●更新日 09/11●


鳥取砂丘落書き問題 マスコミ記事に異論


9月10日のニュースウォッチで伝えた、名古屋大学のサークル「HUCK」による鳥取砂丘への落書き問題。それに関する続報をお届けしよう。

このような事件がおきるとマスコミ各社は決まったかのように「若者、集団心理で暴走」などと、行動を起こしたきっかけを「集団心理」とする場合が多い。
今回の問題についても、J-CASTが2007年9月10日に、「鳥取砂丘に名大生巨大落書き 集団心理で常識置き去り?」という記事を掲載した。

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この記事では、HUCK関係者らによる一連の行為は、集団心理によって常識的な感覚が麻痺してしまったためではないかと推測している。このような見方は適切なのだろうか。若者のコミュニケーションに関して研究している社会学者に質問をぶつけてみたところ、「全く的外れな記事ですね」という答えが返ってきた。

では、一体何が的外れだというのか。インタビュー内容をそのまま文字に起こすと膨大な量になるため、編集部の責任でインタビュー内容を再構成し、掲載許可を得たものを以下に記す。

J-CASTの記事の主な問題点として挙げられたのは、次の箇所だ。
「書いたとみられる名古屋大学のサークルは、法を犯した可能性があるのに、ブログで堂々と写真まで公開していた。AAAに続き、またまた発覚した若者の落書き行為。なぜ自分のしていることに自覚がないのだろうか。」
「国立大学の学生といえば、地域ではエリートとされる。サークルの学生たちは、落書きすることで観光客の楽しみを奪うことなどに気づかなかったのだろうか。」
「ネットテレビ「アメーバビジョン」では、サークルメンバーが06年9月に投稿したとみられるビデオ「HUCKRALLY2006・1隊スタンツ」が放映されていた。それを見ると、落書き当日は、集団心理で常識的な感覚が麻痺していたのではないか、と思えてくる。」

上記の引用箇所では、HUCKメンバーの行動が「無自覚な行為」、「集団心理で常識感覚が麻痺したもの」として捉えられている。だが、本当にそうなのだろうか。このような推測が正しくない理由として研究者が挙げたのは、J-CASTが引用したアメーバビジョンの動画や、当サイトの前回の記事でも触れた線路への不法侵入だ。

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線路への不法侵入は、たった3名とその撮影者のみ。これを「集団心理」と説明するには無理があり過ぎる。また、この不法侵入と上述の動画には共通点がある。それはカメラ目線だ。動画には大人数が出てくるが、リーダー格の人間のカメラ目線を軸に行動がなされている。つまり、彼らは集団心理で「ワケが分からない状態」になっているのではなく、他人からの視線を想定して、そういう状態を模倣しているというわけだ。砂丘への巨大な落書きも、同様だろう。

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「今の若者は集団行動で暴走する」という、新聞やテレビで見かけることの多い見解は、この領域を研究する社会学者たちから見れば、話にならないという。無自覚に非常識な行動をとったり、集団心理が働いて暴走したりするのではない。世間的に見れば非常識だと自覚しつつ、むしろそれだからこそ、常識に反して暴走する姿を演じているのだ。他人からの視線を前提として、自覚的にそういう行動をとることが、その場のノリに基づいた彼らのコミュニケーションを構成している。

「J-CASTの記事のような語り方は、自覚的になされた行為を「若気の至り」や「集団心理による暴走」と評価することで、免罪符の役割さえ果たしてしまうのでは」と、先述の研究者は手厳しい。砂丘への落書きは模倣犯が続出しているというが、それもまた自覚的ゆえに悪質なのだ。



高橋



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