●更新日 09/08●






主   文
被告人を懲役8年に処する。(求刑 懲役10年)
未決拘留日数中200日をその刑に算入する。

理   由
(犯罪事実)
 被告人は、東京都新宿区に本店を置くグランドキャピタル株式会社を中心とするグループ会社で構成されるグランドキャピタルグループの会長で実質的経営者としてその業務全体を統括掌握していた者であり、同グループは、本店や全国のサロンと称される支店を拠点とし、表向きは宝石、貴金属、健康食品の販売及び輸出入等を事業目的としながら、実際は同社を主宰者とする宝飾品等の連鎖販売取引を仮装し、その商品代金名下に金員の出損を受けて利益を図ることを共同の目的とする多数の構成員等からなる継続的結合体であって、被告人の指揮命令に基づき、あらかじめ、同グループの経営企画室長において、法的手続き、商品企画に関する調査等において被告人の補佐をするなどの、同グループ管理部長において、会員管理等を行う管理部門を統括するなどの、グランドキャピタル(株)GCC事業本部管理部長において、同社の管理部門を統括するなどの、任務分担をそれぞれ定めた上、さらに、グランドキャピタルグループの事業説明会の開催計画の策定、会場の手配、同説明会における説明、契約書類等の作成、顧客管理及び出納管理等の任務分担を定め、これに従って一体として行動する組織により、全国各地で事業説明会を開催して新規会員を勧誘し連鎖販売代金名下に金員を手損させることを反復して行っていた団体である。(以下略)

(犯行の態様)
 各犯行は、全国に設置された豪華なサロンと呼ばれる12もの支店を利用し、また、全国各地の高級ホテルで著名人を交えた事業説明会を行うなど、組織的かつ計画的に広域にわたって行われたものである。第一の事案については、元大統領を説明会に呼んだり、金鉱山を背景にグランドキャピタル社の看板が写った写真のパンフレットを示しながら、さもペルーインカ帝国3000年記念金貨コインの製造が現実にできるかのように見せかけ、巧みに多額の金銭を詐取している。また、第2及び第3の事実についても、支店などの説明会において、事業が順調に推移しているかのように装って申し込ませたり、期間限定、人数限定で早い者勝ち、今回に限りであるなどと特別であることを殊更に申し向け、被害者の心理を巧みに突いたりするなど巧妙な方法を用いている。態様は極めて悪質である。そして、被告人は、グランドキャピタルグループによる一連のマルチまがい商法によって得た多額の金員を自己の個人的游興費に被告人の供述するだけで900万円は消費しているほか、高級マンションに居住し、高級ホテルに宿泊し、著名人らと豪華な会食を頻繁に行い、高級腕時計などの贅沢品を買い漁ることなどに消費している。これらによれば、共犯者中、被告人が最も犯情悪質で刑責が重いことは明らかである。

(量刑事情に関する被告人の主張についての判断)
 被告人は、グランドキャピタルグループを発足させた当時は、配当金は金融業や卸問屋等を営むなどして資産運用することで約定どうりの配当金を支払っていくことができると思っており、当時は、破綻するであろうとの認識がなかった、自分が予想した以上に上位会員が金を集め、急激に会員が増えたのでマルチまがい商法をやめようと思ったことがあり、平成13年8月ころにもマルチまがい商法をやめることを考えたが、いずれの際も、上位会員の反対でやめられなかったと主張するので、検討する。

(本件被害結果)
 被告人らによる本件犯行がもたらした被害について見ると、起訴された分だけでも約1億円という非常に多額に上っている。これらの一部は、被害者が老後の生活資金や娘の結婚資金などとして蓄えておいたものや退職金なども含まれ、借金をしてまで捻出した者や、81歳の高齢者の被害者もおり、これらの被害者の受けた被害は、単に金銭的なものに止まらず、精神面でも大きく、影響は甚大である。しかも、その大半は被害回復がなされていない。多くの被害者が被告人らの厳重処罰を望んでいることは無理からぬものがある。もっとも、本件犯行の被害者の中には、以前に同様の被害に遭いながら、その損害を取り戻そうとしてであれ、再び本件で被害に遭った者などもおり、また、出資した金員が3ヶ月で2倍あるいは1年間で1.44倍になることは昨今の経済情勢を考えれば困難であることは容易に想像がつくところであり、やや軽率であったことは否めないが、被告人は積極的かつ巧妙に利殖意欲をあおって詐欺商法を敢行したのであるから、その刑責を減ずる事情と見るべきではない。
 本件のような組織的で規模の大きいマルチまがい商法は、多数の被害者と莫大な被害額が生じ、社会的影響が大きく、この種の犯罪を禁圧する一般予防の見地からも、厳しく処罰する必要があり、特に首謀者の刑事責任は非常に重いといわざるを得ない。


平成17年6月27日
  大阪地方裁判所第9刑事部

 裁判長裁判官   米 山 正 明
       裁判官   丸 山  徹
       裁判官   森 嶌 正 彦



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