●更新日 07/30●
日本の職人シリーズ 〜根付職人〜
日本には古くから多くの技・業が伝わって来ました。 「根付」とは? 印籠やたばこ入れなどの紐の先に付いた彫刻品で、帯を通して印籠が落ちないようにする為に使われた品です。 柘植、黒壇、鹿、水牛、象牙、べっこうを素材として使う。広晴親方は主に象牙を使用。 江戸時代の上物は、現在1000万〜2000万円の値が付けられている。 その精緻な作りは、日本よりも海外での方が大きく評価されている。 近代化の波に徐々に廃れて来たが、近年、再び着目されるようになって来ている。 ▲『ギャラリーフェイク』より クリックすると拡大します 根付師になろうと思われたのは何歳の時、どのような事からですか? 親兄弟も根付師である家系に生まれ、18の時から根付の修行を始めました。 根付師になろうと思っていた訳ではなく、父の手伝いをさせられていただけなのですが、それが気付いてみたら今に到っていた、という訳です。 ▲見よ! この精緻な象牙細工を! これが本物の根付。 修行をされている間、辛い事などはありましたか? 修行を始めたばかりの頃の事ですが、長時間同じ姿勢で座っている事が辛かったです。 根付師の修行ですが、まず最初の3年間はひたすら道具磨きをします。この時に同じ姿勢で磨き続ける訳なのです。 ただ辛いだけのように感じられるかもしれませんが、これには意味があります。 根付を作る作業も、ずっと同じ姿勢で行うものです。3年間の道具磨きの修行期間は、同じ姿勢でも耐えられる“身体”と“精神”を養う為にあるのです。 「この3年の修行に耐えられないような者には、到底根付職人になる資格など無い」と言う意味も含まれている奥深いものなのです。 ▲可愛らしく愛嬌のある品々。目の部分に使われているのが「黒べっ甲」。 この技術の事を『象嵌』と言います。 1番の喜びはなんですか? それはやはり、良い仕事(良い品が出来た)をした時ですね。 今までの自分の仕事の中で1番の会心の出来だと思えたのは、「お面の帯び止め」でしたね。面は今でも難しいですね。 ▲帯留め 現在だと、「象牙」の使用は難しそうですが 難しいです。輸入は通常禁止ですからね。 3年に1度だけですが、環境省の許可が下りて輸入されます。ですが、それも政府に登録した業者のみしか取り扱う事が出来ません(※2)。 このような背景があるものですから、象牙の偽物を売りつけようとする者も出てきます。 象牙の中は、1/3が空洞となっています。しかし、偽物はピッチリとプラスチックが詰まっていたりするので、持てば本物かどうか解ります。象牙は重さで値段が変わるので、少しでも高く売ろうと重くするのです。 この偽物も年々精緻になって来ています。中には玄人でも誤る事もあるので、とても注意が必要です。 ▲これも象牙による作品(非売品) ▲これも象牙による作品!(非売品) クリックすると拡大します 昔に比べて、根付が変わった事はありますか? 根付とはそもそも印籠や煙草入れに使う物でした。しかし、近代化が進む事によって根付を使う人は少なくなって行ったのです。 ところが、現代に入り、携帯の流行と共に、携帯に付けるストラップが登場しました。 日本人は元々、小物を通じた楽しさや、洒脱性を持っていました。その表れが江戸時代の根付でした。 その根付が現代、ストラップの飾りとなって大いに甦りました。小物を愛する日本人の感性とピッタリと合ったのです! 今、根付は、携帯ストラップとして大いに着目されています。 ▲実際の作成現場を取材させて頂きました。 “早い者ほど腕が良い”と言われる象牙職人の世界の中で、広晴親方のスピードはトップクラスだそうです。 昔の印籠から、今の携帯へ。 根付の文化もその時代に合わせて変わって来ております。 現代に活きる職人の技。 素晴らしき技術を次の世代へと受け継いで行きたいものです。 ※1:『象嵌(ぞうがん)』。工芸技術の1種。素材を掘り、別の素材を埋め込んで加工して行くもの。今回の場合は、象牙に黒べっ甲などを埋め込む技術に当たる。 ※2:適正に輸入された象牙には、政府公認の認定シール(標章)が添付されています。 協力:『日本職人名工会』 探偵ファイル・キム |
|
|
|
|