働く人の憂鬱シリーズ
〜 女性秘書の憂鬱 〜


様々な業界で働く人がいます。ですが、その業界に身を置く者にしか解らない裏話も沢山あります。興味があっても、「実情はどうなんだろう?」という不安を持つ方々の質問にお応えするこのシリーズ。
今回は、野望を持つ男性の夢(?)。お仕事を支えてくれる秘書さんにお話を訊いてまいりました。これはこれで、とても興味深い内容です。
Kさんが会社役員の秘書、Lさんが議員の秘書をされていたそうです。
ではインタビュー開始です!



―――この仕事をなさろうとしたきっかけは?
Kさん:成り行きです。本来は営業と貿易を兼ね備えた職種を希望していたのですが、面接の時に落ち着いた態度を気に入られたようで、秘書業務をメインに仕事をしてもらいたいと言われ、OKしました。
秘書の採用は、現在は派遣で行うか、またはヘッドハンティング的なものが最も多いと思います。企業秘密を守れる人・・という意味で信用第一です。出所は確保しておかないと会社も怖いですし。
Lさん:地元選出の代議士が分家筋にあたるものでして、ちょうど選挙の声が聞こえてきたころに会社がひまになってきていて自宅待機命令を機に会社を辞めていたために、親からぶらぶらしているなら選挙の手伝いでもしろとのことで選挙のお手伝いからがきっかけでした。

―――このご職業の魅力は?
Kさん:ずばり会社のトップシークレットから、個人情報に至るまで熟知できているという自己満足でしょうか。
Lさん:入ったときの年齢が21だったんですが、20歳そこそこの人間が絶対に対等にお付き合いできない方々とも知り合いになれ、肩書きのおかげで交際範囲が非常に広くなったこと、話をしていく中で、地元の企業や議員、首長などの人間関係が短期間で飲み込むことができ、一般的な評価のほかになかなか知ることのできない裏評価のようなものが勉強できます。



―――実際仕事をしてみて、内情はどんなものでしたか?(賃金・給料の事など)
Kさん:秘書という職種に対する各会社の判断によると思いますが、あくまでも(私の場合)名刺は「管理本部 業務課」だったので、事務職扱いでとほほ・・・でした。
二足のわらじならぬ、タコ足の職種です。営業・営業事務(重要顧客・社員には内緒にしたいお客は上の方だけで取引する事もある)・海外とのコレポン・貿易実務・売掛買掛、為替予約の経理など、オールラウンドにこなせて一般事務よりちょっと多い手取りくらいだったですね。ボーナスは弾んでもらえましたが。
また、残業・休日は基本的に無いですね。顧客が来た際には、パーティ会場の予約・段取りから通訳(海外顧客の場合)・司会までするので、ある程度の遊び人さんには向いている部分もあります。
Lさん:労働基準法の治外法権のような感じです。どこでも私設秘書の給与は高くないです。議員本人が会社なりのオーナーであるとか、会社から派遣されていて、そちらから給与をもらうなどの形になっていない限り、言ってみれば本人のポケットマネーで雇っているために、非常に薄給です。休みは無いです。残業手当も無いです。
週末は代議士が地元入りするためにつきっきりですし、ウィークデーは後援会周りやらで、一般業務が目白押しです。飯時であれ、過労で休んでいるときであれ、電話の電源は切れないです。
先生が悪いことをしない人だと事務所は貧乏です。税理士がアホだと資産公開のときに不当に金持ちに見えてしまったりします。事務所経費は月に一千万近くはかかります。祝電、弔電、会費(赤のし)香典だけでも多い時期だとン百万になります。

―――秘書を目指すなら知っておいた方が良い事は?
Kさん:まず、かっこいいものではないという事。ようは役員の御用聞きですから。自分の判断で行っていい事、悪い事のジャッジをすぐにできないといけない。でしゃばりもいけないし、何でもかんでも上の者に・・・では相手からの信用を得られませんから。
そして、酒には強い方が有利です。接待の時に泥酔している取引先からいかに情報を聞き出すか、そして記憶するか。ちょっとお手洗いに・・・・と言ってトイレで自分の太ももに得られた情報をメモしていたりもしました。
Lさん:次のステップアップのための目標は定めておいて、乗り換えの時期と乗り換え先を誤らないことです。この人のためならって思えるところに就くことができたのであればのであれば乗り換える必要は無いですね。
お金がかかるので貯金はかなりあったほうがいいです。なにせ、付き合う相手はすべて自分の経済感覚より数段上の人たちですから、毎回事務所経費で落とせないですし、割り勘だと領収書も無いですし。
仕事には自分の車を使うことになるので下駄車が一台無いと、車に思い入れのある人は泣きを見ます。衆議院で年間に3〜4万キロ、参議院だと5万キロ以上走ると思います。

