●更新日 11/19●

編集プロダクション社員の憂鬱


「編集プロダクション」
一般の人々には聞き慣れない職種かもしれません。業務内容は出版社や企業の広報部などからの依頼で雑誌や単行本、PR誌の編集を委託されて、その作業を行っています。ライターに就いた人が流れてくる場所でもあるかもしれません。
今回は、その編集プロダクション(通称“編プロ”)で働く人にスポットを当ててみました。

まずは単行本、文庫本メインの編プロに在籍3年Aさん(28歳・男性)から。
社員15人の中堅プロダクションに中途入社。

編プロに入ったきっかけは?
大学4年時の就職活動で出版社を20社受けたんですが、すべて不採用でした。なかには指定校制度をとっている会社もあって試験すら受けられないところもあって。
それで食品メーカーの営業の仕事に就いていたのですが、どうしてもあきらめきれないでいました。そんな時、2年前に求人誌を見ていたら「経験不問」という文字が目に入ってきたんです。出版社ではないですけど編集の仕事ができるというだけで飛び込みました。業界の中に入ってわかったんですが、出版社の編集部は編プロや外注スタッフの管理などで、実際に現場にでることが少ない。その点、編プロは企画から取材、原稿執筆まで何でもやる。スキルアップにはもってこいです。
作っている本がハウ・ツー本や雑学関係モノの丸受け(1冊まるまる制作する)が多いので、自分の知識もどんどん高まっていくようで楽しいですよ。ただ、いい企画を出さないと他の編プロに仕事をとられてしまうので必死です。どうしてもいい企画が浮かばなくて、円形脱毛症になりかけたこともあります。それだけに出版社の会議で企画が通った時の嬉しさは言葉に表せないくらい。そのあとも大変なのにね。


待遇面はどうですか?
給料はサラリーマン時代が手取り約20万円+ボーナスでしたが、今は月収が9割程度、ボーナスはナシといったところです。生活は苦しくなりましたが、やりたいことがやれて今は満足。でも、将来に不安がないと言ったらウソになりますね。給料が上がれば、もっといいんですけど(笑)

Aさんの会社には元出版社編集部の人が半数以上を占めているので、仕事をスムーズに覚えることができたという。また、原則として1冊をひとりが担当しているので、その補助をすることによって業務の実践的作業も早く身につけられたそうだ。

単行本や雑誌を作るにあたって編プロはなくてはならない存在だ


続いてはストリート系や情報誌を主に扱う編プロ在籍1年のBさん(21歳・女性)。
社員5人の精鋭プロダクションで鍛えられている。

雑誌作りに興味があったのですか?
難しい本は読むのも苦手。普段も読むのは雑誌が中心です。ファッション誌やグルメ誌なんか大好きです。
私は編集の専門学校を卒業して、そのまま学校にきてた求人で入社したんですけど、それらを作る側になれたなんてラッキーですよね。どっちみち大学卒じゃないと出版社には入れませんから、よかったと思っています。


仕事の内容と待遇面を教えてください
主に街頭でその都度の企画にあったファッションをしている人に雑誌掲載の交渉をして、OKならばカメラマンに撮影してもらってから私がインタビューするっていう流れです。真夏の炎天下や真冬の厳寒期に、8時間も外にいることもあり体力的にきつい面も多いです。
情報誌の方は飲食店の紹介が多いですね。料理や内装の特徴を聞いて、実際に食べて記事をまとめます。料理は自分で撮影することもあります。1日にラーメンを4杯食べたこともありますよ(笑)


飲食店取材で辛いのは、料理に苦手なシイタケが入っている時。何も考えずに「えいやっ」と飲み込んでいます。当然、胃薬はいつも持ち歩いていますね。基本的には「アポ取り→取材→原稿書き」の繰り返し。休日は週イチくらい。寝てて1日が過ぎていくのは、21歳の女のコとしては淋しさを感じます…
でも、いろんな雑誌を企画単位、ページ単位で受ける仕事が多いので、今は毎日いろいろな人と会えて刺激的。勉強にもなります。30歳までにフリーライターになるのが目標です。
月収は15万円(残業代、休日出勤などナシ)でそこからもろもろ引かれます。コンビ二でバイトしていた方が稼げるかもしれないけど、それではフリーライターになれないですから。


入社2日目からひとりで取材に出ていたというBさん。休みが少ないのは平気だが、友達と遊べなくなったのが現在の悩み。時間帯が合わないらしい。それでも「好きな仕事をしているんだから」と頑張っている姿は素敵である。

ほかにも数人に話をうかがったが、
「仕事は面白いしヤリガイはある」
ということと
「もう少し給料を上げてほしい」
ということが共通していた。

出版業界が冬の時代に突入したと言われて久しい。彼・彼女らの熱意が今以上にむくわれることを望みます。



デイブ高瀬


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