●更新日 08/22●
A君の友達(1) 〜Sの逃亡〜
A君は某新聞配達店に勤める19歳の男性。
ある日、同い年の友人、S君から電話がかかってきた。
S君はA君とは別の配達店「E新聞配達店」の寮に住み込んで働いている。
※画像はイメージ
(S君からの電話)A君:青 S君:赤
Aか? おれは今から“とぶ”(仕事を辞めて逃げ出す、の意)
え? とぶ? なんで?
今、寮から荷物を運び出して、夜逃げの準備をしたところだ。行方をくらましたいから、今後は連絡しない。今までありがとう。さよならだ。
ちょ、ちょっと待てよ。なんだよいきなり? 夜逃げって?
今は急いでいるから話せない。おまえのアパートのポストに手紙を入れておいた。E店長への書置きだ。それを読んでくれたら大体のことはわかるはずだ。もし、機会があればこの手紙をE店長へ渡してくれ。
そして、もしできることなら、Nを助けてやってくれ。
手紙? なんのことだよ。Nを助けて? なんだよ、何がどうなってるんだ?
すまん。(プツッ)
あ! もしもし!
電話はいきなり切れてしまい、その後、何度かけてもつながらなかった。A君にはわけがわからない。
とりあえず、S君は何かの理由があり、E店長に無断で仕事を辞め、寮からも夜逃げしてしまった、ということらしい。
しかし「Nを助けてやってくれ」とは?
N君といえば、S君と同じ「E新聞配達店」に勤めているA君の友人だ。彼が、何か困ったことになっているのだろうか?
事情を掴みかねるA君が、アパートのポストを覗くと、電話の通りE店長に宛てた「S君の書置き」が放り込んであった。
急いで用意したものなのだろう。レポート用紙に汚い字で走り書きしたものだった。
「E店長へ 今回、このようなこと(突然いなくなること)をしてしまい本当にすいません。謝ってすむ事ではありませんが、ぼくのしたことの言い訳として、この手紙を最後まで読んでいただければ幸いです。
そんな書き出しから始まる書置きの内容は、
『E新聞配達店の副店長である「B」に、暴力で恐喝され、給料のほとんどを巻き上げられています。』
というものだった。
(「S君の書置き」抜粋)
『この間もらった給料からも、ぼくの手元には1万4千円くらいしか残りませんでした。毎日インスタントラーメンかやきそばしか食べていませんでした。』
『B副店長にお金を取られているのはぼくだけじゃありません。N君は毎月給料を全部B副店長に渡していたそうです。
それだけじゃなく、Nは弟からもお金を受取ってB副店長にわたしています。N君はすでに数十万のお金を払っているはずです。
彼は病気のお母さんのめんどうも見なければならないので、ぼくのように逃げ出せません。食事もろくにとれていないそうです。
Nはお母さんを病院に連れていきたいと言っています。』
『この手紙に書いたのはほんの一部です。とりあえずぼくにはB副店長を信用して仕事をする事ができません。毎日おびえながら生活することもできません。
本当にすいませんでした。 S』
『PS ぼくとNがおびえているのは、B副店長のぼう力(暴力)に対してです。こわいです……』
→次回へ続く
探偵ファイル・九坪
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