●更新日 06/14●
殺人依頼は10万円(後編)
前編より
組織に依頼し1人目の殺人を終えた辻村(仮名)だが、2人目の殺人依頼もマニラのレストラン開店に纏わるトラブルが原因だった。
店の調度品の手配をしたフィリピン人ブローカーがピンハネしたのだ。
約50万円を着服し使い果たしていた。
2万あればラクに暮らせるマニラでこの額は大金だ。
警察に連れて行ってもいいけど、それは気に入らないですよね。
で、金もないとなったら、殺っちゃう?
「ハードルが下がってない?」と訊くと、
下がってますよ。1人殺るのも2人殺るのも一緒、てなっちゃいます。
今回辻村は、好奇心から殺人の現場に立ち会った。
組織の3人とジャングルを歩いていくと、小屋が見えた。
辻村が木陰に身を隠すと、目隠しされ後手に縛られた横領男が、男2人と小屋から出てきた。
大声で命乞いをする横領男の傍で、辻村と来た男のうち2人が穴を掘り始めた。
何で穴を?
と辻村が訊くと、
埋めるから。
と簡単な答えが返ってきた。
蹴っても殴っても命乞いをやめない横領男は、口をテープで塞がれた。
殺し屋は、横領男をうつ伏せに突き倒すと背中を踏みつけ、ガンを取り出した。
辻村の方を見ながらガンを何度か振ると男の後頭部にその先端を押し付けた。
早いですよ。合図送ったと思ったら「パン」ですからね。
ナニ? て思いましたよ。
期待と緊張で一部始終を見ていた辻村は、震え始めた。
その夜から事件のフラッシュバックが始まった。ふとした時や寝る前にその時の光景や男の表情が浮かんだ。1か月それが続いたが後悔は無かった。
ここまで話すと辻村は頭を片手で押さえて俯き苦しげな表情で言った。
今すごい思い出してるんですよね。
ウミが出てます。
このインタビューで初めて見せた弱気な姿だった。
別れ際、辻村(写真)は言った。
いつでも言って下さいね。殺りたい奴いたら。
海外に行くさいは頭に入れておいた方が良いかもしれない。
命の値段が10万円の国もあるということを。
ぽん
|