●更新日 04/24●

現代の結核報道


先日、横浜の学習塾で結核の集団感染があった事をご存知だろうか?
この集団感染、各報道機関での扱いはあまり大きくないため、知らなかった、または気に留めなかった方も多いのではないだろうか。
扱いの例として、毎日新聞の記事を上げておく。

鳥インフルエンザが流行した際にはあれだけ大騒ぎしたのに、結核についてはあまり取り上げない現代のマスコミ。
何か理由があるのだろうか?横浜市衛生局に、直接取材を行った。


・結核基礎知識
今回の報道体制について理解して頂くためには、まず結核の「感染」「発病」は全く別物だという事を念頭に置いてもらう必要があります。
「感染」は文字通り、体内に結核菌が入り込む事を指します。誤解されがちですが、この状態で結核が伝染する事はありません。
その後、咳などの症状が出て初めて「発病」と認定されます。こうなると、咳やくしゃみで菌が拡散し、他人に伝染する可能性があります。
「感染」から「発病」に至る、いわゆる潜伏期間がとても長いのも結核の特徴です。感染後すぐ発病する人もいれば、数年経ってようやく発病する人もいる。人によっては、一生発病しない場合もあります。

・集団感染への対応
発病して初めて伝染するようになるという事は、「誰から誰に伝染したか」がわかりやすいという事です。
我々は発病した患者さんと接触する機会があった方を全員リストアップして、診察・検査を受けて頂きます。今回のケースももちろんそうです。
その際に感染、あるいは発病が発覚した場合は、投薬を中心とした治療に移ります。

・配慮ある報道を
関係者全員を診察・検査するには、ご本人の協力が不可欠です。
ところが、派手な報道をしてしまうと「あいつは結核だから近寄るな」等、意味のない差別を引き起こす可能性があります。
その結果、関係者の皆様が気分を害し、我々との信頼関係が崩れ、万全の診察・検査が出来ないとなれば大問題です。今は症状がなくても数年後に発病、そして大感染…という事にもなりかねませんから。
以上の理由から、今回の集団感染についてはマスコミの皆さんに「大きく扱わないで下さい」とお願いしました。
そういう意味では見事な報道でしたし、今後も同じような報道になるでしょう。


以上が現在の結核対策と、それに基づく報道体制の在り方だ。
歴史ある病気に、歴史ある対策あり…結核も、昔ほど恐れる必要は無いのかもしれない。
写真 (取材後頂いたパンフレットの表紙)

参考リンク:「結核ってなーに!?」(財団法人結核予防会)



探偵ファイル・静山



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