●更新日 03/11●
刑事と探偵と妻を探す男(後編)
刑事たちは放っておき、男性を追って図書館に入ってみた。
図書館の中で男性はタウンページを調べている。
気付かれないように背中へ回り、肩越しにタウンページを覗いてみる
男性が熱心に見ているのは「興信・探偵」のページ。
(はは〜ん)と納得。
私に「妻の行方調査」を断られた男性は、別の探偵社に依頼するつもりなのだ。
そのために図書館でタウンページを調べているというわけだ。
ひとしきりタウンページを眺めた男性は、ある広告ページをコピーした。
そして公衆電話へ向い、コピーを見ながら番号をプッシュする。
すかさず背後に接近して、手にしたコピーとプッシュする番号を盗み見る。
(0120−×××……○○探偵社……)
(もし、この探偵社が男性の依頼を受けたら?)
(そして、妻と子供の行方を探し出したとしたら?)
(それを知った男性がそこへ乗り込んだとしたら?)
(どういうことになる?)
気にはなったが、私もそろそろ時間がなくなってきた。
もともと暇があったから興味本位ではじめた尾行だ。あとは刑事たちに任せることにして、尾行を打ち切り、事務所へ帰ることにした。
翌日。
私のもとへ2人の刑事が訪ねてきた。
昨日、尾行した刑事だった。私のことは全然気付いていない。
用件は、やはり例の男性のことだった。
「実は、暴力事件おこす危険がある人物ということでマークしているんです。
しかし、今現在どこにいるか皆目わかりません。もしご存知のことがあれば……」
(あんたら、あのあと見失ったのかよ!)
内心でつっ込みつつ、とぼけながら答える。
「さあ〜? 依頼はお断りしましたから、詳しいことはわかりません。しかし、そういえば別の探偵社に依頼に行くって話をしてましたね〜。」
「えっ、別の探偵社? どこの探偵社かわかりますか?」
「たしか『○○探偵社』のことを話していましたね〜。」
「わかりました。それは有力な情報です。ありがとうございました。」
(本当なら、あんたも知ってないといけない情報なんだよ。これは!)
私の心の突っ込みに気付くことなく、刑事は礼を言って帰っていった。
その後のことは知らない。
刑事たちは、あの男性の居所を確認できたのだろうか?
そして、再び妻へ暴力を振るおうとする男を止められたのだろうか?
妻と子は男に見つかることなく、平穏に暮しているのだろうか?
わからないし、わかりようもない。
しかし、ひょっとしたら全部うまくいっているかもしれない。
だとしたら、ひょっとして私は人助けをしたことになるのだろうか?
もしそうなら、少し嬉しい。
KEN
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