●更新日 7/17●

夫、行方不明になる




読者のみなさんから頂くメールの中で、一貫して多いのが
「昔のスパイ日記がいい」というもの。「はて、昔のスパイ日記とはなんだったか」と首をかしげる。←(考えること7秒)
そうか、昔のような調査実例のようなもの、そして探偵のハウツーがいいのかな?ということで、今回はひさびさに、過去の調査の実例から。
(注:依頼者からの許可は取っておりますが、プライバシー守秘のため、一部フィクションです)


当時、事務所のパソコンは最新鋭CPUのペンティアム166M、メモリーも16メガ入っているのを使っていた。今なら「ハァ?何それ?」というスペックだが、当時はそんなパソコンが30万近くした時代だった。そのパソコンで、私はインターネット、というものに興味を覚え始めていた。だがそのころは、


「パソコンやってるんだ」


というだけでオタク扱いされた時代。いわゆるパソコンの普及初期だったため、私の周りの人間には、あえてパソコンをやっていることは言っていなかった。


ある日の朝メールが入った。当時隆盛を極めていたホームページの管理人からだった。


「ご相談したいことがあるので、ご連絡をください...実は私の夫が。」


それまでにもこの管理人さん・・・仮に西田さんとしよう。とは何度も掲示板やチャットでやり取りを重ねていたのだが、仕事内容とメールアドレス以外の情報はほとんど知らなかった。結婚していることすら知らなかったのだが、西田さんは私が探偵をやっていることを知っていたため、それを頼りにメールをしたとのことだった。


メールの内容は切羽詰ったその西田さんの様子が記載されている。


私はすぐにそのメールを見て、外出の準備を始め、当時まだバッテリーが大きかった携帯電話で電話をかける。探偵は依頼者との電話の内容によっては、そのまま電話をしながら出かけなければならない事もある。当時から私は、全社員に携帯を持たせていた。


「もしもし、ガルエージェンシーの渡邉です。メールを頂いた件でお電話しました。」


言い終わらないうちに


「夫が、置手紙を残して突然失踪したんです!しかも部屋ごと失踪したんです!すぐに来てください。」


錯乱している。まずい。


事務所から飛び出し、タクシーを拾う。


「西田さん、すぐにお伺いしますから、部屋内はさわらずに、そのままにしておいてください」


現場保存をお願いして、タクシーを世田谷方面に向かわせた。


−つづく−








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