働く人の憂鬱シリーズ
〜 フリーライターの憂鬱 〜


様々な業界で働く人がいます。ですが、その業界に身を置く者にしか解らない裏話も沢山あります。興味があっても解らない、「実情はどうなのだろう?」という不安や、質問にお応えするこのシリーズ。今回は、フリーで仕事をされているライターさん(主にアダルトゲームのシナリオをされている)にお話を聞いてみました。雑誌やゲームの裏側はどのようになっているのか?インタビューしてみたいと思います。



―――フリーライターになろうと思っている人に知っておいて貰いたい事は?
まずは、これ一本で生活が出来るのだと、勘違いをしないで下さい。よほど安定した仕事の供給先が無い限り、アルバイトをしながら、ライティングをしている人の方が、多いと言うのが実情です。
本業は別であり(雑誌の編集や新聞記者)、副業として書いている人の方が多いと言うのが現実です。そこでフリーランスとしてのコネクションを作ってから、退社後、フリーライターと言う経歴が、この業界に来る一番の近道です。
私の知り合いなども、フリーになる前に出版業や、ゲームメーカーなどで働き、そのコネを活かしてフリーライターになると言う経歴の人が多いです。いきなりフリーランスで食べられると勘違いしている人が多いのですが、そんなに世の中甘くありません。
また、収入もピンきりだと言う事で、「こんなに安いの!!!」と驚くような金額で、書かされるのが実情だったりします。

―――実際仕事をしてみて、内情はどんなものでしたか?
私の場合は、コンシュマーのシナリオや、エロゲーのシナリオに限らず、雑誌などの連載記事などでのライティングをしておりますが。今回は、エロゲーに重点をおいて、話をしたいと思います。
正直、エロゲーのシナリオ単価は安く、そのほとんどの入金は、シナリオを書き上げた後だったりしますので、シナリオ作成中にお金を貰える事はありません。
(先にお金を払ったら、そのまま、シナリオ書かずに、夜逃げしたと言うライターがいたりしたそうで、メーカーにしても迂闊にお金を先に払う事は出来ないそうです)
なので、シナリオの作業中は、個人の蓄え、もしくは、借金(ア○ム、武○士など)で生活している人もいます。私は雑誌連載があるので、毎月の定収入がある分、その点はカバー出来てますが。基本的にエロゲーのライターは一回限りの使い捨て、“書いたら、ポイ!” というのが実情です。
私が経験した仕事の中には、キャラの外見や原画は誰が描くかすらも決まっておらず、「とにかく何でも言いから書いてくれ!」というオファーもあったりしました。エロゲーのライターは叩かれる事がありますが、絵を見る事も出来ず、どのような構図で、どのようなシーンなのか?ということも伝えられず書くのが、あたりまえと言う事もがあったりします。仕事とはいえ、「勘弁してくれ」と泣きたくなる事があります。こちらとしても資料などの請求はするのですが、「まだ原画さんが、1枚も書いてないから、渡せない」とか、「原画さんは、シナリオが上がってから、誰に書かせるか決めます」と言う事があったり。これがデフォルトで、まかり通るのですからすごい世界です。良心的なメーカーですら、シナリオと原画作業のスタートは、ほぼ同じで、シナリオは、声の収録の都合から、絵よりも1、2ヶ月前に上げなければいけない訳なので、指示はあっても、絵を見る事はなかったりします。
書き上げるテキスト量は、かなりあるのですが、締め切りが凄く短いので、責任を放棄して逃げるライターもかなりいます。(1ヶ月で、プレーンテキスト、1メガとか)で、途中まで書いて逃げたシナリオの後釜として、「続きを書いてくれ!」というオファーもかなりあります。

―――フリーライターを目指すなら知っておいた方が良い事は?
まずは定収入が入ると言うのは、有り得ないので、安定した生活は、まずは出来ないと言う事だけは、知っておかないと痛い目に遭います。蓄えが無い人間は、まず生活は出来ません。
あと、辛くなったからといって、“責任を放棄しない”と言う事。最近、特に平気で〆切を破るライターが増えています。そういう人間が1人出る度に、〆切を守るライターの地位が下がり、真っ当に仕事をしているのに肩身の狭い思いをさせられる事があるという事です。スケジュール管理がろくに出来ない人間が、ライターなど志しては、現役のライターの迷惑になるので、自己管理だけは徹底して行って下さい。今日これだけ書ける。と、己を過信したら、すべてが終わりです。

