●更新日 08/24●

A君の友達(3) 〜Bとの対峙〜


○月10日。N君の給料日。
A君は打ち合わせした手はず通り「E新聞配達店」の近くでN君を待った。

しかし、A君のもとに現れたN君の手元に、給料は既になかった。

その日、N君は仕事の都合で、店長が給料を配る時、店に居合わせることができなかったのだ。
N君の給料は「後でNに渡しておきます」と申し出たが預かった。
そしてBは、給料袋の中身を抜き取り、遅れてきたN君には給与明細だけが渡されたのだった。



事情を聞いたA君は激昂した。

A:こうなったら、今から店に乗り込んでやる!
N:え……
A:副店長に給料を返してもらうんだ。Nは他の社員のみんながいる前で、はっきりいうんだ。「副店長に給料をとられました」って!
N:え……
A:わかったな!
N:……うん

※画像はイメージ

「知らんよ? 何のことだ?」

店に乗り込み、居合わせる社員たちの前で問い詰めるA君に対して、B副店長はそう言った。

B:俺がそんなことするわけないだろう?
A:じゃあ、なぜ、給料を受け取ったばかりのN君が給与明細しか持っていないんですか!?
B:知らんよ? Nが家に持って帰ったんじゃないのか?
A:僕はこの店のすぐそばでN君を待ってたんです。N君はすぐに僕のところに来ました。なのになぜ、彼は給与明細しか持っていないんですか?
B:知らねぇって!

Bはあくまでとぼけるつもりのようだった。

A:僕はS君からも事情を聞きました。あなたは、S君からも給料を取り上げていたそうですね?
B:そんなことしてねぇよ! なんだぁ? おまえ、Sの居場所を知ってんのか?
A:居場所は知りませんが、あなたがN君やS君を暴力で脅していたことは聞いています。
B:そんなことしてねぇって。Sの野郎、そんなでたらめを言ってんのかよ。
  ふ〜ん……それで、おまえはそれを信じて、俺のことを敵みたいに思うとるわけかい。あぁ?!

A:ええ。そういうことです。

凄みながらA君を睨みつけるB副店長。A君も負けてはいない。B副店長を睨み返す。



しばらく、A君とB副店長は無言で睨みあった。

「なあ、A君よ。」傍観していた「E新聞店」の社員の一人が口をはさんだ。
社員:Nは以前にもそういう嘘をついたことがあったんだよ。その時は、後で正直に認めて店長に謝ったんだけどな。
A :その時のことだって、N君は嘘なんかついていません。Bさんに暴力で脅されて、店長に謝るように強要されたんです。
B :そんなことするわけがねぇだろうがよ! いい加減にしろよ! おい、N。おまえ本当にそんなこといったのかよ。え?!

BがN君を睨みつける。

:あ……あの……ボク……
N君はうつむいたまま、小さな声で言った。
B:おい、どうなんだよ、N! 本当に、俺がそんなことをしたって言ったのかよ! あ?! どうなんだよ!!

:あの……なにも……言ってないです……

「ほら、な。」社員の一人が呆れ顔で言う。
「そういう、ありもしないことをいう奴なんだよ。Nは。 さあ、A君。Bに謝りなさい。

A:なんで嘘をつくんだよ! N!
A君はN君の肩を掴んで訴えた。
A:本当のことを言ってくれ! どうしてはっきりいってくれないんだ?!
しかし、N君は無言で俯いている。

…………

N君は、怯えきっていた。


→次回へ続く



探偵ファイル・九坪


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