働く人の憂鬱シリーズ
〜 エロ漫画家の憂鬱 〜


様々な業界で働く人がいます。ですが、その業界に身を置く者にしか解らない裏話も沢山あります。興味があっても、「実情はどうなんだろう?」という不安を持つ方々の質問にお応えするこのシリーズ。
今回は、思春期の少年少女から、大きなお友達まで幅広くお世話になっているアダルトな漫画(通称『エロ漫画』)を描かれている漫画家さんにお話を訊いてみました。どんなお話が訊けるのか?ギリギリまで取材したいと思います!
漫画家になりたいと考えている人は刮目して見よ!





―――この仕事をなさろうとしたきっかけは?
Sさん:コミックマーケットで某編集長に声をかけてもらったのがきっかけです。
Tさん:昔から読むのは好きでしたが、”自分でも出来るかもしれない”と血迷ったのが原点です。2本分描いた所で何社かの編集さんに見て貰った所、ある一社で採用されてしまったのがデビューのきっかけです。
デビュー当時、どの雑誌でもエロマンガを扱い始めた頃だったこともあり、漫画家が足らなかったのでしょう。ラッキーでした。

―――このご職業の魅力は?
Sさん:好きな事をして生活できる事、いろいろな方と知り合える事などです。
好きな事で仕事をする事で苦しむ事もあったりもしますがそんな時ファンの方や同業者の方と話したりするとかなり救われます。
Tさん:やはり読んで頂く事でしょうか。コミケなどで実際に読者さんとお会いする機会などで感想などもらうと素直に嬉しいですし、やる気も出ます。編集さんからファンレターやアンケート葉書のコピーを頂くのですが、かなり励みになります。
あと、単行本が出たときなどは本屋さんに自分の単行本が平積みされてるのを見たり、実際に読み返して原稿を描いたときの事などを思い出したりして一人でニヤケたりします。

―――実際仕事をしてみて、内情はどんなものでしたか?(賃金・給料の事など)
Sさん:原稿料は出版社の体力によってまちまちです。自分の場合デビュー時は1枚1万円でしたけど今はそれ以下です。
コミックスは不況のせいもあって販売成績のよい売れっ子さん以外はなかなか出してもらえなくなってきつつあるように思います。1冊目が出ても2冊目からは前回の売上が反映されるので売れ行きの良くない人などは発行数を減らされたりします。7割返本になった場合などは次のコミックスが出るまで長いと何年もかかかったりするので、PNを変えて再デビューなんて場合もあるようです。
Tさん:新人さんは原稿料安いです。自分は1ページ5000円からスタートしましたが、3000円の所とかあるみたいですし。最初の頃はバイトと掛け持ちでした。
今でもそうですが、月に1本だけでは生活できないので、月に2〜3本描いています。同じ雑誌の仕事であれば原稿料は直ぐにUPなんて話もないので、交渉するときは漫画の実力以外に話術も必要です。しかし、ただ上がればイイというモノでもなく、値段相応の原稿を描かないといけないので、それが逆にプレッシャーになったりだとか、その辺の兼ね合いも難しいですね。
単行本は本の単価*刷った部数の数%が印税収入になります。原作付きの漫画はその半分。


 ▲イメージ画像です

―――「(エロ)漫画家」を目指すなら知っておいた方が良い事は?
Sさん:はっきり言って生活するのは大変です…一部の一般誌と違いページ数も多くない上、ページ単価も安いので。原稿料も取っ払いでは無く平均2〜3ヵ月後(もっと遅いところもあります)に振り込まれるので、デビュー出来たとしても簡単に会社やバイトをやめないで、しばらく様子を見て行けそうだと判断できるまで我慢した方がいいと思います。
あと、漫画家全体に言えることですが、世間的に信用されにくいです。カードを作ったり、ローンを組むのも一苦労です。食うに困っても、借金もし難いので少しでも貯蓄をしておいた方がいいと思います。
Tさん:まず、専門学校は・・・。アシスタントで1回経験するのと専門学校の全課程と比べると、アシスタントの一度の経験の方が得るものは大きいです。ただ、アシスタントの斡旋所になってる部分もあるのでそういう意味では使えるとは思います。
エロ漫画だからとかいいかげんと思われがちですが、仕事なので職業意識は必須です。常に色々なものを吸収し、成長する位の意気込みが最低限なければ仕事としてやってけませんし成功しません。筆記用具(簡単なメモパッドとペンで十分)は常に持っていること。思ったこと、感じたことは漫画の事以外でも何でも全て書き込んで行きましょう。後々読み返すと結構勉強になります。