―――結構行われているけど、一般の人には内緒(秘密)の事ってありますか?
ライターが逃げたりするのがあるのと同様に、平気で、お金(原稿料)を支払わないメーカーもあったりします。某メーカーのシナリオが、60万と言う話でしたが、ゲームが売れなかったので、「ごめん!」と泣きつかれ、結局、ただ働きで終わった友人がいたり………。中には平気で、入金を『忘れたり』して、そのままうやむやにするメーカーも。こちらが、請求しても、お金を払わないのは『当たり前』だったりする事も。あと、何の報告もなく、シナリオ料が、減額されたりする事も、当たり前のように行われたりします。

―――笑い話とか、苦労話とか有ったら教えて下さい。
エロゲーに関しては、ほとんど先に語ったので、ここではコンシュマーについて。
シナリオが遅れて、収録日までかかった事があるのですが、この時は、スタジオにFAXして、その場でディレクターが、FAXに赤を入れながら声優さんにシナリオを渡した事があったりとか。これは私ではありませんが。
そのゲームの話の続きですが、そのヒロイン役の声優さんは、すでにその作品はアーケードも含め6回目だったそうで、その日の収録に1時間ほど遅刻して来てたのにもかかわらず、台本を取って、一番最初に収録を終えてスタジオを後にしたとか。ほとんど一発取りですんでしまったそうで。プロデューサーもディレクターも、あまりの見事さに言葉が出なかったそうです。
私がシナリオを書いて送ったのに、向こうから、一向に連絡がなくて、気になってメーカーに連絡したら、担当のプロデューサーが過労で山手線の中で倒れて、緊急入院をしてしまっていたとか。
ゴーストでシナリオを書いた時は、書いたのは自分であっても、クレジットには乗っていないので、仕事の経歴にならなかったりとか。


写真2
    ▲1つの作品を生み出すのも一苦労


―――その他、言いたい事があったら是非
この業界を志す人が多いみたいですが、考えているほど甘いものではないと言う事。再三繰り返しますが、フリーである以上、安定した生活を送る事は、ほぼ不可能です。社会保障もない上に、原稿料やシナリオ料は安いです。
安定した生活を送りたいのであれば、社員になることをお勧めします。フリーで食べると言う事は、個人経営の会社を回すと言う事に近いですから。営業活動、スケジュール管理、ライティング作業などを全部1人で、こなせるよう常日頃から自己管理には特に気を使うようにして下さい。
ある仕事が終わって社長さんと話をしていた時、「最近、〆切を守らない人間が多いが、〆切を守る事は、クオリティの一部だよ」と言われました。これは至言だと思っております。
仕事のオファーというものは、こちらのクオリティを信用した上で、〆切の期限内で上げる事を前提にしている訳なのですから。内容のクオリティを上げたいからと言って、〆切を破ると言うのは、信用そのものを破る行為であるという事を自覚した瞬間でした。
〆切を守りつつ、内容のクオリティを維持して、初めてプロのフリーライターと名乗れるのだと言う事を覚えておいて下さい。



いかがだったでしょうか?『フリーカメラマンの憂鬱』でも触れましたが、フリーで仕事をされるのは本当に大変なご様子です。理想だけではどうにもならない世界である事も同じですね。ただ好きなだけではプロにはなれない。“まずは下積みから”。大変勉強になりました。ライターを目指すのでしたら、この点も十分にお考えになった方が良いようですね。この方は最後にこう仰っておりました。
「確かに厳しい世界だが、覚悟を持って臨めば必ず叶う」…と。
読者の皆さまの中から、将来の大物シナリオライターが生まれる事をキムは祈っております。まずは、“書く事から”ですね!


【お詫び】
本文中にて、使用した画像ですが、特定のメーカー様に対して誤解を招く恐れがあった為、削除しました。
記事の内容と、メーカー様との関係は全くありません。
記事中、誤解を招く表現があった事を深くお詫び致します。




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