうが、そう判断されても、当社の方は、一向に差しつかえありません

村 上: 本当に、広告の中で、なにか一つでも「嘘じゃない」と証明できるものはないわけですか?
エルセ: ないです。(キッパリ)

村 上: それなら、嘘と受け取ってもかまわないわけですね?
エルセ: そうですね。はい。こちらの方から「信じてください、お願いします」といったことは言いません。はい。

村 上: そうすると、信じようが信じまいが勝手であると? じゃあ、宗教と一緒ですね。(嫌味)
エルセ: 宗教と一緒?

村 上: 信じようが信じまいが構わなくて、信じても効果がなければ知りません、さようなら。とこういうことでしょう?
エルセ: 保障期間を過ぎていると、そうなってしまいますね。ただ、保障期間というのは、あくまで“お金を返せる期間”でして、ライスチャームのパワーは半永久的に続くものですから。

村 上: でも、50年後に効果があってもしょうがないんですよ。私、寿命が尽きて、死んでからの幸運はいらないんです。
エルセ: 別に(笑い)死んでから幸運が出るなんてこと、言った覚えはありません。そのようなインチキ臭いことは言ってませんので。しかし、逆に死んだほうが幸せだという方も、中にはいらっしゃるかも知れませんけれど。はい。

村 上: ははあ……私がそれだとおっしゃるんですか?(怒)
エルセ: いえ、そのようなことは言ってませんが……。中には「生きててもしょうがないから、いっそのことあきらめた方が」と、そういう風にとらえたほうが、幸せな方もいらっしゃるのは事実だと思うんですね。効果の受け止め方というのは、人によって様々なんです。例えば、ライスチャームを持っていて、100万円拾おうが、1億円当たろうが、借金がそれ以上にあったら、効果と認めてはもらえません。1億円当たっても、借金が5億円あれば、効果と認めてくれないんです。しかし、逆に、ライスチャームを持っていて、財布を落として、全額戻ってきただけで、効果と認めてくれる方もいらっしゃるんです。人によって、効果の受け止め方っていうのは、違ってくるんです。

村 上: しかし、私の場合そういった運勢の山も谷もなく、ずーっと「安定した不幸」なんですけれど。
エルセ: 逆にライスチャームをお持ちでなければ、今より状況が悪化していたという可能性もあります。

村 上: 今より悪くなるんですか? ライスチャームがあったから、まだ、ましだったということですか。
エルセ: はい。そういう考え方もあると、言うことです。

村 上: はぁ、なるほどね。で、広告に出ているインドの寺院なんですけれど、いくら調べても、そんな寺院はないんですけれど?
エルセ: あ、そうなんですか?

村 上: 私もこういう電話をする前に、インドの地図も取り寄せて、インドの電話帳も取り寄せて調べてみたんですけれど。ないんですよ、そんな寺院は。
エルセ: そうですか。……こちらの方も、あまり有名な寺院でやりますと、誰彼なしに真似されてしまいますから。



写真1


村 上: そうすると、広告に大きな寺院の写真が載ってるんですが、これは嘘ですか?
エルセ: いえ、広告に書いてある通りだと思うんですけれど。

村 上: これだけ大きな寺院が電話帳にも載ってないってのはおかしいでしょう?
エルセ: いや、インドの事情というのは、私はあんまり感知してませんから。

村 上: 適当に言ってませんか?
エルセ: いいえ。お客様のご質問というのは、広告に関してのことですか、それとも、効果に関してですか?

