探偵は不審者？　(２)

「他社にも調査の依頼をしていますか？」
と依頼者に聞いてみた・・
すると依頼者は「ええ・・まぁ・・」　とバツ悪そうに答えた。
依頼者は以前、他の探偵社に調査を失敗されたそうである。
今回は保険のため、２社に調査を頼んだのだとか・・
ならば仕方ない・・
我々は他社(不審な若者達)を気にせず調査を続行する事にした。

対象者が車で動きだした。
他社探偵と我々は対象者を追跡した。
他の車を縫うようにして走る対象者の車には、車での尾行は困難だった。
他社探偵の車も同じである。



他社探偵も我々の車の後をしっかりとついてきていた。
やがて我々の車から対象者の車は見えなくなっていった。
だが我々のバイク班はしっかりと尾行していたのだ。
よく見ると、他者探偵のバイクは我々の後ろにいる・・
対象者の車がかなり先に行っている事に気付いていないようだ。
完全に我々を当てにしている事がわかった。
他社探偵は失尾している・・
我々の車は尾行をバイク班に任せ、車を停めて待機する事にした。
すると他社探偵は我々の後ろに車を停め、慌てて近寄ってきた。



他社探偵：「○○探偵社の者です。対象者はどこへ行きましたか？」
ようやく失尾に気付いたようだ。
他社探偵：「そちらも探偵社ですよね・・依頼者から聞きました」
先程の通報の事を確認したかったので・・
私：「ただの不審者ですよ」
他社探偵は一瞬引きつった顔をした・・
私：「さっき通報したのはおたくでしょ？」
他社探偵は必死に惚けていた・・
間違いないと確信した。
他社探偵：「バイクは今どこに？」
私：「わかりません」
他社探偵：「対象者の行き先がわかったら教えて貰えませんか？」
私：「それはできません」
他社探偵は諦めて車に戻った。

その後バイク班から連絡が入り、対象者の居場所がわかった。
その現場に直行すると、他社探偵は我々の後をついてくるだろう・・
彼等の様子をうかがっていると・・
警察官が来た。



また職務質問を受けてしまった・・今回は通報ではないそうだ・・
また不審者扱い・・そんな事にも慣れたものだった。
私の職務質問が終わると、後ろの他社探偵の車とバイクに警察官が向かった。
今がチャンス・・
私は他社探偵が職務質問されている間に車を走らせ、バイク班の待つ現場へと急行した。
思わぬ形で通報の仕返しができた・・

その後、他社探偵を見る事はなかった。
我々は調査を無事成功させて終了した。



探偵　虎次郎