―――結構行われているけど、一般の人には内緒(秘密)の事ってありますか?
Kさん:リベート・・・。これについてはあまり多くは語れないですね。
他には、社員をクビにする際に、参考意見を求められる事があります。その時には個人的感情も交えて報告しちゃってました。あいつは嫌な奴だから・・・と思えばネガティブな話だけを報告したりして。
Lさん:票読み・・・とか。
公設秘書に親族をつけることや、そこから事務所経費を捻出するとかですかね。苗字が違う娘や姉、妹、を週一回くらいの出勤で済まさせて給料を…と。今では直接本人の口座に給与が振り込まれるのでちょろまかせませんが、秘書が個人的に政党支部なり後援会に寄付をすることは禁止されていません(金額うんぬんの規制はありますが)。振り込まれる口座のカードなり通帳なりを事務所管理すればいくらでも法の網はくぐることができます。
速度違反や香典や花輪の届けも普通に行われてますね。
後援会での集まりで酒類の振る舞いもあります。


▲ある意味、秘書。(C)SNK

―――「この仕事をしていて良かった」と感じた時のお話を。
Kさん:社長代理で取引をしていた時に、得意先から満足の得られる営業成果を出せた時は単純に嬉しかったですね。
そして自分自身が凛としていられる事でしょうか。
Lさん:お願いされていた事を叶える事が出来て感謝された時。
本人や支援者の笑顔を見る事が出来た時。
他の選挙で支援している方が当選された時。
そして交際範囲が広がった・・・と思える今。

―――笑い話とか、苦労話とか有ったら教えて下さい。
Kさん:会長のドラ息子に手を出されそうになった事があります。社長としては会長に進言していいものかどうか悩まれたようですが、私の方でガツンと追い払ったらその後は特に何事もありませんでした。自分が会社のメリットであると認識していなかったらクビになっていたかもしれません。
笑い話というか、当たり前なのですが、役員もしょせんはおじいちゃん。猫が好きだったり、その猫が死んだらおいおい泣いていたり。私が不在の時に大事なアポをすっかり忘れて「あ、いっけねー」と言ってみたり。アフターフォローは私がするのですが、可愛くて何とも憎めないですね。
Lさん:応援に訪れてくださった先生に見送りを固辞されたのですが、そうもいかず、お土産やら荷物やらをもって駅のホームまで見送って振り返ったときに20才くらいの女性が迎えにきて、別の階段で降りていくところを目撃してしまったことは誰にも話せませんでした。
秘書になって1週間目の時に、挨拶が無いと聞いていた会合で突然、祝辞を述べさせられた事。参議よりも衆議が先に挨拶することになっている上に、一区選出だったものでトップバッター。お手本を聞くこともできずに真っ赤になって挨拶し、ベテラン勢の挨拶を聞きながら深くへこんでいきました。
22歳にもかかわらず2年前に自分が出席した成人式に代理出席して祝辞をさせられそうになった事。
お宅の先生はヅラですかって聞かれる機会が多くてまいりました。もちろんそうです。
他の区でも多いですね、ヅラ。

毎年の予算書の配布先別に資料の作成が数日徹夜で毎年つらかったですね。みんな帰っちゃうし。

―――先生(社長)が手を出して、秘書と関係を持ってしまうという話がありますが、そのような事は実際にあるのですか?
Kさん:他社ではわかりませんが、一言。そんな事をしていたら仕事になりません。ただ、秘書課など、グループで秘書を持っている所は、自分の好みの容姿で採用しているでしょうね。
Lさん:関係を持ちたかったり、持ってしまった人を秘書に据えた方なら何人もいますよ。気が短くて手が早い人は多いですしね。

―――その他、言いたい事があったら是非
Kさん:会社に入るときに、他の社員と仲良くなるな、と言われました。営業社員でステキだな・・と思う人がいたのですが、社内恋愛は秘書にとってインセスト・タブーに等しい。女の子とも友達になれず、孤独でしたね。
秘書は群れていないといられないタイプには向かない仕事です。孤軍奮闘でも良くて、若い女性一人でも、スナックで飲める方、体力のある方、ぜひ秘書になってください!
Lさん:公設じゃない限り家族持ちのできる仕事じゃありません。せめて必要経費だけはすべて持ってください。お願いします。



以上です。ご協力ありがとうございました。
役員の秘書も、議員の秘書も色々と大変そうです。万能で、クールなイメージの秘書も裏では四苦八苦されている模様。
勿論、この方たち以外にも多くの秘書さんはいらっしゃいますので、あくまで一例と思っておくのがよろしいようで。

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