シリーズ『離婚』第四弾

〜 離婚裁判に関するコラム 〜




皆さんこんにちは。二階堂です。この連載もプロローグを含めて5回めとなりました。本日はちょっと趣向を変えて、離婚裁判に関するあれこれを書いていこうと思います。

まず、みなさんが離婚をしようと思うとき、どういう理由で離婚するかのおさらいです。民法上、夫または妻が一方的に離婚を請求できる場合として

1、相手が浮気など不貞行為を働いたとき
2、相手に悪意で遺棄されたとき
3、相手が3年以上生死不明のとき
4、相手が回復の見込みのない強度の精神病にかかったとき
5、その他結婚を続けられない重大な事情があるとき

この5つがありました。そのうち、1番の「浮気」ですが、これは継続した肉体関係がある場合に認められるものです。一度きりの偶発的な浮気は、これに当てはまりません。2番は、生活費を渡してくれないというのが一般的な遺棄です。これは民法752条に定めのある「協力扶助義務」に違反していることになります。3番は文面のまま、4番の精神病の定義は、どの程度で回復の見込みがないのかについてはケースによって異なりますので一概には言えません。

そして、5番の具体的な「重大な事情」ですが、これは、2番で例示した「生活費を渡さない」も当てはまりますし、「ギャンブルにのめりこんでしまい、収入も全部つぎ込んでしまう」や、「働く能力もあるのに働かない」果ては「家に寄り付かない(同居義務違反)」などがあげられます。
そのほかにも「繰り返し暴力を振るい、侮辱しつづける」や「異常な性癖または性交不能などの性的不一致」、「宗教への異常なのめりこみ」「浪費」など、さまざまな離婚原因が当てはまります。

さて、上記のような離婚原因がはっきりしたら、次は離婚裁判に向けての準備です。前回までの本連載でお話したとおり、日本は調停前置主義をとっていますから、まずは調停ということになります。今回は調停、審判については省きますので、次は離婚裁判をするという前提でお話を進めましょう。

裁判所では、離婚したい側が、上記のような具体的な離婚原因の証拠を裁判所に提出する必要があります。これは離婚原因を書面にするだけでは足りず、具体的にホテルに入る際の写真や、行動、そして周りの人の証言など、裁判所が見て状況が理解できる相当の証拠を提出するほうが有利なのは言うまでもありません。

※裁判は離婚の最終手段
調停または審判でも話し合いがつかない場合は、地方裁判所に離婚を求める裁判を起こし、判決で離婚しなければなりませんが、裁判の際には財産分与、慰謝料の請求も同時に審理でき、子供がいる場合には、親権(子供を育て、養育し保護する「身上監護権」と子供の財産を管理する「財産管理権」の2つ)も審理します。
訴訟を起こすほうを「原告」起こされる側を「被告」と呼びます。裁判の申し立ては、原告が「訴状」を裁判所に提出することから始まります。ただ、裁判になると法律の専門知識が必要となるため、よほど自信とヒマのある人でない限り、弁護士に依頼するのが良いといえましょう。

※離婚裁判にかかる時間と費用
裁判所への手数料は、訴状に収入印紙を貼って納めますが、収入印紙の額は請求内容や請求する慰謝料の請求金額によって変わりますが、おおむね10万円あれば足りると考えて差し支えないでしょう。ただし、離婚訴訟の際に証人に出廷を求めると、日当、旅費も必要に応じてかかります。これらの費用は、敗訴した側が最終的に負担するのが一般的です。また、弁護士費用も当然発生しますが、これについては最寄の弁護士会などで、大まかな金額を確認しておくのが良いと思います。
訴訟にかかる時間ですが、地方裁判所(一審)だけでも1年〜1年半、最高裁まで争えば5年以上かかることもあります。
裁判で勝訴すれば、相手がゴネても離婚でき、慰謝料の支払い、財産分与も強制執行することが可能です。

※離婚後の姓について
結婚により姓を変更した場合、離婚した場合は旧姓に戻るのが原則です。離婚後も結婚時の姓を名乗りたい場合は、市区町村役場の戸籍係に「離婚の際に称していた氏を称する届」を離婚成立後3ヶ月以内に提出しなければなりません。また、離婚後の戸籍は、結婚前の戸籍に戻るか、新戸籍を作るかを記入する欄があります。どちらを選ぶかは自由ですが、離婚後、子供を自分の戸籍に入れる場合は結婚前の戸籍に戻ることはできません(親子3世代戸籍の禁止)

子供の戸籍は、父母の離婚による影響を受けません。離婚時の戸籍筆頭者が父であれば、親権者が母で同居していてもこの籍は父の戸籍に残り、姓も変わりません。しかし、このような場合は不便な場合が多いので、この姓を母親と同じように改姓することが可能です。手続きとしては、家庭裁判所に「子の姓の変更許可」の申し立てをします。上記の理由であればほとんどの場合、すぐに認められ、許可審判書が交付されます。これを入籍届とともに市区町村の役場に提出、受理されれば手続きは終了です。この手続きは、子供が15歳未満の場合は法定代理人(親権者)が本人に代わって手続きを行います。手続きは親権者でなければならず、もし監護権のみをもっている養育者であっても、親権者の同意なしに子供の姓の変更はできません。また、子供が15歳以上のときは子供自ら申し立てを行い手続きすることができます。そして、子供が20歳になったときにはさらに、姓を元に戻すことも可能です。この場合は市区町村役場の戸籍係に届出を行うだけで足ります。



(参考)子の氏の変更許可 フォーマット(PDFファイル)

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次回は、財産分与、慰謝料や養育費の算定についてお届けいたします。


  ※離婚紛争の際は、弁護士に依頼することをお勧めします。
   探偵ファイルではご相談に応じることは一切できません。
   文中に出てくる人名、地名はフィクションです。



( 探偵ファイル・二階堂 )



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