宮城県立こども病院
〜 子供の遊ぶ権利、学ぶ権利、自分の事を知る権利、家族と一緒に過ごす権利 〜


現在、日本の医療状況は医師や看護士の技術料は極端に安く、検査・投薬が高額の診療報酬体系は、無駄な検査・投薬の温床になっており、質の良い医療を提供しようとする病院ほど経営が苦しくなるという矛盾した状況におかれています。

子供や乳幼児は、症状を的確に説明できないことが多く、まして話すことすらできない乳児の診察は時間がかかり、高度な熟練が要求されます。そんな中、普通の大人に比べ、数倍の時間と手間がかかってしまう小児医療を目指す医学生が少なくなって来ているのが現状で、このような診療報酬制度のため小児医療は、採算が合わない部門とされて切り捨てられつつある傾向にあります。常勤の医師は置かずに非常勤の医師が大学病院から決められた曜日に出向いたり、小児科そのものを閉鎖する病院も増えてきました。                         

一方、合計特殊出生率=一人の女性が一生のうちに子供を生む数の全国平均(平成14年度)は、1.32人 と少子化は進む一方、低体重児(2500グラム以下)の出生割合が8.3パーセント(平成13年)と増加し、小児喘息にアレルギー等に罹患する割合も年々急増し、より高度で専門的な医療が求められています。





そんな折 、東北初の小児医療専門病院「宮城県立こども病院」が来月開院するに伴い一般公開が行われるとの話を聞き早速、私たちは同病院を取材してまいりました。
先に述べたように診療報酬制度の元では、高度で専門的な医療を行おうとすると、経営的に厳しくなるという現実がある中、県が設置し、運営の全てを財団法人厚生会に委託する「県立民営方式」を採用し運営費を減らし実現された「宮城県立こども病院」のコンセプトは

子供の  ・遊ぶ権利
     ・学ぶ権利
     ・自分のことを知る権利
     ・家族と一緒に過ごす権利


 上記4つの理念に基づいて建設されており





ヨーロッパの町並みや遊び心いっぱいの待合空間(まほうの広場)、
船のデザインの外来受付など従来の病院のイメージとは全く異なり、要所要所にプレイルームがあり病院分教室(小学部・中学部)も併設されています。





「宮城県立こども病院」の基本・実施設計は、山下設計株式会社東北支社が行い、施行は大成建設などのJV が請負い、総工費155億円かかったそうですが、実際に設計を担当した平本氏からお話しを伺うことができました。





Q 設計されるに当たり一番重点を置かれた点は?

平本氏 こども病院は、日本では、千葉、広島、長野などにありますが、今までの病院の概念を打ち破る 「癒しの空間」にしたかったのです。待合室とか診察室ではなく、まほうでつくられて、病気も治るというようなイメージで、待合空間を「まほうの広場」にしました。お子さんや親御さんにも「元気の出るファミリーホスピタル」にしたいと思い設計しました。


Q 先程椅子に座ってみたら、とても座り易かったのですが、デティールには拘ったのでしょうか?

平本氏 そうなんです。設計の段階で、実際のモデルルームをつくって、子供達の意見を聞きながら、設計したのですが、なかなか納得のいくものが出来なくて、病棟の椅子はメーカーに頼んで特注しました。「宮城県立こども病院」の試みは、世界的に見ても画期的なものだと思います。


病床数は、開院時は88床(周産期病棟45床、一般病棟36床、ICU7床)、平成16年4月124床(開院時88床+一般病棟36床)、平成17年4月160床(124床+一般病棟36床)完成予定ですが、一次医療(風邪等)や必要によっては入院して検査や治療を受ける二次医療よりも更に高度な専門病院での治療の三次医療を目的としているので、365日24時間体制ですが、完全紹介予約制になっているそうです。
医師、看護士、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(入院中の子供に「遊び」の機会を提供したり、治療の恐怖心を取り除いたりするなどの心理的サポートを行う)、医療ソーシャルワーカー(患者が療養に専念できるように適切な助言や援助をする)、保育士、臨床心理士、薬剤師、栄養士などが情報を共有し、意見を交換しながらのチーム医療を目指しているとのことでしたが、特A等の看護体制についてはノーコメントでした。
今回の取材を通し、基本理念や設備の素晴らしさを実感しましたが、どんなに設備が整っても、実際に治療やサービスにあたるのは最終的にはやはり人
良質な医療を追求しつつ万全な看護体制で、コンセプトが生かされるかどうか
期待を込めて、今後注目していきたいと思います。





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