●更新日 05/18●


真冬がまだ終わらない建築業界


ヒューザー、姉歯・・・こんな名前が世間を騒がしたのはもう3年前。
建築業界の暗部だった偽装や手抜きなんかが一斉に明るみに出た年でしたが、世間はもう昔の事と認知しているような感があっても、まだまだ業界自体の冷え込みは終わっていません。
これらの事件以降、行政からの建築確認が極めて下り難くなり、都内では新規のビルが滅多に建たなくなりました。
どれくらい厳しいのかと言うと、最初の時点で出した設計書のまま変更なく施工終了しないと駄目という基準に。これは例えば、実際に土地にコンクリート打って配管繋げて行く内に、ここの管はこの大きさじゃ駄目だから変更・・・というのが出来ないという事です。
この厳しくなった基準の余波が直撃しているのが、ゼネコン以下の建築や設備会社。ビルが建たないから仕事がない。仕事がないから倒産して行くのは当然の流れとでも言いましょうか、この2年の間に倒産した関東の設備会社はゆうに3桁になっているとか。
姉歯事件以前、例えば直径100pの配管の予定だったけど、実際の口径は130p必要だ・・・とか、設計図には無いけどここに配管しないと排水しない・・・何て時は機械で穿孔していました。
RCボーリング、通称コア抜き

現場で図面通りにならないなんて事は往々にして起きるので、そういう時はバンバン穿孔していた訳なのですが、この機械でコンクリート切ると、中の鉄筋まで切ってしまうので、要するに建物の強度が下がります。
抜いたRC。銀色のが鉄筋。

上の映像はその最たるもので、コ型で入っていた鉄筋を縦に切っています。こんなの現場で見つかったらトンデモない騒ぎになりますが、穴空けないと配管出来ないなら空けるしかありません。
しかし、この強度が下がるというのが耐震偽装問題で安全基準に過敏になったゼネコン会社連からの目の敵にされ、コア抜き厳禁にする現場続出。実際、ある建築会社では一発コア抜くと監督が始末書と罰金だとか。
そんな逆風を最も食らい、RCボーリングだけを専門でやっていた会社は倒産続出! 1人親方で請け負いしていた職人は、給与が毎月10万円前後なんてざらに!


これは建築業界の中のほんの一例ですが、新規の建築許可が下りないと言うことは、既に建っているビルの改修か規制前の継続しかないわけで、全体的に建築業界は仕事が少なくなってしまいました。ビルやマンションを建てる為に更地にはしたけれど、いっこうに基礎のコンクリートすら打たれていない・・・という土地が都内には相当数ありますが、それにはこんな理由があります。
こんなビル建たないままでいられる訳がないので、今年の春くらいから規制緩和されるなんて話はありますが、まだまだ悪い状況は晴れそうにありません。
たった1人で建築業界を真冬に叩き落とした姉歯元一級建築士。そんな彼を「姉歯は設備界のヒーロー」だなんて自虐的に業界では呼んだりしていますが、出所した時、彼・・・職失った職人に刺されるんじゃないだろうか。

おまけとして、姉歯の事件以前に杉並区である10階建てマンションが改修工事を行った際、簡単な配管でも全部コア抜きでやった為、400発ほどコアが抜かれました。まさに虫食いのマンション。西東京の老人ホームが改修の際も、強度のことなど考えずに100発以上抜いたという話もあります。これらの建物はM7くらいの地震が起きたら間違いなく倒壊すると建築会社の方みずから言っているわけなのですが、それを「別にいいよ、やっちゃえ」と容認していたこともまた事実。



山木



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