
●更新日 02/25●
暴れる男vs探偵×12(前編)
某大手有名企業からの依頼。
調査対象者は「大橋 徹」(仮名)氏。41歳。
徹氏は新卒採用では無く中途採用者で、面接の際「以前勤めていた会社では周りの社員が自分の才能を嫉み、いやがらせされて退職した。」と語っていた。
どうやら能力には自信があるらしい。
採用担当者は、彼の熱意とやる気を買い、重要な部署での採用を決定する。
しかし、採用した直後から、そのやる気と熱意が裏目に出る事となる。
今風に言うと「K・Y」(空気が・読めない)というのだろうか?
やる気があるのはいいのだが、協調性に全く欠けているのだ。
上司から指示された業務を、勝手に自分なりに変更してしまったり。
上司に対し、業務のやり方を自分の考えに沿って変更するよう要求したり。
いくら仕事ができても、自分の考えを周囲に押し付けるような仕事振りでは、有能な社員とは言いがたい。徹氏は徐々に閑職に追いやられ、最終的に「倉庫の配送」に回されることになる。
しかし、そこでも自分本位な言動は改まらず、職場から完全に浮いた存在となってしまった。
当然、彼は会社に配置換えを求める。
しかし、それまでの言動をみれば、簡単に彼の希望を受けるわけにもいかない。
願いが叶わないと知った徹氏は、ほどなく会社を自己退社してしまった。

その逆恨みだろうか?
退社後、彼は会社へのいやがらせ行為を始めたのだ。

夜な夜な、会社の敷地内に入っては、ゴミを散らかしていく。
その程度ならまだ我慢できるが、いやがらせの程度は、日が経つにつれエスカレート。
やがては取引先の会社にまで被害が広がっていった。
「徹氏がいやがらせを行っている証拠を掴んでほしい。」
依頼を受けて調査を開始したのだが、思いのほか苦戦を強いられることになる。
徹氏は毎日深夜に外出し、依頼者の会社や取引先を回って、いやがらせを行うのだが、自覚があるせいか露骨に警戒しており、尾行が極めて困難な状況なのだ。しかも、取引先があまりにも広範囲にわたるため証拠を押さえきれない。
強い警戒心。広い移動範囲。厄介な調査だった。
(こうなったら物量作戦で勝負をかけよう。)
私は上司に事情を説明し、近くの仲間達に連絡を取って探偵たちを呼び集めてもらった。

集まった探偵は異例の総勢12人。調査車輌は計9台。
車両の配置、張り込みの位置、連絡系統など。綿密、且つ、入念に打ち合わせる。
こうして大掛かりな調査作戦が展開されることとなった。
当日の夜。
依頼者と取引先の会社には「待機班」が控え、徹氏の自宅周辺には「尾行班」の探偵と調査車両が張り付いた。徹氏が出てくるのいまや遅しと待ち受ける。
やがて、1人の探偵から無線連絡が入った。
「こちら3号車。対象者が退出しました。」
全員に緊迫した空気が流れる。
自宅を出た徹氏は、まず、用心深く周辺を歩き回りはじめた。
不審な車両や、見張っている人物がいないかを確認しているのだ。
あまりにも露骨な警戒心。そして、

その表情はまさに鬼の形相。
この程度でバレるようなドジではないが、あまりの形相の凄まじさに一同は思わずビビってしまう。
しかし、ここで引き下がっては男が廃る。気合を入れ直して監視を続行。
やがて、徹氏は自分の車に何かビニール袋のような物を積み、自分も乗り込んで走り出した。
それを調査車両が次々と追いかける。
困難極まる車両尾行がはじまった。
続く
愛知の探偵
|