村 上: 両方ですよ。
エルセ: はあ。あのですね。ここで私がお客様に対していろいろ説明をしても、これは誤魔化されてるんじゃないかというような判断が深まってしまうと思うんですよね。ですから、お客様がこの広告は嘘だと、言うんであれば、それを私に申しても仕方のないことですから。効果がないというのであれば、保証期間内であればお金のほうはお返ししますということなんです。

村 上: でも、保証期間内の100日では効果は分からないと言ったじゃないですか。
エルセ: 確かに分からないですね。それから急に出てくるかもしれませんし、逆に100日間いいことが続いたからといって、その後もずっと続くとはかぎらないですから。ですから、保障期間内に返品いただくのは、こちらが無理に「返してください」とか、「いや、やっぱり、ずっと使ってください」とか、強制することではありません。お客様のご意思におまかせするしかないんです。ですからこの広告は嘘であるとか、そのようなことを言われる筋はないんです。

村 上: でも、お宅としては、何一つ証明できないわけでしょう、この広告に関して。
エルセ: 私が直接作っているわけではありませんから。

村 上: じゃあ、何を言われてもしょうがないんじゃないですか?
エルセ: そのようなお考えであれば、なにを言ってもらっても結構ですから。はい。
村 上: ……。あのね、私、本当に「幸運」というものに見放されてるんです。
エルセ: はあ、そうですか……あの、お客様は、ずっと持ってて、祈ってただけなんでしょうか?ご自分では何一つ行動を起こされない方なんでしょうか?

村 上: そんなことはないですよ。普通に勤めて、普通にやってきただけです
エルセ: あ、そうですか。普通に勤めている方であれば、今のご時世、仕事があるだけでもすごくありがたい話だと思うんですけれど。そういう考え方も出来るかと。

村 上: じゃあ、何一つ努力しない私のほうが悪いということですか
エルセ: そうではないんですが、一生懸命やって頂ければ、そのうち貯金も出来てくるでしょうし、借金のある方であれば、返済ができるとか、そういう考え方もできると思うんですけれど。

村 上: 自分の努力が大切であると?
エルセ: 願望とか目的があるのであれば、ライスチャームとかお守りを買う以外にも、何か少しでも、できることをやらないと。

村 上: そういうことなら、ライスチャームを買わなくてもいいんじゃないですか?
エルセ: そういった考え方もできます。

村 上: 幸運を呼ぶ「パワー」とかは全然ないわけですか?本人の努力次第ということで。
エルセ: いえ、本人の努力によって、効果が違ってくるということです。効果が出るのが早い、遅いとか、効果の大きさとかですね。



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村 上: 広告を見せてもらいましたら「理想的な結婚相手とめぐり合いましたとか」の体験談が書いてありますが、これって、本人の努力とはあんまり関係がないじゃないですか?
エルセ: いえ、「ライスチャームを持った」ということで、安心感から、その方の雰囲気が変わって、それが、周りの人……ご主人になられた方にも……伝わって、思わぬ結果を出したということも考えられます。やはり、人間、気持ち一つで変わる場合もありますから。

村 上: じゃあ、ライスチャームやエルセさんには悪いですけれど、別に、ライスチャームを買わなくても、その人の雰囲気なり……オーラとでもいうんでしょうか……そういったものを変えるように心がければ、ライスチャームは関係ないということですか?
エルセ: それでいい結果が出せる人は、こういった商品は、もともと必要の無い方です。逆に、こういう商品をお求めの方は「どうしても幸せになりたい」という気持ちで買って頂く方です。で、これを持って安心して頂いて、それによって雰囲気が変わっていい結果に結びつくというのもあるんですけれど「自分でもなにかやってみよう」という前向きなかたの方が、やっぱり、効果は出やすいわけです。それで、いろいろやってもどうしてもだめなのであれば、広告と違ってくるので、お金をお返ししようと、保障期間を設けているわけです。

村 上: 100日間くらいでは、効果は分からないということが広告にも書いてあるじゃないですか。
エルセ: 分からない場合はありますね。ただ、さすがに「100日間」です。それだけの間、ずっと使って頂いて「あきらめて返品します」ということであれば、それならそれでいい、と言うだけの話です。

村 上: 広告に書いてあることで、どれか一つでも、はっきりしていることってないんですか。
エルセ: どれかひとつ?……そうですねえ。出てもらっている人は、連絡先をお教えするわけにはいかないんです。プライバシーの問題もありますし。

村 上: じゃあ、こちらの、歌手デビューした方のCDの名前くらいは分かっているでしょう?
エルセ: CD? CDが出てる? そんなの広告にかいてありますか?



