●更新日 03/16●

謎の詩集を売る女


東京在住の方なら見たことがある人も多いであろう、『私の志集』を売る女。

島雷鹿

一点をボーッと見つめ、近寄り難いどんよりとした雰囲気を醸し出している彼女は、もう25年程その場所に立っているという。

志集とは何なのか?何故いつも同じ場所にたっているのか?
その異様な雰囲気も手伝って、謎は深まるばかり…。

今回は、その謎を解明すべく、某駅西口へと向かった。

島雷鹿

そこは、会社帰りのサラリーマンからスタジオ帰りのバンドマンまで、毎日様々な人々が歩く場所。
しばらく様子を伺っていると、彼女の存在に気づき振り返る人、遠ざけるように避けて行く人、反応はそれぞれだが、独特のどんよりとした雰囲気の為なのか、人ゴミの中だというのに彼女のまわりだけがまるで別の空間のように時間が止まっている。

頃合いをみて『私の志集』を買いつつ話を聞いた。

島雷鹿

何をしているんですか?
志集を売ってます。

それを売って生活しているんですか?
他に仕事をしてませんが、今も一応生きてますから…。

何故この場所で?
もともと主人が戦後からここで始めたんです。夫婦で立っていた時期もありますが、今は1人で立ってます。

彼女には37歳年上の旦那さんがいて、もともとは彼女自身も『私の志集』の読者だったそう。
途中から彼女も詩(志?)を書き始めたそうだ。
ちなみに、「一日に何冊ぐらい売れますか?」等の突っ込んだ質問に関しては、全て「志(こころざし)を曲げることになるので答えられない」との答え…。

肝心の『私の志集』だが、どういうものかというと、藁半紙に手書きの詩をいくつか印刷し、それをホッチキスで留めた1冊の詩集である。
現在36号まであり、僕が買ったのも36号。本のタイトルは「終わり無き息の音」

内容については、志集の最後のページに「無断撮影・転載・引用・模倣・作曲その他一切かたくお断り致します」と書かれている為、彼女のを曲げない為にも、この場ではふれないことにします。

島雷鹿

今日も彼女は、その場所にぼんやりと佇みながら『私の志集』を売っていることでしょう。



島 雷鹿


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