不思議な絆
「妻は間違いなく浮気しているから証拠をおさえてほしい」
相談に来た夫は興奮していた。
結婚4年目の夫婦はお互い40代で、都内のマンションで2人暮らし。夫は会社員、妻はスナックにパートで勤めながら、妻が結婚前に作った借金350万円をコツコツ返済している。
「妻が水商売するのは状況が状況だけに許したが、浮気は絶対許さない」
夫は息巻いた。
私はまず、夫が疑惑を持つ発端となった妻のブランド物を見せてもらった。
すると、バックから小物まで、ものすごい数のブランド物が出てきた。
妻によると、『全部お客さんからのプレゼントで、良く出来た偽者』とのことなのだが、念のため質屋の友人に真贋と総額を聞くと、なんと全部本物で総額は1000万円相当。
夫は唖然としていた。
ブランド物を確認後、妻を尾行する為に妻の勤務先に移動、仕事が終わるのを待った。
深夜2時、40代とは思えない若々しい格好で出てきた妻は、終夜営業の喫茶店に向かうと、中にいたスーツ姿の老人に「待った?」と近づく…。
老人は「お腹は空いてない?何か食べてその後はゆっくりマッサージしてあげないとねぇ」といやらしい笑いを浮かべ、一気にコーヒーを飲み干した。そして2人は焼肉店へ向かい、その後は豪華なラブホテルへ。
約3時間後老人はホテルからタクシーに乗り、妻は近くの居酒屋に1人で入った。
老人の方は男性調査員に尾行させ、妻は私が尾行。
妻はため息をつきながら1人焼酎を飲み、朝6時にタクシーで帰宅。
6時40分には夫が出勤。マンションの近くで待っていた私の車に乗り込み、結果をきいた夫は、「はぁ?60代のじいさん?あの女…」と逆上。
すぐにも妻を殴りに行きそうな夫をなんとかなだめ、落ち着いて話すように説得。
夫が「自信が無い」というので私も同席することになった。
夕方、喫茶店に呼び出されて不機嫌な妻を、夫が証拠写真を見せながら問い詰めた。
どうなる…修羅場か?一瞬緊張が走った。
ところが、泣いて謝る妻を、夫があっさりと許してしまい、2人は仲良く帰ってしまった。
所要時間はたった20分…。
夫婦の絆って不思議です。私には理解できません。
女探偵ノゾミ
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