写真3


村 上: はい。
エルセ: あ、そうですか。それ、外国の人ですか?

村 上: いいえ。
エルセ: ああ、これですね。あー。これはちょっと、名前までは分からないですね。



写真4


村 上: こっちの『東京株取引総研所』っていうところもないんですけれど。探してみたら。
エルセ: ああ、これですね……。ないですか?



写真5


村 上: ええ、で、「I.E.R.E.C研究所」というのもないんですけれど。
エルセ: ……。で、ないということから、この広告は嘘であると判断されたわけですね

村 上: はい、実際、ないですよね?
エルセ: まあ、ないのを載せてるわけはないと思うんですけれど……

村 上: でもないでしょう、これ。
エルセ: いえ、ないとは思わないんですけれど。

村 上: じゃあ、連絡先なりなんなり分からないんですか。
エルセ: 私にはわからないです。

村 上: じゃあ、誰がわかるんです?
エルセ: さあ……調べていただくしかないんですけれど
村 上: いえ、調べてみてもないんですってば。こんな名前の寺院も研究所も。
エルセ: 名前は少し変えて載せているんです。

村 上: ? なんで、そんなことするんですか?
エルセ: そうしないと、この研究所や、寺院に全国から連絡がいって、迷惑がかかってしまうんです。

村 上: じゃあ、最初から名前を伏せればいいじゃないですか。「某寺院」とか「某研究所」とか。
エルセ: いや(笑)それじゃあ、いかがわしいじゃないですか。名前が書いてないと。(わざわざ仮名を使うほうがいかがわしくないか?)で、連絡先の方も、お教えするわけにはいかないんです。この機関に迷惑がかかりますから。

村 上: そうすると、この広告には何一つ証明できるものがないでしょう? こちらも、こういう電話をかける前に調べてるんですよ?
エルセ: そうですね……。それ、買われる前に調べられたほうが良かったですねえ。
村 上: .........。
エルセ: もう、よろしいでしょうか?
村 上: (溜息)わかりました、どうも



どうやら、この電話での攻防、(株)エルセさんに軍配が上がったようです。
エルセさんの説明をまとめますと...
    <広告について>
    ・嘘は書いていない
    ・広告の内容についての証明はしない
    ・別に信じてもらわなくても構わない
    ・寺院・研究所についても教えられない
    ・その名称は変えている

    <商品について>
    ・効果はある。それは、半永久的である
    ・効果がないと思ったら、保障期間内に返品してくれればよい
    ・効果の発現には個人差がある
    ・中には相性があわず、効果のない人もいる
    ・効果の受け止め方は人それぞれである
    ・これに頼らない、前向きな人の方が、効果は大きい
と、いった感じでしょうか。
電話録音を聞いた感想としては、この(株)エルセさん、終始、冷静で整然とした語り口調で、対応としては丁寧な印象でした。 ただ、それゆえに「こういったクレームには慣れている」といった印象も拭えないところではありましたが。

「保障期間内なら、きちんと返金する」と明言しているところが、悪質業者と言いきる事への逃げ道にもなっています。 とはいえ、広告に関しては「証明はできない。信じてもらわなくても結構」と言い切っちゃってますけど。(通信販売法・誇大広告の禁止の項目にひっかからないのかな?)
いろいろと笑いを提供してくれる幸運グッズの広告ですが、総じていうなら「信じる者は救われる」ということに尽きるんじゃないでしょうか?

あんまり、マジに受け取らないで“お守りを買う”程度の気持ちで買うのがいいようです。
そして「ダメだコリャ」と感じたら、返品しましょう。保障期間内に。



投稿
探偵タイムス



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