●更新日 08/25●

下肢障害をもって


今まで視覚障害精神障害と実際に障害を御持ちの方への取材を通して記事にして参りました。
今回は、脚に障害を御持ちの方のご協力を頂き、取材する事が出来ました。本音などをお聞きしたいと思います。



どのような経緯で障害を?
先天性の疾患でした。それが判明したのは小学4年生の時です。

障害を生じてから、どのように世界が変わりましたか?
障害を生じ、手術を受けたのが割りと幼い頃だったので、世界が変わったという印象はありませんでした。
ただ、筋力の衰えが著しくなったこの数年で杖をついて歩くようになったのですが、杖を使用するようになってからは、地球が大きくなったような気がしました。

初めて出掛ける場所などに上手く到着する事は出来ますか?
一応出来ます。
杖ですので、階段の上り下りも時間が掛かりますが出来ますので。
ただ、電車に駆け込んだり点滅する青信号を走って渡ったり出来ないので、遅刻はしょっちゅうです。


今までで1番困った事は?
1番という程では無いですが、パン屋が利用出来ない。自動販売機も苦手。
あとは、傘がさせないです。
(杖をつくという事は手も使えないって事なんですよね。私の場合、左側に杖をついているので、立ったまま左手は使えません)
引っ越す時も、引越し先の最寄り駅がエレベーターやエスカレーターがちゃんとついているかまで調べなければならないので苦労しました。
日常、困った事なんて沢山ありすぎて、どれが特に困ったかなんて、解りません。

今までで1番悔しかった事は?
小4から入退院を繰り返していたので、クラスに馴染めず浮いてしまった事。
「シンショウ」って呼ばれて、仲間はずれもしょっちゅうでした。
最近の事でなら、「お前、わしらの金で生きとるんやろう?」と知らないおじさんに言われた事です。
年金とか、税金とかが障害者の為に使われるのが面白くないのか、言われました。私は障害者の年金とか頂いて無いのですが……。悔しいというより、怖くて悲しかったです。


写真


今までで1番危なかった事は?
ラッシュアワーに、駅の階段から落ちた事でしょうかね。
エスカレーターが昇りしかなくて、エレベーターも100メートル以上移動しないとなくて、仕方なくヨチヨチ階段を降りていたら、押されて3〜4段ほど落ちました。
幸いほとんど怪我はなかったんですけど、もっと高い所から落ちていたらと、ぞっとしました。
子供に転ばされる事もしょっちゅうですよ。
つい先日も書店で子供に杖を引っかけられて転びましたが、その子達は当然のように逃げました(笑)。
別に怒らないから、立ち上がるの助けてね(笑)。


写真


今までで1番楽しかった事は?
友人達と一緒に京都に旅行に行った事。
円山公園からゆっくり坂を上って清水寺まで行きました。
私、本当にゆっくりしか歩けませんし、休憩も沢山入るんですが、みんな嫌な顔せずに待っていてくれて。下りは男の子に背負ってもらいました。
みんなには迷惑をかけたかもしれないけれど、私は本当に楽しかったです。
他には『USJ』が。
車椅子を園内で借りたのですが、車椅子使用者になるべく負担が無い様に沢山工夫されていて、とても楽しかったです。

行政側に言いたい事を
スロープを付けたり、エレベーターを付けたりして「バリアフリーにしたつもり」になっているんじゃないかと思います。
障害者が使いにくいスロープや、係員を呼ばないと使えないエレベーターやエスカレーターをつけてもそれはバリアフリーじゃないんです。
(参考:バリアフリー検証
遠回りしないと使えない長い長いスロープや、100メートル先にしかないエスカレーターは本当に便利なのか?
街はどの位歩き難いか? 車椅子に乗ったり、杖をついてみたりして検証してみて欲しいです。

他の方(健常者)に知っておいて貰いたい事は?
大袈裟かもしれませんが……。
杖をつくとか車椅子に乗る事は他人事じゃなくて、誰だってそういう生活をする可能性があるって事。
事故に遭うとかじゃなくても、歳をとって、足腰が弱くなって杖や車椅子のお世話になっている方は沢山居るのです。
杖をついてゆっくりと階段を降りる私の姿は、未来の自分の姿かもしれないという事を理解して、スローな私が、スローである事を許して下さい。
それと、電車の席を譲る事は、決して恥ずかしい事ではありません。



このお話の後に、こう加えられました。

「特に酷いと思うのは「スロープ」です。
車椅子で実際に走行すると、スロープってちっとも楽じゃないことに気付くのですよ。駅等でも、5段程の階段の横にスロープが備え付けてあったりする所がちょくちょくあるんですが、公園の滑り台程もある角度のスロープは、上るのも降りるのも恐怖です。
酷い所では、階段と同じ角度のスロープがつけてあったりします。絶対に上れません!!
元気な人にはそういう所が解らないのでしょうか?」

少し悲しそうに語るJさんのこれは本音だったのでしょう。
皆さんと共に考えて行けるように、今後とも、”自分たちには何が出来るのか?”を問う取材をして行きたいと思います。



探偵ファイル・キム



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