ある日、気が付くと左手の小指がなかった・・・。
イシャに行ってくっつけてもらおうにも、無くした指が見つからない。
途方にくれること一ヶ月・・・。
だいぶ違和感がなくなってきた矢先、無くした指を見かけたという情報を聞いた。
もうヤツには会えないと半ば諦めていたときだったので、
半信半疑のまま、ヤツの連絡先を聞き、会う約束をとりつける。
約束の当日。
いよいよヤツとの対面である。
自分でも緊張しているのが分かる。ちゃんと笑えているだろうか。
果たして、ヤツは約束の時間にやってきた。
・・・・・・・・・。
離れ離れになっていた一ヶ月、
ヤツはすっかり都会に洗練され、カッコイイ指になっていた。
ヤツがやけに眩しく見える。
ヤツも久しぶりの本体が懐かしいのか、目を細めている。
付け根: 「久しぶりだな、兄弟」
指: 「・・・元気そうでなによりだ。もう会えないかと思っていた」
付け根: 「・・・戻ってきてくれるか」
指: 「ああ」
ヤツは、ゆっくりとした動作で、俺に近づいてきた。
いよいよヤツが俺とひとつになる。
合体!!
は、はうぅぅぅ!!!
懐かしい感覚が俺を襲う。
離れていたのが嘘のように、ヤツは俺となじんだ。
もう寂しい思いをしなくてすむ、マイクを握るときやチョークをつまむときに
小指を立てることが、あたりまえのようにできるようになるという
高揚感に俺は酔った。
・・・こうして俺の指は元通りになった。
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