シリーズ『離婚』第二弾

〜 熟年離婚と超核家族化 〜


埼玉県さいたま市在住の佐々洋一郎さん(55歳・仮名)は、会社の早期退職制度を利用して、33年勤めた会社を退職したばかり。 今まで、家庭のことについても、子育てについても、一切奥さんの美恵子さん(49歳・仮名)任せで全て仕事に費やした33年でしたが、早期退職制度で多めにもらった退職金で美恵子さんと二人で旅行しようと思っていたところでした。
ところが、突然、美恵子さんが真剣な顔で....
「離婚していただけますか」 ....と言ってきたのです。

佐々さんの家庭は、佐々さん、美恵子さん、長男の和重さん(29歳・仮名)と長女の裕香さん(20歳・仮名)の4人家族。 すでに和重さんは結婚しており、去年は待望の孫娘、綾香ちゃんにも恵まれ、佐々さんも退職有給休暇中はずっと、綾香ちゃんと遊ぶ日々でした。

裕香さんは都内の有名私立大学に通っていますが、佐々さんの退職金と今までの蓄えをあわせれば、生活に支障は無いはずでした。
『退職を機に、これからは家族との時間を大切にしていこうと考えていたのに...。』
佐々さんは、すっかり落ち込んでしまいました。

「お、おい、なんでいきなり。。。何を言うんだ!」
佐々さんも美恵子さんの唐突な申し出に戸惑い、あわててしまうばかりですが、美恵子さんは...
「確かに、生活は良かったわ。それなりにね。でも今まであなたは散々自由にやってきて、家庭の事もろくにやらなかったじゃないの!今さら虫が良すぎるわよ。」...と言います。

しかも、いつの間にか弁護士に大体の離婚の手続きや慰謝料、財産分与についても相談していたらしく、美恵子さんはすっかり離婚する気のようです。

「現状日本では、離婚すると配偶者...つまり私ね。の年金が不利になっていて熟年離婚は不利なのよ。でも、こんなこともあろうかと個人年金の積み立てもやってきたし、あなたの退職金も出たことだし。ここですっきりさせたいわ。私も、一度きりの人生の最後は楽しくやりたいのよ」
 ....美恵子さんの決意は固そうです。

    近年言われている「熟年離婚」ですが、以下のパターンに分けられそうです。

    (1) 夫の定年が決まった時点
     (長年離婚願望があるが、金銭的な面を考え、夫の退職金が出てから
      離婚要求するタイプ)
    (2) 夫が会社の早期退職優遇措置を利用し、脱サラを図ろうとした時
     (今までの安定した生活が破壊される事への不安から離婚要求するタイプ)
    (3) 夫がリストラで、今までより収入が下がる、または完全解雇される
      (人間的に見捨てられる状態)
    (4) 妻が何かのきっかけで "人生を変えたい" と考えた時
      (熟年離婚でも比較的若い層に多く、一度きりの人生を楽しみたいと思って
      いることが多い)

    いずれにしろ、「女は家庭ばかりじゃだめ」「人生をエンジョイ」「夫がだめなら自分で」というキーワードを元に行動される女性が多いようです。 ただ、現状の日本のシステムでは、熟年離婚は慰謝料(専業主婦の場合、財産分与が全財産の半分ではなく、3割程度に抑えられる事例が多数ある)や、年金などの社会システムから見ても妻側が不利なようです。
「今まで、苦労をかけたのはわかっているけど、なんとか考え直してくれないか・・・」
佐々さんが説得します。
息子の和重さん、娘の裕香さんには...
「もう二人の問題だから、好きにしたらいいよ」
と言われてしまい、このままではらちがあきません。
美恵子さんはさらに言います。
「もう決めたことだから。今まで散々好き勝手してきたんだからあなたには何も言う権利はないのよ。」

そんなことをうこうしているうちに業を煮やした美恵子さんは、弁護士を通じ、家庭裁判所に 調停の申し立てをしてしまいました。

    離婚をするには、夫婦相互納得のうえで離婚届を提出する『協議離婚』でなければ、家庭裁判所に『調停』を申し立てなければなりません。 日本の法律上、相手が行方不明、重度の精神病などの特殊な事情がある場合を除き、調停無しにいきなり裁判はできないのです。

    *調停申し立ての方法*
    調停は、弁護士に依頼するほか、自分ひとりで家庭裁判所に申し立てることもできます。 管轄の家庭裁判所には【離婚(夫婦関係事件)の調停申立書】というものが置いてあり、原則無料でもらうことができます。 また、夫婦の戸籍謄本も添付書類として必要です。 証拠書類(浮気調査の報告書など)があればそれも添付しましょう。 申立書の記載方法は簡単ですが、わからなければ裁判所の係員に聞きましょう。 なお、申し立ての費用は各裁判所で若干違うようですが、約1,500円程度であり、申立先の家庭裁判所は相手の住所(戸籍や住民票は関係なく、居所)の管轄をする家庭裁判所になります。

    ■参考:夫婦関係調停申立書(PDF)■
    円満解決用
    離婚調停用
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「とうとう裁判所のお世話にもなるのか。」
佐々さんはさらに沈んでしまいますが、子供達は意外とあっけらかんとしています。
「親父は好き勝手してきたから、しょうがないよ」
仕事、仕事で突き進んできた佐々さん。家族のために働き、それなりの収入や地位もありました。
とはいえ、やはりお金だけでは家族といえども心まではつなぎとめることができないようです。

次回は、佐々さんの調停第1回からお届けいたします。



*文中に出てくる人名、地名はフィクションです。

( 探偵ファイル 二階堂 )



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