●更新日 08/26●

キリングフィールド


映画「キリングフィールド」をご存知でしょうか?
1984年公開されたアメリカ映画でアカデミー賞3部門に輝いた名作です。(アカデミー賞だから名作かどうかは別として)
この映画は実話に基づいた物語ですが、その舞台となったカンボジアの“キリングフィールド”を視察してきました。

いまだ舗装もままならないボコボコ道をプノンペン中心部から車で進むこと1時間、チュン・エク村に大量虐殺センター、通称“キリングフィールド”はあります。

写真 地面に人骨や歯、衣服がまだ散乱している

このセンターを管理する文化芸術省によると、この村一帯は1975年から1979年のポル・ポト時代で、約2万人が虐殺された同国最大の処刑場であるとのこと。掘り返された8985体の遺骨を安置するため、1988年、高さ39メートルの慰霊塔が建築され、いつしかこの場所はポル・ポト派の残虐を物語る象徴となり、映画にちなんで“キリングフィールド”と呼ばれるようになりました。

写真 お金をせびるのは「お仕事」

センター内は外国からの観光客、お金をせびる子供や地雷で片足を失っている大人、カンボジア古来からいるこぶつきの牛などであふれ、とても大量虐殺が行われたとは思えないほど、今は観光地化されている所なのですが、ところどころにまだ掘り返されていない人骨や、歯、埋められた人たちの衣服などが散乱しており、その当時の虐殺の惨たらしさが伝わってきます。

写真 慰霊塔に納められている頭蓋骨

写真 同じく人々の衣服


当時はこのような虐殺方法がとられていたようです。
まず、強制労働者たちに100人ほど入ることのできる穴をスコップで掘らせ、その出来上がった穴の淵に穴のほうを向かせて労働者を座らせる。その後、後頭部を棒で強打する。
なぜわざわざそのような方法をとっていたかというと、強打された衝撃で労働者は穴に落ちます。ほとんどの人間はその時点で命を絶たれるのですが、万が一まだ生きている者がいても、穴の中にチェックする人間がいて、絶命するまで殴りつける。これによって虐殺する側が死体を埋める手間が省けるのでこの方法をとっていたそうです。

ほかにも、小さい子の足を手で持ち、振り回すようにして木にたたき付けたり、空に放り投げてクレー射撃のように空中で射殺したり・・・。
まるでゲームを楽しんでいるかのような行為に、人権を無視し、ポル・ポト派の非人道政権が垣間見えると思います。

写真 樹液の様に見えるのは血のあと

納骨堂に収められている頭蓋骨はすべてこの場所で虐殺された人たちのものと一般的には言われていますが、実はキリングフィールドで虐殺された人たちの頭蓋骨は2000体程だそうで、残りの骨はほかの地方で虐殺された人たちの骨とのことです。

ポル・ポト政権崩壊から25年。
カンボジア国王のノロドム・シアヌークはかつてクーデターにより国外追放されましたが、ポル・ポト派を支持し後に国王に復位した人物。
いまだその時代を清算できずに抗争を繰り返し続ける政治。それに翻弄される住民。

いつだって、どこだって人々は政治に翻弄されます。
われわれも決して無視はできない歴史が“キリングフィールド”にはありました。

写真 かわいい子供たち



探偵ファイル



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