テレアポ商法にひっかかってみました・後編

〜 ストーリー性のある婚約指輪を買いませんか? 〜



休暇中の探偵(私)のもとにかかってきた一件の電話。
受話器からは、聞き覚えの無い女性の声が。
「ストーリー性のある婚約指輪のレクチャーに参加しませんか?」
は? それって何ですか?
――というわけで、女性のしつこい誘いに根負けし、会場を訪れた私であったが・・・・・・




すると、その女性スタッフの上司らしき人(やはり女性)があらわれて、会話に参加してきた。


写真1


スタッフと上司の女性2人は、テーブルの上に鑑定書などを並べながらさらに話をすすめる。

「人生の中で男が結婚について考える時期はプロポーズの時と結婚式の直前だけ。だけど、女性はいつも結婚について考えているのよ」
「そんな女性に対して、プロポーズを思い立ってから指輪を用意するのは、とても失礼な事。男性もその時に備えて、いつか愛する女性と結婚するときの為に、心構えと共に指輪を用意しておいてあげるのが常識なの。」

そうか、常識なのかぁ、などとなんとなく聞き入る。

「通常は展示会場での販売は行っていないけれど、ここに足を運んだのが“人生の大きな分岐点の一つ”と考えて欲しいのよ。」

そうか、オレはいま人生の分岐点にいるのかぁなどと思う。

「これから現れる、あなたが愛する女性のために、そしてあなたのために、当社も何か力になりたいのよ。男は仕事に生きるものなのだから、この機会を逃してしまうと二度と結婚について考える事はなくなってしまうわよ」

2度と考えることがなくなる!そうかぁ、探偵稼業っていそがしいもんなぁ。

「せっかくだからあなたの気に入った、このダイアモンドとそれを支える枠、そしてこの結婚指輪をあなただけにお譲りする事で、あなたの幸せな将来に協力させてもらうわ。」

そうか、譲ってくれるのかぁ。譲るってことはもちろんタダなんだろうなぁ。と思ったがもちろんそんなことはないらしい。金額を尋ねると、女性上司に
「1カ月に24,000円の支払いだけで構わない。そして、その支払った金額は消えるのではなく、自分の将来に向けての自己投資となる」というように説明を受ける。具体的な金額はなかなか教えてくれない。

なんだかんだの長い説明のあと、ようやく提示された金額は119万円であった。

119万! 心臓が止まりそうになったので119番に通報してくれ。

時速119キロで逃げ出したくなる調査員。パーマンの飛行時速とおなじスピードである。

女性上司は更に言葉を続ける。
「ここに来る男性は、自分の将来をとても真剣に考えている人ばかりなの。ほとんど全員が、自分の意志でダイアモンドを購入して帰るの。あなたもそのうちの一人になって欲しいのよ。」

困る私にはお構いなしに女性上司は話を進め、商品が納品されるまでのシステムの説明と、支払回数に関する説明を始める。

「商品は、契約後100日間しないと納品できない」
「支払は、契約月から半年後のスタートで構わない」
「今、見せているダイアモンドをお渡しするのではなく、同じグレードのダイアモンドを用意する」
「商品はダイアモンドを指輪にはめ込んだ状態で納品する」
「購入後、即ち、ダイアモンドを指輪にはめ込む加工をした後に、再び鑑定依頼を出されても、加工を施したダイアモンドは、グレードが下がる事が非常に多いので、その事に対してクレームを立てられても当社では受け付ける事が出来ない」

いろいろと、それっておかしいんじゃ?と疑問点や矛盾点を質問したが「これは常識の範囲」として片づけられてしまう。

 私「では、(帰った後に)じっくり考えさせてください。」

その一言を発した瞬間に、女性上司は大魔人さながらに態度が豹変した。どうやら一番聞きたくなかった言葉、NGワードだったらしい。

購入するよう、凄まじい勢いでまくしたて始め、興奮状態で叱責してきた。嵐のようにまくしたて続ける。
しかし、どうあっても購入しないと悟った女性上司は、非常に冷たい態度になる。そして深く頭を下げ、丁寧に興奮したことを詫びて、席から離れていった。


写真2
他の方は購入したのかな?


残った女性スタッフに帰りたい旨を伝えると、京都駅までついて来て改札を通過するまで見送った後、会社の方へ戻っていった。





その後、この会社で購入するように勧められたダイアモンドの価値を、一般の有名ブライダルリング専門販売店のスタッフに問い合わせた。それによると「提示された金額の半額以下の価値しかない」とのことであった。また、鑑定書の発行機関も、説明にあった程の著名性はなく「販売会社の名前が入っている鑑定書は、鑑定結果をほぼ自由に操作できる」というであった。


写真3
鑑定書


また、いわゆる「テレアポ商法」に詳しい人物に話を聞いたところ、




  • “電話で呼び出されて来るような人間”は、まず“意志が弱い人間”とみなされ、それにより契約がとりやすいとみなされる。もしくは担当している人物に対する好意に近い感情や下心を巧みに利用し契約を取ろうとする。
  • 男性客には女性スタッフ、女性客には男性スタッフが付きっきりでセールストークを進め、男性客を男性スタッフが担当する事は決してない。
  • スタッフは客の事を、非常に親近感がある人物や、自分の理想の異性像に置き換えたりするなど工夫し、初対面とは思えない程の好意的な態度を取る。それにより、客にまるで恋人と展示会に来ているかのような錯覚を持たせてしまう。
  • 商品にして疑問を持った客には、「商品において説明したことの全てが“一般常識”であり、逆にその事を知らないのは恥ずかしい事である」と思いこませる。
  • 「商品の信用性は全て鑑定書に明記されており、品質の偽りは一切ない」として、本来の商品価値を騙す。
  • 手口として、消費者保護制度である「クーリングオフ」を利用させないよう、担当スタッフは購入者との間に「信頼関係」と呼ばれる、親密な交友関係(時として肉体関係)をもつことによって、購入者に被害にあったという意識を持たせないようにする。


ということであった。





肉体関係・・・。



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探偵タイムス



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