客引きについていく
〜 イチローの足跡残る竹下通りにて 〜


――雨の原宿、竹下通り。
修学旅行の自由行動には外せないと言われるその通りを、仕事がてらに寄ってみた。平日の昼下がりとは言え、この日も人の行き来が絶えない。その多くは買い物やランチを楽しむ若者たち。中には制服姿の中高生も見られる。
そんな竹下通りをちょうど中間辺りまで歩いたところで、ふと頭上を見上げてみる。



▲「しつこい客引きに声をかけられたらご用心」と書かれた横断幕。こんな風に破れていては本気さが伝わってこないのだが……。

やはり竹下通りほど人の多い場所であれば、客引きがいるのは当然か。そう言えばさっきからそれらしき人がたくさんいる。



▲客引きには日本人だけではなく、屈強な黒人の姿も。何を売ろうというのか。付いていくにしろ無視するにしろ、ある程度の勇気が必要。

客引きにかからぬよう気を引き締め直し、再び歩き始めたその時……。
「ヘイ! アニキ! アニキ! アニキ!」
背後から誰かの叫ぶ声が追ってくる。振り向かないでおくのが賢明な選択であろうが、このまま帰るのもなんだなということで振り返ってみた。すると目の前に飛び込んできたのは、衣服のチラシを持ったアーノルド坊や似の黒人男性だった。

「アニキィー。キョウハ何サガシテル?」
「キョウハ安イヨー、ミテイカナーイ?」

そして何となく付いていくと……、



▲案内されたのは通りから外れた建物の服屋。周辺には黒人が多く、日本人の姿は見られない。


アーノルド坊やに連れられ店に入ると、そこはレゲエを愛する人たちの衣服屋であった。



▲当記者を「アニキ」と慕うアーノルド坊や似の黒人男性。


アーノルド坊やは「トモダチダカラ安クシテアゲテヨ!」と言い残し、通りに戻って行った。代わりに店内を案内してくれたのは、身長が190センチあろうかという迫力満点黒人男性であった。がしかし……、

「どどどどどどどどどどーよ、アニキ」
「きょきょきょきょきょきょうは安いよ、ぜぜぜぜぜぜんぶ30パーオフ」

こんなにドモった日本語を聞くのはTBSの『ここがヘンだよ日本人』で活躍していたゾマホン以来か。さっきまで抱いていた緊迫感は一気に消沈してしまった。
話を聞くとどうやら彼らはジャマイカ人。日本人のような接客はできないが、『みんな僕の友達』という感じで喋りかけてくるのが特徴だった。まあしかしこんなところ来る日本人なんているのかオイ!? と心の中では思ったわけだが……、






イチローも来ていた!!


それじゃあ、ということで二度と来ない記念にTシャツを一枚購入。



▲約束通り3900円のところを3000円にマケてもらったTシャツ。しかし後で計算してみると30%に満たない23%オフであった……。


今回訪れた竹下通り、アーノルド坊や以外にも客引きはとても多かった。日本人より黒人が目立つわけだが、彼らは『客引きは違法行為です』という商店街の脅し(?)を知っているのか、知らないのか。強引なことは全くないのだが、歩いていて障害となるのは確かであった。
しかし中には今回のような稚拙で陽気な(?)客引きばかりではなく、巧妙で悪質な客引きもあろう。地方から修学旅行で訪れる生徒、引率の先生方には特に注意してもらいたい。





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