鶏インフルエンザのこぼれ話
〜 こうして病気は事件になった 〜


山口県から始まった鳥インフルエンザはいよいよ拡大の様相を呈してきた。


京都府丹波町の浅田農産船井農場で高病原性鳥インフルエンザ感染が明らかになった。2月20日ごろから農場の鶏がバタバタ死に始め、密告により発覚する26日まで生きた鶏を平気で出荷し続けた。生きた鶏は兵庫県の食鳥加工会社と愛知県豊橋市の処理場に出荷され、兵庫の業者からは京都、大阪、兵庫、島根と出荷され一部消費者に販売された。豊橋市の処理場からは新潟県の食品加工会社にペット用として出荷された。卵も富山、広島、徳島など16府県に出荷され肉、羽毛とあわせ23府県にまたがる事となった。浅田農産は5ヶ所の農場で175万羽を飼育、西日本有数の規模を誇る養鶏業者で、日本養鶏協会副会長も努め業界を指導する立場にあった。


  鳥インフルエンザの症状
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肉冠の出血・壊死
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顔面の浮腫性腫脹


今回の問題は2点あると思われる。

1.情報隠しにより、感染した鶏が山口県で発生以来始めて移動したこと。
鶏が移動したことによって移動した先でも感染が確認され、今後どこの地域で発生してもおかしくない状況となった。

2.兵庫県のミスで肉は流通していないと発表し続けたこと
京都府から食肉流通の可能性ありというFAXが届いたのに兵庫県が20時間も放置していたため、ルートの解明が遅くなり肉が消費者の手に渡ることとなった。

浅田農産の社長は会見で「鶏が弱ったら弱った鶏から出荷するものだ」と言っていた。こういう会社の体制では起こるべくして起こったと言わざるを得ない。

今回の情報隠しによる被害拡大で兵庫県は、浅田農産から事情聴取した上で刑事告発する方針を表明した。


ニュースではあまり触れられてないが、流通した船井農場の鶏は採卵用の鶏で肉は廃鶏として処理され主に加工用にまわされる。これに対し船井農場の北東5キロにある高田養鶏場で感染した鶏は食肉用のブロイラーである。

汚染された鶏が豊橋市まで来たことを受け、静岡県最大の食鳥処理業者の社長に防疫体制について聞いてみた。

その食鳥処理場には保健所の防疫官が常駐し常に検査体制をとっているので万全だとの事。人や自動車の出入りも制限し、出入り口で消毒槽を設け必ず厳重に消毒作業をしているとの報告で、菌を持ち込まないよう細心の注意を払っていると言っていた。また養鶏業者と綿密に連絡を取り、渡り鳥対策のネットや簡易検査の実施など積極的に取り組んでいることを強調していた。

ただこの社長も、県内で発生しないのかという私の問いに対してはわからないと答えた。確かにどこで起こっても不思議ではない状況を今回の事件は作ってしまった。

「もし県内で発生したらうちはもう終わりだな」と社長はつぶやいた。


農林水産省のプレスリリースにはっきりこう書いてある。

鶏卵、鶏肉を食べることにより、鳥インフルエンザウイルスが人に感染することは
世界的にも報告されていません。


 日本養鶏協会
 共同ニュース
 動物衛生協会



( 東海支部特派員:こうへい 編集:キム )


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