あやしい広告の裏側

〜 あやしい広告の突っ込みどころ 〜



さて、前回は“あやしい広告”が掲載されるに至る裏側などをご紹介したわけですが、今回は、なんて言うんでしょう・・・いわゆる、突っ込みどころや、カラクリをAさんにインタビューしようと思います。


A氏 一言で“あやしい広告”と言っていますけど、この手の商品のことを、私達は『コンプレックス商品』と呼んでいました。ようするに、「開運・美容・痩せる・ハゲ・伸長」などですね。人が持つ、何らかのコンプレックスを対象にしていますので。

山木 コンプレックス・・・言いえて妙ですね。そんなに売れるものなんですか?
A氏 えぇ、売れます。どことは言いませんが、この手を扱う会社の社長が、長者番付に入ることもありますし。リピーターは殆ど見込めませんが、広告を出した月は、かなりの売り上げになりますね。

山木 では、その突っ込みどころの具体例を教えて欲しいのですが・・・。



A氏 そうですね。じゃぁ、コレからやりましょう。この商品扱ってる会社は、もう倒産しているんですよ。だから、どんなに暴露しても平気かな・・・なんて(笑)

山木 脱毛ですか。これは、数年前の「JJ」という雑誌に載っていたものですね。



A氏 今でこそ、男性も美容に気を使っていますが、“脱毛”は女性とは切って離せないでしょう。毛深いのは、女性からしてみればコンプレックスですからね。で、この『エピドール』ですが、“痛みも刺激もほとんど感じない”と有りますよね。・・・ホントはメチャメチャ痛いんです。
コレ、私達の会社では飲み会の時の罰ゲームでしたからね。酔いも、一瞬で覚めるくらいですよ!

山木 飲み会の罰ゲーム・・・。すいません、笑ってしまいました。じゃぁ、この広告に書いてある“肌を痛める心配はない”とかは・・・?
A氏 血が出ましたね(笑)でも、嘘では無いんですよ?広告に有るように、痛みも刺激も感じることなく、肌を痛めない人も、中には居ると思いますから。絶対に居ないとは言い切れないし、“ほとんど”も“安心”も人それぞれですよね?お分かりだとは思いますが、『絶対』とか『永遠』という言葉は使ってませんから・・・。

山木 ほとんど、チンピラの屁理屈ですね・・。
A氏 この商品、何で出来ているかというと、松ヤニに色付けて加工したようなもんですからね。原価なんて400円くらいですよ。そんなモノに、完全脱毛なんて期待しちゃ駄目(笑)



山木 言葉も出ません(笑) では、他の突っ込みどころ・・・この感謝の手紙は?
A氏 そんなもん、ほとんど来ません。「エピドール」だけじゃなく、他の商品を扱っていて・・・二年で10通くらいだったかなぁ・・。 それに、感謝の手紙が来た時って中には有りましたけど、掲載して良いかを尋ねたら、絶対に断られます。当たり前ですよね、こんな商品のモニターとして紙面デビューなんかしたくないですよ。


あくまでも、イメージ画像です。

山木 これ、別の広告に載っていた体験談なのですが、この人達って、じゃぁ何者なんです?
A氏 そこの社員の友達とか・・・。あと、顔写真専門の名簿業者も存在するんです。モデルは素材集からの転用(http://www2s.biglobe.ne.jp/~upr/album/)の他に、この業者から貰った画像を使うというのも有り得ます。本人に許可を貰ってるかどうかは知りませんけど(笑)

山木 モデルの話なのですが、タレントでは無いんですか?芸プロから、売れないタレントを借りてきたりとか・・。
A氏 芸プロは、ほとんど無いですね。そのタレントに“あやしい広告”に出ていたという色が付いてしまうのもそうなんですが、プロダクションの方も、そういう広告に人を出したくないんですよ。私の知ってる限りでは、その手の広告に人を出すプロダクションは2社しか知りません。変わった例としては・・・そうですね、開運リングを付けてるって、広告塔になったボクサーがいましたっけねぇ・・。私達の中では、失笑ものでした。よほど仕事が無いのかなって。



山木 え・・・と。まぁ、タレントさんも、いろいろ有りますから・・・。話を変えて、このI.E.Aとかいう協会は存在するんですか?僕、以前に「国際環境資源エネルギーセンター」なんて言うのを調べたことが有ったのですが・・・。
A氏 有りますよ、名乗ればいいんですし。例えば、私と山木さんが、ボールペンについて研究をしていて、自宅が「世界ボールペン探求協会」だと言った瞬間に成立します。名乗ってはいけないという法律は、どこにも無いんですから。あとは、理事でも、総長でも名乗ればいい。それと、こういう広告に必ず出てくる“博士”だとか言うのに、外人が多いのは、身元の特定がしにくいからなんです。どこにでもいる不良外国人に、ちょっと小奇麗な服を着せれば・・・出来上がり(笑)

この「アレクサンダー・モロー」氏は、あるクラブのバーテンダーですよ。

山木 もう、笑いしか出てきませんね〜。


如何でしたしょう?ちょっとした広告一枚の中に含まれている、嘘八百。人を騙すことに念頭をおいている商品ですが、制作裏を知ってしまうと、突っ込みの一つ一つが笑ってしまうほどです。
まさに、『嘘を嘘と見抜けない人には、通販の利用は難しい』だったり・・・。

この、コンプレックス商品の裏側。制作の舞台裏が、取材をしていて凄く面白いので、次回に続きます。




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