●更新日 07/09●

初の障害者差別禁止条例制定か? 〜先駆けとなる千葉県〜


これまで障害について、『視覚障害』、『精神障害』と記事にしてきました。
そのような中で、このようなニュースが飛び込んで参りました。

障害者差別:禁止条例制定へ、来年度にも 千葉県が全国初

千葉県は、障害者へのあらゆる差別を禁止する条例を来年度にも制定することを決めた。
障害者が地域で暮らす「ノーマライゼーション」(※1)の実現に向け、障害者の権利を保障するもので、堂本暁子知事が8日、「障害者地域生活づくり宣言」として表明する。今後、障害者を含む県民参加の作業部会をつくり、1年程度の検討期間を置いた上で制定を目指す。実現すれば全国初の条例となる。国にも「障害者差別禁止法」(仮称)の制定を働きかけていく。
参考:毎日新聞

障害者を差別する事を禁止する条例。
そのままの意味ですが、これが制定されるには、大変な苦労や問題が出て来るでしょう。
早速、その真意を問うべく、『千葉県庁』に取材をしてみました。
お応え頂いたのは、千葉県庁障害福祉課のYさんです。



早速ですが、この条例で挙げられる”差別”とは具体的にはどのような事柄を指すのでしょうか?
その前にですね、お伝えしておきたいのですが、ニュースなどでは、「千葉県が来年制定」と報じられておりますが、これは少々意味が違うのですよ。
”この条例の制定に向けて千葉県が先駆けて動き出す”。これが正しいのです。ですから、来年制定と言う訳ではありません。全てはこれからなのです。
元々この政策は国連から日本に勧告されたものなのです(※2)。その中で、千葉県が先陣を切った訳なのです。
その具体的な”差別”の内容も、これから決めて行く事になります。
ですが、何もしていなかった訳ではありません。この計画は我々だけで決めるモノでは無く、障害者の方と一緒に決めて行くものなのです。”官民一体”と言えると思います。障害者の皆様のお話を聴き、その内容を研究して決めていきます。これが千葉県がアピールしたい事の1つですね。制定はその先です。

これから将来、欧米諸国に続いて日本もノーマライゼーション実行に向けて動いていく事になるでしょう。しかし、当然ながら、その政策に反対する方もいらっしゃると思いますが、その事については?
勿論、いらっしゃるでしょう。しかし、これは県だけで(決めて行くのでは)なく市町村、強いては国に呼びかけて進めて行きたいものなのです。その為、地域に暮らす人々の理解と協力が必要不可欠です。
その為にも努力して行きたいと思います。

ニュースでは、知的障害者の事柄が特にピックアップされておりましたが、この障害者とは、「身体障害者」も含まれるのですよね?
勿論です。
3障害と言う言葉があります。「身体」「知的」「精神」の3種類の障害の事を指します。この3障害は勿論、条例に入ります。ですが、この条例は他にも、「学習障害」や「高次脳機能障害」なども含まれ、支援が必要な方を広く対象としているのです。

将来的には身体障害者の為のバリアフリーを取り入れた建築物なども考えていく事になるのでしょうか?
この条例は福祉だけを目的としたものではありません。障害を持つ方の教育や、生活をも対象としたものなのです。ですから、この答えは建築物だけではなく、もっと幅広く考えていくと言えます。
また、身体的なものだけでなく、情報バリアフリー(※3)も計画には含まれております。

ノーマライゼーションが実現される事を望む方がいる反面、施設に居る事を望む家庭も在るはずです。その点に対しては?
インテグレーション(※4)と言う言葉がありますが、これは主に教育についての事を言っているものです。
私達の考えているのはその上に当たります。先程も申しましたが、教育・福祉・生活など、全てを対象としたものなのです。
その事を踏まえて……、

『施設に居る事を望むのは誰なのでしょうか?』
『施設に入りは当事者の家族の方の意思ばかりではないでしょうか?』
『当事者本人の気持ちは含まれているのでしょうか?』

勿論、本人から施設を望む事もあると思います。しかし、大半は家族の方がお決めになった事です。
反対もありましょう。ですが、本人の意思を尊重して、そのお家族を説得する事とも我々の仕事だと考えております。

”地域での障害者の暮らしを支える”。その為に頑張って行きたいと思います。

最後に、これから先の予定などについてはHPなどにアップしていきたいと思いますので、皆様のご意見や、ご協力を頂きたく思います。


 ◆千葉県HP




※1:「ノーマライゼーション」……障害のある人も、一般社会で等しく生活出来るようにする事。障害者も普通に生活を送る機会を与えられるべきであるという、新しい福祉の考え方。

※2:「国連からの勧告」……欧米を中心とした先進国では、ノーマライゼーションの理念から、施設の解体が進んでいる。要するに、”施設を出て、家族や地域と共に暮らしましょう”と言う事。その暮らしを保障していく考え方が各国で進んでいる。日本はその点についてはかなり遅れており、国連から勧められた事から、まず千葉県が動いたと言う事になる。

※3:「情報バリアフリー」……身体の障害(バリア)をあるように、情報にも障害者にとって、困難となる障害(バリア)が存在する。ネットを例に挙げるなら、音声ソフトでHPを開いている方にはフレーム処理が多い読み取りが困難になる事を指す。前々回の『視覚障害をもって』の最後に触れている「情報アクセシビリティ」とは、情報バリアとなっている事を指している。

※4:「インテグレーション」……「統合化」とも言う。隔離を排し、みな一緒にと考える事。特別教育や特別扱いが、当事者の選択の権利を無視し、与える側の勝手な都合だけが考慮された差別である事に対する異議。



探偵ファイル・キム



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