働く人の憂鬱シリーズ
〜 小説家の憂鬱 〜


様々な業界で働く人がいます。ですが、その業界に身を置く者にしか解らない裏話も沢山あります。興味があっても、「実情はどうなんだろう?」という不安を持つ方々の質問にお応えするこのシリーズ。
今回は、最近、徐々に人気が出て来た若手ファンタジー小説の某作家さんにお話を伺ってみました。小説家がいかなるものなのか、非常に気になるところです。



―――この仕事をなさろうとしたきっかけは?
昔から文章を書くのが得意でしたし、小学校くらいの時から想像力には自信があって、クラスメートに読んで貰ったりして、「面白い」と言ってもらうのが嬉しかったので。それが原点かな?
『指輪物語』とか、『ロードス島シリーズ』とか、ファンタジーは和洋問わず、とにかく好きで、「本格的に書いてみたい」と思って、仕事の合間とか終わった後に書きまくって応募しているうちに入選したのがきっかけでした。

―――このご職業の魅力は?
やっぱり自分の作品を読んでもらい、「面白い」と言って頂ける事ですね。
100%自分の書きたいモノが書ける訳ではありませんが、そこはプロの仕事ですからね、仕方ありません。
それでもやっぱり、面白いと言って頂けるのが最高です。ファンレターやメール貰うのが楽しみですから。
あ、自分の書いた小説の同人誌を描いて貰った事があった!あれを貰った時、「俺もここまで来たぞ〜!」って感動しちゃった。こういうのがあるとやる気が出ますね。「ちゃんと読んでくれている人がいるんだ」って。実感しました。
―――実際仕事をしてみて、内情はどんなものでしたか?(賃金・給料の事など)
それは辛いですよ。趣味でやっていた頃とは訳が違いますから。どんなに“書けない”・“書きたくない”時でも、書かなければなりません。しかも、手を抜く事は出来ませんからね。自分のモチベーションをどうコントロールするか?最初はきつかったです。
時間を掛けて書いていた質を、今度は時間を掛けずに書く。難しいです。デビュー直後の作家はまずこの壁にぶち当たりますね。
お金の事ですか?う〜、あんまり言いたくないけど、これもきついですよ。
売れっ子ならまだしも、私はまだ駆け出しのどマイナーな作家ですからね。書いて、出版して、売れなければ一銭にもなりませんよ。書き下ろしなんで。だから最初のうちはバイトしながら書いていましたね。お陰さまで今は小説だけで食っていけるようになったのですが、昔は食う事が出来ずに栄養失調一歩手前でした。
印税とかの話も、最初はよく解らないし、若造と言う引け目があったので、全て編集や出版社の言い分のままでした。最近はちゃんと口を挟みますが。



―――小説家を目指すなら知っておいた方が良い事は?
自分の書く小説のジャンルの事だけ知っていてもいけません。やはり世界に深みを持たせるのだったら、様々な事を知っていなければなりませんね。勉強する事は大事です。苦手な分野でも、逃げずに知るようにならなければ。
あと、憂鬱の他の話にもありましたが、一般常識を知らない作家さんもいます。
大学出て直ぐとか、学生時代からプロとか、社会人経験を全く無くプロになっている人も多いです。凄い小説を書くのに、生活の当たり前の事を知らなかったり。
あと、広い目を持ち、あらゆる事に関心を持つ事です。「嫌いだから」とか、「タイプじゃない」からとかで、他の方の作品を読まない人がいるでしょう?それは、自分だけの閉塞した世界を築いてしまいます。食わず嫌いせず、人気がある作品には、人気が出る理由がある事を理解し、分析する事も非常に勉強になりますね。
あと、今はパソコンで書く人が多いからそうでもないけど、手で書く時は要注意ね。下手な字だったら、読む前から捨てられる事もあるって考えておいた方がいい。本当はそんな事しちゃいけないんだけど、編集だって忙しいんだ。いちいち全部の投稿作品を最後まで読むのって重労働になるし。だから、見た目が悪かったら読んで貰えないかもしれない。手で書く人は見た目重視!字が下手だったら、代筆も手です。
パソコンで書いている人にも1つ注意。応募の要項をよく読んでから応募する事。ページ制限、文字制限、文をどんな構成にしなければならないのか。いくらパソコンから出力した作品でも、行の配列なんかがあまりにも酷い(読みづらい)モノは減点です。
応募する時はよーく推敲して、応募要項を勘違いしている所がないか見る事ですね。
それと、短編を書く練習をした方がいいですね。長文はだらだら書けば出来ますが、短編はポイントを要約して伝えられなければなりません。これで練習すれば、腕は確実に上がりますよ。

―――結構行われているけど、一般の人には内緒(秘密)の事ってありますか?
良い小説を書くから、作家も良い人だと思ったら大間違い!漫画家さんにも言える事ですが、作品と人柄は全く別物ですよ。
例えば、「こんなに泣ける作品を書くんだ。きっと良い人だ」な〜んて思っていたら、「俺の書いた話にマジになって長文送ってくる奴がいてさ〜。ウザイっていうの!いちいち相手にしてらんね〜よな〜」とか裏で読者を馬鹿にして笑ってる人も居る。当たり前の事ですが、なんだか悲しいですよね。
後書きとか、雑誌のインタビューは営業スマイルって人も居ると思って下さい。夢を壊すような話をして、すみません。
あと、〆切を守らないのに、大御所だからって許される事も多いです。下っ端は、使い捨てみたいに扱われるのに〜。くそ〜、私も売れっ子になって編集を見返してやる〜(笑)。
それと、現在の作品は、大御所以外はみんな出力したものですね。手書きの作品が許されるのは売れっ子だけです。

―――「この仕事をしていて良かった」と感じた時のお話を
しつこいですが、「面白い」と言って貰う事。あと、自分の書いた小説で勇気付けられたって人がいた事。
自分の書いた小説で、他の人の人生を変えてしまう事もあるんだな〜って思いました。だから、これからは読む人達の事も真剣に考えて書いていきたいと思います。

―――笑い話とか、苦労話とか有ったら教えて下さい。
送った小説を編集の人が間違って削除しちゃった事とか。パソコンで書いていたから助かりましたよ〜。直ぐに出力出来るんですから。昔はこうはいかなかったでしょうからね。編集の人に泣いて、「秘密にして下さい」と言われたのにここで言っちゃった。
あと、面白いってファンレター貰うのは嬉しいと言いましたが、逆に苦情と言うか、文句系の手紙もいっぱい来ます。ちゃんとした理由が書いてあるのは、反省に繋がるんだけど、「死ね」とか、「つまらん」とか、「○○のパクリは止めろ!」とか言われると、かなり凹みます…。
オリジナルを書いているのに、なにかと他の作品との共通点を見つけて来て、
剽窃扱いですからね…。これにも耐えて、よりオリジナリティのあるモノを書かなければなりません。

―――その他、言いたい事があったら是非
作家になる事より、なった後が大変です。だから、作家になりたい方はよく考えた方がいいですよ。1作書いたっきりで、消えていく作家も多いですから。
でも、本当になりたいならなれます。頑張って下さい!あ、ライバルが多くなると困るから、これ以上は言えないかも(笑)。
あと、キムさんの小説読ませて貰いましたけど、なんで応募しないんですか?もったいない。私が使ってもいいですか?(笑)



ご協力ありがとうございました。
最後のは冗談だと思いますが、私も頑張る方は好きです。作家を目指している方は、とにかく書く事!書かなければ、どんなに名作でも始まりませんからね。




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