●更新日 03/06●


探偵アンラッキーデイズ(5)


携帯電話を取り戻し、警察署を出た私は、

「油断してるからこういうことになる。」
「緊張感に欠けているからどうでもいい因縁をつけられるのだ。」
「張り込み中に何をやっているんだ、このマヌケ。」
「気合いを入れろ。さっさと行け。」


という上司の暖かい怒声に送られつつ、ようやく調査に出発した。
ターゲットを追跡している相棒と連絡をとりつつ合流を目指す。

相棒からの連絡によれば、ターゲットの女性は、既に相手男性と合流。
二人でシュノーケリングを楽しんでいるという。


相棒と合流したのは海に面した断崖絶壁の上だった。



相棒は調査車両近くに停め、絶壁の上から海をながめている。
「ターゲットは?」
尋ねると、相棒は黙って眼下に広がる海を指差した。

見下ろすと、はるか下でシュノーケリングを楽しむ一組の男女が見える。

ターゲットと浮気相手の男性だ。

しかし、遠い。
ここからだと、まるで米粒のようだ。
「あたりには人も車も全くありません。近づけばすぐにバレてしまいます。ここから見張るしかありませんよ。」
あきらめ顔で話す相棒。

だが、せっかくのターゲットと浮気相手のツーショットだ。ぜひとも撮影しておきたい。
しかし、ここからの撮影では遠すぎて、証拠写真にはならない。
もう少し近づいて映像が撮りたいとなると……

ここを降りるしかなさそうだ。

(やるしかない。)私はロッククライミングよろしく崖を伝って降り始めた。

果敢に岸壁に挑む。しかし、予想以上に足場が悪い。
距離もある。なかなかターゲットには近づかない。
(こりゃ、思った以上に大変だ。)
そう思っていた矢先、


足が滑った。




(タッ、タッケテーーッ!!)

声を上げそうになるが、それを必死で我慢。
絶叫すれば、ターゲットに気付かれる。第一、叫んだって誰も助けにはこない。
思わず下を見ると、

岩場。

堕ちたら助からない。やばい。

死の予感!!


続く



豊田の探偵



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