―――コミケの時期、商業誌を落として、同人を書く作家さんが多いと聞きましたが、やはり事実なのでしょうか?
Sさん:そういう方もいます。上で書いたように漫画だけで生活していくのが大変だというのが一つの理由と思います。
落とす、(休載)と言っても、その作家さんが事前に「休みます」と了解を取っているか、間に合わずに落としてしまったかで違うのですけど、経験上、雑誌の次回掲載作家リストは結構適当だったりします(笑)。休みますと了解を取っているのに掲載リストに名前が載ってることもあったりします。
Tさん:落とす落とさない以前に、商業誌の場合、仕事として信用問題にも直結するので、同人をやるためにスケジュールに入りきらない場合、仕事を受ける前に断るケースの方が多いと思います。無茶をするとそういう事が実際にあるという方もいますが。
余談になりますが、編集部への営業、新人の持ち込みには上記の理由からこの時期を選ぶと良い返事をもらえることが多いと思います。実際自分もそうですし。

                                                                                               
―――商業誌より、同人の方が儲かる?
Sさん:そういう方もいます。発行する度に赤字ギリギリな自分も居ますが…売れる方は何百万と1回のイベントで稼ぎ出し、商業で1本描くのと比べればはるかに実入りが違うので、生活の為にウエイトが傾いてしまうのは致し方ないかもしれません。
Tさん:売り方、やり方にもよるとは思いますが、自分の場合は商業誌の方が儲かります。同人の場合、一度出したらなかなか再録等はありませんが、商業誌は単行本にも繋がる部分があるので、自分はコミケ参加程度の同人活動です。
もちろん同人だけで仕事する同人作家さんもいますが、だんだん少なくなってきている話は聞いたことあります。


▲これも表現方法の一つ

―――結構行われているけど、一般の人には内緒(秘密)の事ってありますか?
Sさん:「本当にあった○○」みたいな実録物とか言われる物でも漫画家が考えてたりする事も結構あります(笑)
あと、コミックスのタイトルなんかも編集さんに決められてしまう事もあったりします。 
Tさん:最近はパソコンで仕上げをする事もありますが、時間のない時など、パソコン上で人物の絵をコピー、加工して白い原稿を埋めたり出来るようになりました。入稿もデータ転送が出来るので昔と比べて大分楽になりました。
あとは描いた原稿と本人が一致しない所でしょうか?近所の方に自分の漫画を見せたところびっくりされたことがあります。

―――「この仕事をしていて良かった」と感じた時のお話を
Sさん:漫画の感想やファンレターや応援、励ましの言葉をもらえる時が一番嬉しいです。
今お世話になっている編集さんがまだ学生だった頃、イベントで売っていた自分の本を買ってくれていたらしく編集者になってから仕事がもらえた時は嬉しかったです。細く長くやっているとこんな事もあるんだなと(笑)

―――笑い話とか、苦労話とか有ったら教えて下さい
Sさん:あまりに貧乏だった頃、トーン作業の時、トーンが足りなくなったのですがお金が無いので買い足す事も出来ず過去に描いた原稿からトーンをはがして新しい原稿に貼り付けたことがあります(泣)
あと、お風呂に入った時トーンがプカプカ浮いてきたりとか…。眠気覚ましにコーヒーを淹れたら中に浮かんでいたこともあります…。
コンビニのコピー機にエロ原稿を置き忘れた事も何度かあります(笑)。取りに言った時に店員が激しくニヤニヤしてたのが今だトラウマです…。
Tさん:ちょっと前に、胃薬のCMで漫画家さんが登場して”「キミの漫画はいらないよ」って言われました”というのがありましたが、新人の頃実際に某誌編集長に言われたことがあります。ま、それが仕事の原動力になってる部分はありますが。
最近は新雑誌が出ても、売り上げ的に3号保たずに休刊する事が多く、仕事の依頼を受けても原稿作業中に休刊・・・なんて事もあります。

―――他のエロ漫画家さんの裏ネタなどがありましたら、是非。
Tさん:単行本の印税の話はしましたが、ある漫画家さんとかは単行本一冊出して、印税が○千万円なんて事もあるので、人生の一発逆転が出来る数少ない職種でしょう。

―――言いたい事があったら是非
Sさん:不景気だったり、法案がどうとかで何かと肩身の狭い現状ですが、エロも立派な表現の一つです。描く側もプライドを持って仕事をしていますので、読者さんも自信を持ってどんどん買って読んでもらえると嬉しいです。出版社も漫画家も読者さんあってこそです。
少し時間のあった時は方は好きな作家さんに1行2行で構わないので感想とか送ってあげて下さい。それだけでその作家さんは飛び上がるほど喜びますので。
Tさん:どの職種でもそうだと思いますが、漫画家になるよりも、漫画家として続けて行く事が重要だと思います。
私よりも上手な絵、話を描ける漫画家さんはいくらでもいると思いますし、その中にあって、自分はどうすれば良いか、どの様に他との差別化を
図っていくか、問題は沢山ありますがその分やりがいのある仕事だと思っています。





ギリギリのトーク、ありがとうございました。なるほど。”エロ系は辛い”とのお話はよく耳にしますが、本当に大変そうです。漫画家、中でもライバルが多いアダルト漫画界。お2人が漫画家として大きく成功する事を祈っております。 ちなみに、SさんこちらTさんこちらの方でした。 ご協力本当に、ありがとうございました。





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