●更新日 03/14●


淫獣ジェレミー・ヒューズ


荒木です。
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犯罪は罪状が何であれ許されるものではない。
だが人の命を奪う輩は特に凶悪と云えるであろう。
ジェレミー・ヒューズ(40歳)、黒人。強姦殺人罪で起訴されたが、ボンズに保証を受けて保釈中に逃亡した。
私の顧客であるボンズの話しでは30万ドルもの保釈金であった。
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被害者の女性はカレン・セドリックという18歳の白人。
街頭でピンプ(娼婦)を営んでいるのに嫌気がさして、店内で客をとって商売する風俗店で仕事をするようになった。
だがヒューズが変態を強要、乱暴されて激しく抵抗したために殺害されたのだ。
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不思議な行動力学だが、拘置所から自由になった者ほど女性のところへ行きたがる。
それが雄の習性なのだろうか、追い込まれた者の安息の地が女性なのかは解らない。
しかし私が逃亡者を捕らえたときは殆どが女性が絡んでいる。淫獣ならなおさらだろう。
聞き込み捜査からヒューズが拘置所に入る前にハリウッドにあるメルローズ・アベニューのナイトクラブに通いつめていることが判明した。
ヒューズ逮捕の期限は60日。充分ではないが時間はある。
私はその店に通いつめてヒューズが現れるのを待ち続けた。
しかしいくら張り込んでも獲物が現れることはなかったのだ。
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次第に焦りを憶えた私の嗅覚が敏感に反応した。
酔客の中にヒューズと似通う不審な男を見つけたのである。
手配写真にはなかった口髭を蓄え、髪型も変えて淫獣とは似つかぬジェントルメンを装っているが眼光がヒューズに似ている。
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目を変えるのは不可能な話しだ。
私は己の直勘を信じてその男をマークすることにした。
幸いチャンスが早めに到来した。
男がトイレに行くために席を立ったのである。
その隙に私は男が握りしめていたグラスを自分のグラスと取り換えた。
それをポケットにねじ込み、急いで店を出て外に駐車していた愛車のシボレーに飛び乗った。
指紋採取器具を取り出して、グラスにべットリついた男の指紋をくっきりと浮かびあがらせた。
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そしてすかさずPCを開いてロス市警にアクセスして指紋照会を依頼した。
無論、パスワードがなければ照会はしてくれない。
だが私はハンターのIDを取得したときにパスワードを貰っているので可能である。
指紋照合の結果、不審な男の正体はヒューズ本人に間違いなかった。
即座に獲物を捕獲する準備に入った。
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トランクから警棒型のスタンガンを取り出してジャケットの内側に潜めたのだ。
銃火器は腰だめにした愛銃コルト自動拳銃があるので万端である。
だがすでにヒューズの姿は店内にはなかった。
ウエイターの話しではキャサリンという名のダンサーと話しをつけて店外へと同伴して行ったということだった。
ひとつ間違えばキャサリンの命が危うい。
急いで駐車場へと向かったところ、まだふたりの姿はあった。
背後から悟られぬように獲物へとにじり寄った。
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そして間髪を入れずに警棒型スタンガンをお見舞いしてやったのだ。50万ボルトの高電流が獲物を倒した。
獲物にとってみれば銃弾を浴びせられるよりはずっとマシである。
拘置所は大歓迎で私を迎えてくれた。
変装を繰り返して女性に毒牙をかける凶悪逃亡犯ヒューズの身柄がやっと確保されたのである。
ヒューズが数十年後ふたたびシャバに出て、女性を狙うことがないように願うばかりである。



バウンティハンター



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