●更新日 06/27●
結婚詐欺師を捕まえろ!2 〜男の嘘を暴く〜
前回
「社長の○○は亡くなりました」
男性の秘書の言葉にM子さんは奈落の底に落ちていくような気がしていた。
“いつ亡くなったんですか?”
“何故亡くなったのですか?事故ですか?”
“葬式は?お墓はどこですか?”
矢継ぎ早に秘書に事情を聞くが、個人情報保護法を盾に答えてくれない。それでもM子さんは秘書に必死に食い下がったが、亡くなったとしか言わない。どうすることも出来ないM子さんは茫然自失のまま京都の自宅に戻った。しかし、どうしてもこのままでは納得出来無い。お腹の子供の為にも、男性がいつ亡くなったのか、なぜ亡くなったのか、何より本当に亡くなったのかもわからないままの状態ではいられない。
そしてM子さんは探偵に相談した。手掛かりは、
対象者の氏名:前川 卓(まえかわ すぐる)
同 年齢:30才前後
同勤務先:ブロードゲード・キャピタル・リミテッドパートナーズ
東京都千代田区丸の内1−1−3 AIGビル9階
携帯電話番号:090−○○○○−1404
mailアドレス:○○○@ezweb.ne.jp
対象者の写真:無し
と、名刺1枚だけだった。
手掛かりがほとんど無かったが、依頼者のお腹の子供の事を考え早速調査に取りかかった。
名刺の会社の住所地に行ってみると、そこはレンタルオフィスになっていた。年収数十億の会社がレンタルオフィスにあるとは思えず、電話をしてみると秘書と思われる女性が出て、
「社長の○○は亡くなりました」
と、依頼者からの情報と同じ内容の返答だった。しかし、レンタルオフィスに秘書が常駐しているとは思えなかった為、
「あなたはブロードゲード・キャピタル・リミテッドパートナーズの社員の方ですか?」
と訊ねると、
「いえ・・・私共は秘書代行サービスを行っている会社の者です。」
「では、ブロードゲード・キャピタル・リミテッドパートナーズの社員の方はいらっしゃいませんか?」
「わかりません。」
法務局を訪れるがやはりの会社登記はされておらず、「年収数十億の会社」という「前川卓」の証言は嘘であることは明らかだった。ガルエージェンシー本社に調査支援を要請し、同ビルで張り込みをしてもらうことにした。同時に別の手段で対象者「前川卓」の行方を捜した。
しかし、携帯電話もいわゆる“飛ばし”と呼ばれる他人名義の携帯電話だったことが判明。会社のビルでの張り込みも、ただ意味も無く時間が過ぎて行くだけだった。他、あらゆる手を尽くしてみるが、何ひとつ「前川卓」の手掛かりが掴めない。 M子さんが知り合った男性の本名が「前川卓」である証明さえも出来ない。唯一判明されたことは、M子さんが男性から聞いていた話は全て嘘であることだけだった。
約1ヶ月以上の調査を行った結果をM子さんに報告すことになる。
「前川卓の情報がこれだけ無いこと、且つ、証言が全て嘘であることから、前川卓は、こういうことに慣れているということです。つまり最初からM子さんを騙そうと近づいた可能性が高く、“結婚詐欺師である可能性が高い”ということです。 それも集団で詐欺を行っている可能性も高いです。もしかして、M子さんは前川卓にお金を貸してませんか?」
無言のまま押し黙ってしまったM子さんを見て、私に出来ることは、お腹の子供のことを“ご両親とよく相談したほうが良い”ことを提案することしか無かった。あきらめ切れない様子と騙されたショックとが入り混じった顔のM子さんは、無言のまま自宅へと帰っていった。
しかし、それから数ヶ月後、この事件は思わぬ展開へと発展していくのでした。
つづく
総合探偵社ガルエージェンシー
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