●更新日 03/16●


サービス残業とは無縁?橋下知事批判の女性の「正体」


橋下徹・大阪府知事に対する「反論」を展開した女性について、ネット上では非難の声が集中し、大きな話題になっている。当初は個人の発言内容が主な論点となっていたのだが、マスコミの報道姿勢をめぐる問題にまで発展しているようだ。

2008年3月13日、橋下知事は府庁での朝礼にて、始業前に朝礼を行なうと超過勤務になるというのはおかしい、と主張した。始業前の朝礼が超過勤務手当ての対象になるというのなら、始業時間から終業時間まで私語や喫煙は一切無しにしてくれ、と発言。それらが発覚したら給料を減額したい、とまで述べた。すると、知事の発言に対して一人の女性職員が立ち上がって反論を始めた。

この女性職員は、橋下知事のこれまでの発言に疑問を投げかけた。知事の発言は、自治体労働者と府民という労働者とを分断する結果をもたらしているという。また、女性は「どれだけサービス残業やってると思ってるんですか」と、知事が職員の実態を把握していないことについても怒りを爆発させた。詳細は、youtubeにアップされている動画でも確認できる。


この一連のやり取りが、新聞やテレビでも大きな話題になった。そうした中で、ネット上ではこの女性の「正体」に注目が集まることに。この女性は左翼系の人物なのではないか、という噂が広まった。その理由の一つは、「関西合同労働組合泉州支部サンボー分会」というサイトの記述内容だった。このサイトの3月13日の更新内容に、「今日、大阪府知事の橋下の反論した女性も3.16集会に来ます」との記述があった(現在、当該のページは削除されてしまった模様)。

一方、これまでの報道で、女性の勤務部署が環境農林水産部であると判明していたこと等を手がかりに、名前やこれまでの活動等をネットで検索する人々が続出。すると、この女性と思われる人物が、左翼系雑誌「前進」の2334号(2008年3月10日)に投稿しているとの話題が出てきた。投稿の題名は、「“給料半減、職員2/3をカット” 橋下大阪府知事にスト突きつけよ 3・16へ大阪の青年労働者は闘う」。

橋下知事と大阪府の現状を批判する内容なのだが、次のような過激な発言も。「この1年くらいで、私は資本主義への怒りのすべてを革命への情熱に転化できるようになりました」、「仲間と職場をまるごと組織し、ストライキに立ちたい!ストは労働者階級の最強の団体行動です。あくなき搾取と戦争を続ける資本主義社会にゼネラルストライキでトドメをさそう!」。末尾には、「3・16集会は、闘う階級的労働運動の大きな通過点となります。自治体労働者も、民間の労働者もみんな集まって、国境を超える団結をつくろう!」とあり、執筆者の名前も記されていた。

また、「ユニオン東京合同」というblogの3月14日の更新内容にて、「橋下知事に異議あり」と題して、この女性のメールが転載された。それによると、「サービス残業はおかしいやろ!という電話を逆に全国からじゃんじゃんかけてください。労働者の団結で分断をはねかえし、はじまった決起、職場の高揚への激励をお願いします。明日が攻防の分岐点になります」とのこと。

ところが、サービス残業問題を繰り返し指摘していた女性の発言に、思わぬ事実があることが判明。3月15日のテレ朝系「サタデースクランブル」の放映内容で、「サービス残業は月にどれくらいあるんですか?」との質問に対し、女性は「それ(サービス残業)は私はしてません」と回答していた。この発言については、番組でも論点の一つになった。出演者たちの議論の様子は、以下の動画で確認することができる。
http://www.yourfilehost.com/media.php?cat=mov&file=5520sata_suku080315.mp4
写真

ネット上では、サービス残業をしていない人物がそのようなことを言っていたのか、といった非難の声が集中した。また、サービス残業は法的に見ても問題であり、そのことを主要な論点にしないで現場の苦労を語る女性の主張の前提には疑問があるとの意見も。その一方で、この発言を他の番組では一切放映せず、むしろ当該箇所をカットして放映しているかのように見える番組も多々あることに対する批判も続出した。こうして、この問題は報道内容に都合の悪い部分を隠すマスコミの倫理問題へと展開していった。

主義主張は人それぞれ異なるので、論争に決着がつくはずもないだろう。だが、サービス残業の法的問題や、番組の意図的な編集の問題については、きちんと議論されなければならないはずだ。今回の騒動は、女性職員へのバッシングだけで終わらせてよいものではないだろう。



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