●更新日 03/17●
メキシコの憂鬱
荒木です。
プロの私でも途中で獲物追跡を断念した経験はある。
それは見極めないでしつこく深追いするとトンデモナイ墓穴を掘る可能性があると直勘が働いたときである。
モス・アダム(42歳)は車泥棒を行い、ロス市警に逮捕された。
ベイルボンズに保証を受けて一時シャバへと出たが案の定、ジャンプしてしまった。
懸賞金は四千ドルである。短期間で済めばまあまあの報酬だ。
初動捜査はいつもどうりのプロファイリングから開始。
アダムはメキシコの国籍であった。
無論、家族は国に在住していたので迷わずに私はメキシコへと向かった。
しかしカナダ同様にメキシコもアメリカの捜査に協力的ではない。
数年前にも有名なハワイのバウンティハンターが追跡を試みて騒動を起こして拘留された事例がある。
一筋縄ではいかない現場である。
だが躊躇せずに国へと入った。
用心して気配りを行えばトラブルは避けられるはずである。そう思った。
そしてアダムの家族が住む家の近隣で張り込みを続けた。
本人に悟られぬように聞き込みもおこなったが有力な情報は得られない。
翌日、町を歩いているとふたりの警官に職務尋問を受けた。
それも明らかによそ者あつかいの不愛想な態度であった。
おまけに町を即座に出るように警告された。
どうやら私の正体はすでに調べあげているのを感じた。
素直に国から出て行かなければ挙動不審でブチ込んでやるとも脅されたのだ。
獲物は近くにいるような臭いを全身で感じたのだが、嗅ぎまわれば面倒が待ち受けているような直勘を憶えた。
見知らぬ国では援助は皆無である。
それに法の機関を敵に回すとロクな目に遭わないのは当然である。
諦めきれないが辞退するのも時には有りというものだ。
この稼業において「見極め」「粘り」は重要なことがらである。
バウンティハンター
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