●更新日 11/09●

迷惑な死にかた


「人身事故が発生したため、運行を見合わせております」

電車に乗っていると、こんなアナウンスを耳にすることがある。
ここで言われる「人身事故」は、誤って線路に転落してしまうケースもあるが、投身自殺がそのほとんどを占める。

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「遺体処理は全て警察と消防が担当するので、我々は振りかえの券を発行する作業に専念します。1秒でも早く運行を再開させないといけませんから」
目撃してしまった事故現場を思い出したのだろうか。鉄道会社の社員は顔をしかめた。

「遺体を片付け終わったら水で流して消毒をして、すぐに運行再開に移ります。あまりにバラバラになった遺体だと、全て回収していられませんよ。よく『電車に轢かれて死んだ人の幽霊が、無くした手首を探して事故現場を彷徨っている……』なんて怪談を耳にすることがありますが、ありえる話かもしれません」

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高いビルが近くにそびえ立つ、とある線路の先端。
そこは、自殺の名所と言われている場所である。
ビルから飛び降り自殺しようとする人が「万一死にきれなかった時のために」と、この線路目掛けて飛び降りるのだそうだ。
「自殺が起きて運行できなかった線の分、他の会社に頼んだり代行バスを出したりします。その費用を遺族 に請求することがあるんですが、この自殺の名所は終点の駅が近いため乗降客数が少ない。だから請求する金額は少なくて済むんです。皮肉な話ですよね……」

この請求金額は鉄道会社によって異なる。
「借金苦で自殺した方の遺族に、『金払え』とはいえませんよ」とのことで、市・都営の会社では請求をしない場合もある。
しかし、JR等では億単位を請求することもあるという。
ある日突然家族を亡くし、同時に莫大な借金を抱えることになる遺族は、どんなに混乱することだろう。

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迷惑な死にかた。

生きているのなら、わかるはずだ。



野口&もみ 


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