●更新日 01/19●

不法占拠で家賃収入


東京都港区、運河に架かる橋のたもとに、不法占拠の家屋があると聞き取材した。

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役所の担当課で聞くと、不法占拠の事実は認識しているとのこと。

「役所公認の不法占拠?」

説明を求めると、終戦直後は占領軍による土地の強制撤収があり、行き場を失った人たちの救済目的で、役所が不法占拠を公認する場合があったという。ただし家屋の建て替えは認めず、今回のケースでは、不法占拠地は橋を架け替えるための工事用の土地で、架け替えの際も立ち退きになる。要するに、期間限定の公認である。


どのような経緯でここに住むことになったか、居住者を取材した。中へ案内されると老朽化の著しい外観に反して普通の民家だった。

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電気、ガス、水道はもちろんのこと、ユニットバス、エアコン、大型TVまである。しかし家屋の運河側にある使われていない風呂場は、土手の下にずり落ちていた。

写真 窓から水面が見える


77歳のAさんは昭和35年に夫と娘の家族3人でここへ越してきた。夫は水先案内人で、家の前の運河から船を出し、近くの港で大きな船舶から乗務員を輸送する仕事に従事した。夫の出航を、この家でエンジン音を聞きながら送り出す平和な日々だったと、Aさんは話す。

写真 Aさん

1人娘も嫁ぎ、夫も7年前に脳溢血で失い、それからは1人暮らしとなった。夫の残した金や年金があるので不自由はないという。

不法占拠について聞くと、「知っている。わたしが死んだら公園になるらしい。でも、人から借りて住んでいるので詳しいことはわからない」と答えた。

「借りている?」と聞き返すと、この家にはAさんが住む前にB氏が住んでいて、仙台に住むB氏へは毎月5万ほどの家賃を払っているという。


B氏は昭和35年から現在までの45年間、不法占拠で家賃収入を得ていたことになる。


役所の担当者は、「不法占拠には性善説で対応しています」と言っていたが、その結果B氏のような不正をはたらく輩が出てくるとしたら、ただの「放置」に過ぎない。

この件とは関係ないが、他には、居酒屋を20年に渡り経営していた女将が突然役所から立ち退きを要求され、調べてみると大家である警察トップの不法占拠が判明したケースがある。戦後のどさくさにまぎれ警察トップと役所が口裏合わせをしていたのだ。



ぽん


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